第7話

「取り敢えず問題はないのでギルドカードを作りましょう」


や、やっと・・・・・・やっと説明と言う名の説教から解放される。


俺が疲れてげっそりとしているのを余所にガーリーさんは一枚の白紙のカード取り出す。


「ここに血を一滴垂らして下さい」


俺はカランビットナイフを取り出してから自分の右手の親指を軽く切りカードに一滴垂らす。

すると、カードが光った後に文字が刻まれたカードになった。


「エルちゃん、私が指を治してあげるから手を出して」


「リズリナさん、大丈夫です。ほっとけば治りますから」


「ダァ〜〜〜メ! 女の子なんだから身体を大切にしないといけないよ。ほら、手を出して」


何故リズリナさんの口調が変わっているかと言うと、自分と同い年と分かったから何時もの話し方に戻していて、顔つきも凛々しいさがなくなっていて、今はとおっとりした顔をしている。


「リズリナさんの話し方がさっきと違うから戸惑いますね」


「エヘヘ〜 、私はね 仕事の時と普段の時にメリハリを付ける為に、話し方を変えてるんだよ。それより手を貸して」


リズリナさんは俺の右手を取り、親指を見る。


「あれ? 傷が無くなってる。もしかして、自分で治したの?」


リズリナさんは、カランビットで切った右手の親指を見て困惑している。


「いいえ違います。私の場合はこれぐらいの傷程度なら早く治るので、浅い傷なら気にしないで下さい」


「エルちゃんの身体は不思議だね・・・・・・それにしても綺麗な手、羨ましいなぁ〜」


リズリナさんは俺の手を羨ましそうに見つめてくる。


そんなに見つめてくるなんて、やっぱり女の子って美容とかお肌調子を気にする子が多いのかな?


「ゴホンッ! ・・・・・・そろそろ説明をしたいのですがよろしいですか?」


「どうぞ」


おっといけない。総合ギルドに加入途中だったんだ。


「こちらがアナタの総合ギルドカードになります。総合ギルドカードは身分証でもあるので罪を犯せばカードに刻まれます。あとカードを紛失した場合は再交付に料金が発生しますが、再交付の料金が高いのでなくさないで下さい。良いですね?」


「はい、分かりました」


「では、こちらをどうぞ」


ガーリーさんから、カードを受け取る。


「それでは、アナタの所属する冒険科の説明をします。冒険科ではその人の熟練度によってランクが有り、カードにも記載されています」


うん、テンプレだね。


「ランクは1番下からE、D、C、B、A、Sの6段階です。総合ギルド加入者は全員Eランクから始まるので、アナタのランクもEからはじまります。

ランクを上げるには受け付けでクエストを受けてから、モンスター討伐又は採取などをこなしてクエストポイントを貯めていきます。

一定のポイントを貯めればランクアップクエストを受ける事が出来、それに合格すればランクアップ出来ますが、クエストポイントを貯める為に他の方とクエストに着いて行くだけで何もしない。モンスターと戦わず、止めだけ刺すなどの行為をするとクエスト成功になってもポイントが貯まりませんので注意して下さい。

なお、ランクアップクエストに受けられるか否かは私達の方からお知らせします」


なるほど、他人の成果で成り上がり出来ない様になっているのか。


「また、ランクに応じたクエストしか受けられません。EランクならEランクのクエスト。AランクならEからAランクのクエストと言う感じですね。

ただし、例外はありますがぁ・・・・・・これはCランクに上がってから話す事なので、今は話せません。そして、ランクC以降のランクアップをする場合、クエストポイントはもちろん、ランクアップクエストに必須クエストを受けなければ、ランクアップクエストを受ける事は出来ませんので注意して下さい。ここまでで質問はありますか?」


