第8話
突然倒れたグルベルトを見ていた俺達は困惑していて、リズリナさんに到っては口に手を当てて叫んでいる。
「どう言う事だなんだっ!? 何処かに敵が潜んでいるのか? クソッ!? 全員警戒しろっ!!」
グエルさんの指示を受けたエイミーさん達は武器を手に取ると、当たりを見回して警戒をし始める。
「 まさか口封じに消されたのか・・・・・・・・グルベルト、お前は一体何に手をだした? 」
バルデック公爵は目を見開きながらグルベルトを見て言う。
俺は死体になったグルベルトを見て頭の中が一瞬にして真っ白になったが、グエルさんの言葉を聞いた途端に頭を振ってから思考を働かせるのと同時に、ホルスターからJERICHO941PSLとカランビットナイフを取り出して構える。
まだ敵は近くにいるはずだ! 石槍の刺さり方からして飛んで来た方向は反対側だ。恐らくそっちに敵がいるはずっ!!
俺は飛んで来た方向に顔を向けて探していると、こちらを見つめているフード被った人と目が合った瞬間、危機を察したのか路地裏の奥に向かって走って逃げて行くのが見えた。
「グエルさん、あそこっ!! 路地裏に逃げて行くフードを被った人が実行犯かも知れません! 追って下さいっ!!」
俺は路地裏に指を差しながら言うが、グエルさんは動揺しているのか少し不安そうな顔でこっちを見てくる。
「なに、本当か? しかしな、公爵様の身の危険が・・・・・・」
「グエルさんっ! 貴方隊長ですよね? 動揺してないで部下に適切な指示を出して下さいっ!!」
俺の言葉にグエルさんは何かに気づくと自分の部下を見て指示を出し始める。
「キース! エイド! 俺に着いて来いっ! エイミーとリズリナは公爵様をお守りしろっ!!」
「「「「ハッ!!」」」」
「エルライナ、お前は・・・・・・お前は何をしているんだ?」
俺がグルベルトの胸に刺さった石槍を引っこ抜く姿を見たグエルさんは、怒りたいのか眉間にシワを作りながら言ってくる。
「私の事は気にしなくて良いから早く追って下さい! 後から追いかけますからっ!!」
「・・・・・・分かった。先に行くぞ」
グエルさんはそう言うと、キースさんとエイドさんを連れて路地裏に向かって走り出した。
よし! 石槍は引っこ抜いた。蘇生マークが消えていないから後は蘇生薬を使えば大丈夫なはず。
俺はメニューを開くとストレージから買い置きしていた蘇生薬を取り出してから、グルベルトの身体に打ち中にある薬液を注入する。
「正直コイツにはムカついているけど、聞き出したい事が山ほどあるから死なれちゃ困る」
何故こんな事をするかと言うと、グエルさんはここに来る途中にメモリーリードの話していたのを思い出したからだ。
メモリーリードは死んだ人の頭の中にある記憶を読み取る魔法で、死亡直前から三日前までなら記憶を断片的に読み取る事が出来る。それはつまり、この石槍を刺したヤツが頭を潰して記憶を読み取れない様にしなかったのは、三日以内の話しを俺達に聞かれても何も問題はないが、三日以前の話しを俺達に聞かれたらマズいからここで始末した。て事だと思う。
蘇生薬の中にある液体がグルベルトの身体に入り切ったのを確認すると注射の針を抜いたその瞬間に、グルベルトの身体が淡く光出して傷が治って行く。そして光が消える頃には息を吹き返して傷のない綺麗な状態になって横たわっていた。
「い、生き返ったっ!! もしかしてアナタ、コイツに秘薬でも使ったの?」
「すみませんエイミーさん、今からグエルさん達と合流するので残りの話しは後にしましょう」
俺はそう言った後にメニューをまた開くと小型偵察ドローンを取り出して空へ飛ばす。そして実行犯を見つけて追尾する様にマニュアルモードではなくオートモードに設定から、ついでにACE32を取り出て装備する。
『了解。目標を探索します』
その言葉と共にドローンは空高く飛んで行く。
「それじゃあ皆さん、行って来ます」
「気をつけろエルライナ、相手は何者か分からないからな」
「分かりました」
いつの間にか名前の後に さん を付けしなくなってるバルデック公爵様に返事をしながら、路地裏に向かって走り出す。
『目標を確認。追尾します』
よし! これでレーダーに映るようになった。後は追って捕まるだけだ!
『注意、11時方向危険を感知、敵の可能性有り』
敵っ!? こんな道の細い路地裏で? しかも実行犯と同じ方向に敵マークが出ているのはぁ・・・・・・どういう事だ?
