第2話

そんな折に、一つの噂が学校中に広まりました。


それは「五和純には悪いものが憑いている」という噂でした。


最初それを耳にしたとき、私はまさに「はぁ?」という感じでした。


もちろんそんなわけのわからない噂、私は気にもしていませんでした。


しかし後から後から「前の学校で五和と一番中のいい生徒が自殺した」「五和の元カレが事故で両足を失った」「五和の従兄弟が行方不明になった」などなど。純ちゃんと親しい人が次々と不幸に見舞われる、といった内容の噂がいくつも流れてきたのです。


途中までは覚えていましたが、あまりにも多すぎて覚え切れませんでした。


と言うより、私に覚える気がなかったのですが。


私もそんな噂を信じませんでしたが、多くの人が私同様に噂を否定しました。


噂を信じて純ちゃんから距離をとった人もいましたが、それはほんの一握りにすぎませんでした。


それほどまでに、純ちゃんには光り輝くものがあったのです。


顔、表情、声、仕草。


そして言葉では説明しがたい、オーラとか空気とか雰囲気とか。


私の知る限り、誰にも持ちえないものを純ちゃんは持っていたのです。


そしてその噂は、いつのまにか立ち消えていきました。


一時期純ちゃんの傍を離れていた人も、まるで何事もなかったかのように、しれっと純ちゃんの下に集うようになりました。


これで今までのように平和な日常が続くと思っていた矢先、またもや悪い噂が学校に蔓延しました。


それは純ちゃんではなく、私に関する噂でした。


いわく「まなは中年のおじさんと援助交際をしている」「隣町の男子高校生とやりまくっている」「ひそかに風俗で働いている」「子供をもう三回もおろした」などなど。


純ちゃんがオカルト的な噂であったのに対して、私はいわゆる下ネタと呼ばれるしゃれにならない噂でした。

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