うん、ある。これだけは聞いておかないと。


「クエスト失敗のペナルティって、あるんですか?」


「それに付いては、これから話そうとしていました」


あっ! 悪い事しちゃったかも。


「受けたクエストに失敗しますと、もちろんペナルティが発生します。討伐および採取クエストの場合はクエストポイント引き下げ。護衛、運搬クエストの場合はクエストポイント引き下げの上、違約金を払わないければいけない時があります。

そして連続してクエストに失敗しますと、ランクを引き下げれるので注意して下さい」


へぇ〜、違約金を払わないと行けない時があるんだ。注意しよう。


「質問して良いですか?」


「どうぞ」


「護衛、運搬クエストで依頼主に問題があって失敗したのに、 お前のせいだ、違約金を払え!! と言われた時は違約金を払わないといけないのですか?」


金目的でわざと失敗させる様なクエストをやらせて、違約金を取ろうとする輩がいるかも知れないし。


「それについては心配要りません。問題があった場合は基本的に私達が仲介して違約金を払うか払わなければならないのかを判断します。それに護衛および運搬クエストを依頼するには王族などの一部の有権者を除いて、一般的に総合ギルドで商業科もしくは生産科に登録をしなければ依頼をする事は基本的に出来ません。

それにその場で 違約金を払え や、 報酬を引き下げる と言う行為をすると、総合ギルドで定めた違法行為に当たってしまいますのでその様な者は出ないでしょう。逆に冒険科の者が依頼主に対して、 報酬の引き上げを要求 のも総合ギルド法に当たります。それと分かっていると思いますが、お金目的で依頼主の殺害するは犯罪に当たるので、絶対にやらないで下さい」


うん、そういうルールがあるのなら心配しなくて良さそうだね。


「そして最後に、ランクが高ければ高いほど高額なクエストが受けられる様になりますが、その反面危険も高くなるのでパーティーを作る事をお勧めします」


パーティーかぁ・・・・・・まぁ、そこら辺の事は追い追い考えていけばいいや。


「以上で基本的な話は終わります。分からない事が会ったら気軽にカウンターの方で話しを聞けますよ」


「ありがとうございました!」


「いえいえ、こちらこそ」


これでギルド登録が終わった。


その後ギルド長は、グルベルトの事情聴取をここでしたいから、ヤツをここに連れて来る様に。 とギルド職員に指示を出した。

その間、グルベルトが来るのをみんなで喋りながら待っていたのだが、和やかな雰囲気をブチ壊すようにドアがいきなり放たれた。


「グエル隊長っ!!」


「何しているんだキース! 公爵様の前だぞっ!!」


グエルさんは怒りながらそう言うが、キースさんは息を切らして慌てた様子を見せているのだ。何かあったとしか思えない。


「それどころではありませんっ!!」


グエルさんが眉に皺を作りながら、キースさんを見つめる。


「何かあったのか?」


「話は後にしますから、一緒に来てエイドを止めて下さいっ!!」


「「「「「「「はぁっ?」」」」」」」


エイドさんを止めて下さい。ってぇ・・・・・・どう言う事?


疑問に思いながら現場に行くと、何とエイドさんが外で拘束されているグルベルトの顔を殴りつけていた。


「貴様ぁ〜、やはりそうだったのかっ!!」


エイドさんに何度も殴られたのだろうか、グルベルトの顔がボコボコに腫れていて歯が何本か抜けている。そんな中、グルベルトはエイドさんを見つめながら弱々しく語り始めた。