「増援か? それともグエルさん達があの敵の罠に引っかかったのか? ・・・・・・どちらにしろ方向は同じだし、どちらにしろ行って見るしかないな」
そこに行くとグエルさん達が5体の人型モンスターと戦っていた。
「グ、グエルさんっ!?」
グエルさんは敵を見ながら答える。
「エルライナかっ!! 悪いがコイツらを倒すのを手伝ってくれっ!!」
「分かりました!」
理由を聞くのは後でいくらでも聞ける! 今はコイツらを倒すのが先決だ!!
俺はACE32を構えてから目に付いた一匹をセミオートで三発撃って倒し、その隣にいたモンスターも、続け様に三発撃って倒す。
「やるな、エルライナ!」
グエルさんは俺にそう言いながら、持っている大剣でモンスター1匹を縦に真っ二つにする。
「雷よ、我が手に宿れ!! 『サンダーボール』」
キースさんの魔法を喰らった人型モンスターはその場に痺れているのか、立ち止まって小刻みに身体を震わせている。
「エイド、今です!」
「おう!」
キースさんが魔法を当てて動きが止まった所を、エイドさんがモンスターを剣で斬り倒す。
「残りは後1匹!」
俺が最後のモンスターに狙いを定めた瞬間に、モンスターは光に包まれて消えて行ってしまった。
「消えた? ・・・・・・一体どう言う事?」
『目標をロスト。目標を探索します』
えっ!? 見失った? ウソだろ。あのドローンは建物の中に隠れても追尾するから、壊すかジャマーでも使用しない限り追尾を振り切るのは不可能に近いはずなのに・・・・・・一体どうやって。
「アイツはあの角を左に曲がった! 全員、付いて来いっ!!」
「「了解!」」
俺が困惑している中、グエルさん達はそう言った後に走り出し角を曲って行った。
「え? ちょっ、ちょっと待って下さいっ!?」
俺も遅れて曲がり角を遮蔽物にして顔を少し出しながらグエルさん達が曲がって行った方向を確認するが、俺の目に映ったのは隠れそうな遮蔽物が一つもない行き止まりにグエルさん達が道の真ん中で佇んでいた。
俺はグエルさんに駆け寄って話しかける。
「グエルさん、犯人は?」
グエルさんは俺を見つめながら話しをする。
「・・・・・・あぁ、逃げられた。奴の匂いがここで止まっていると言う事は、恐らく転移魔法を使って逃げたと思う」
なるほど、ドローンも敵がいきなり消えるから、追い切れずに見失ったんだ。
「だけどグエル隊長、 転移魔法陣を使ったのなら、何処かに移転魔法陣がある筈なのですが・・・・・・何処にも見当たりませんね」
「キース、多分転移魔法を書いた魔導用紙を使ったんだ。その証拠にこれを見ろ。そこに落ちていた」
エイドさんが燃えカスを持って見せると、キースさんは目を見開いて見つめる。
「魔導用紙っ!? けど魔導紙を使った転移魔法なら、遠くには飛ぶ事は出来ません。近くにいるはずですから、ここ一帯を探しましょう」
「いや無理だ。恐らくアイツはオレ達をここに呼び込んだ後に、この魔導用紙を使って用意していた脱出用の転移魔法陣のあるところに飛んだろう。で、その用意していた脱出用の転移魔法陣でまた何処か遠くに逃げたんだろうな。
モンスターがいなくなったのも、もう俺達の相手する必要がなくなったから引っ込めた。って考えるのが妥当だろう」
「う〜〜〜ん、転移魔法陣の発動時間と紋章が残ってしまう事を考えると、その線が妥当だろう」
「ここに転移魔法陣の紋章あったのなら、調べて追えたんですけど・・・・・・残念です」
俺には、何を言っているのか理解が追い付かないが、要するにここに俺達を呼び込んでモンスターが足止めしている間に、別の何処か隠れ家とかに転移魔法で転移してから、また長距離用の転移魔法で転移で逃げるって作戦を取ったと言う事で良いんだよね?
地球で言えば、車を使って飛行場まで逃げて来てから飛行機に乗って海外へ逃亡するって感じで間違いないよね?
「グエルさん、もう追えないのならバルデック公爵様のところに戻りましょうよ」
「それもそうだな。エイミー達と合流して今後の事を考えよう。それとモンスターの死体は首だけ切っておいて、後で処理しに来るとするか」
俺は来た道を戻っている途中考えていた。こんなに用意周到な敵が小者な訳がない。それにグルベルトが捕まってから、こんなに早く始末に来るなんてどう考えておかしい。グルベルトはデカい組織を相手にしていたとしか考えられない。
「私は・・・・・・私は一体何を相手にしてたの?」
俺のその問いにはグエルさん達は答えられなかった。
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