「あぁ、ぞうだ。お前をしまづ始末じた後、ひ、ひとじぢ人質にじだ、おばえお前の家族を始末じろど、リふぁイフリヴァイスいふぁ言われだんだ。だのむ、もう、やべでぐれ」


グルベルトは涙と鼻水と血で顔をグシャグシャにしながらエイドさんに懇願するが、彼の怒りがおさまらないのか拳を握り振り上げる。


「エイド!もう止めろっ!!」


グエルさんがそう言うが、エイドさんは気づいてないのか止めずに殴り出した。


ん? 今の話って。


そろそろ止めないと本格的にマズいのだが、グルベルトの話の中に気になる言葉があったので、思わず立ち止まってしまった。


「俺の家族は何処にいるっ!! 話す気がないって言うなら俺がテメェをブチ殺すぞっっっ!!?」


えっ!? 家族・・・・・・って事はつまりエイドさんは・・・・・・。


「ヒッ!? ぢ、地下室だ!書斎のへぇあ部屋がくし隠し扉ある。ぞ・・・・・・・ぞごに放り込んだ。じゃんとちゃんと生ぎてイる。だのぶたのむ、だすげてぐれぇ〜〜〜・・・・・・ッ!? だ、だずげでぐれぇぇぇええええええっっっ!!?」


俺達がいる事に、気が付いたグルベルトは助けを求めて来た。


「エイド、もう止めて! アナタらしくないわっ!!」


「エイド先輩! 止めて下さい!!」


「エイド、もうその辺にしておけっ!!」


グエルさん達はそれぞれ言葉を言いながらエイドさんの体を掴み抑えて止めようとするが、彼はもがいて解こうとする。


今の話を聞いて俺の予想が確信に変わった。そうでないと信じたいけど・・・・・・聞いてみよう。今の彼なら包み隠さず話してくれると思うから。


「あの、エイドさん・・・・・・もしかして家族をグルベルトに人質に取られているんですか?」


それまで怒りの顔をしながらもがいていたエイドさんだったが、俺がそう言った途端に、ピタリともがくのを止めて悲しい上にツラそうな表現に変わる。


「あぁ、そうだ・・・・・・俺はコイツに家族を人質に取られていたんだ」


その言葉を言った途端、俺以外の人達が驚く。


グエルさんは掴むの止めてから離れる。その後にエイドさんに話しかけ始めた。


「それじゃあ今日お前の様子がおかしかったのって、家族が人質に取られたからなのか?」


「あぁ、そうだ。二日前に家族を誘拐されたんだ。そしてその日に誘拐犯に言われたんだ。 明後日、バルデック公爵暗殺に協力しなければ家族の命はない。もし、お前がこの事を他人に話したりでもしてみろ? 家族がどうなるか分かっているよな? ・・・・・・と」


そんな事があったのか。だからあの時に睨んでいたんだ。


「俺は家族の場所も首謀者の事も何とか聞き出した。しかし、助けに行こうにも時間がなくて、どうしようもなくなってしまって・・・・・・悩んでいたらその日が来てしまった。もう、やるしかないと思い至って、だから俺は、今日・・・・・・お前達を裏切ろうとした」


グエルさん達は信じられない顔をしている。


「エイド・・・・・・お前」


「冒険者に襲われた場所が作戦の決行場所だったんですね」


しかし何でエイドさんがレーダーに敵として映らなかったのか疑問だけどぉ・・・・・・まぁそこら辺は後で神様に聞こう。


「あぁ、そうだ。それが失敗した瞬間、お前を恨んだ。しかし戦闘が終わった後に良く考えてみたら、あの場で俺まで口封じに始末する手筈だったんじゃないか? と、思い始めたんだ」


「それで本人に聞いてみたところ・・・・・・当たりだった」


エイドさんは悔しそうな顔になる。


「すまない。もう・・・・・・ああするしかなかったんだ。謝っても許して貰えないと思う」


「エイド・・・・・・」


しんみりしているエイドさん達には申し訳ないが、エイドさんの家族を救出する為に今すぐ動いて貰おう。それにグルベルトをこっちに渡して貰おう。気になる事があるし。


「残りの話は後にしましょう。隠し部屋についてはギルド職員に知らせて、見つけに行って貰いましょう。それとグルベルトに聞きたい事があるので私に任せて貰えますか?」


「うむ、そうだな。ところでエルライナはコイツに何が聞きたいのだ?」


「それはグルベルトが話していた リヴァイス について「ガハァッ!?」ッ!?」


声のした方に顔を向けると、何とグルベルトの胸に太い石の槍が刺さって倒れていた。

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