第25話 3人で素振り

朝 食堂に行くと朝食が用意されていた


パンだから ドナだな


食事を済ませると 王女が嫌がる勇者に服を着せた


全裸主義を差別するとは人族らしい


他の主義を認めないとは……勇者すずに似ているのは顔だけか……


暇そうなので王座までついてきてもらった


150年ぶりの王座


俺が座ろうとすると王女が叫び出した


涙を流しながら 必死に


……何を訴えているのか……


こ これは勇者か……


他の勇者が城の城門の辺りに転移してきたようだ


俺は勇者と……勇者あつし……あつしとイリスと離れて座ることにした


どうせ通じないし 他の勇者と区別するために あつし…王女もイリスと呼ぶか


のんびり考えながら勇者を待った 


向かってくる勇者はなかなか強そうだ


しばらくして勇者のパーティー6人が到着した


6人を確認すると


ライ 29歳 勇者 レベル453


ガイラ 38歳 戦士 レベル321


モウラ 31歳 戦士 レベル312


ゴウ 32歳 弓使い レベル276


ネイ 28歳 魔法使い レベル299


クク 27歳 僧侶 レベル211


なかなか強いな 俺1人では かなりダメージを……いや 訓練に丁度いい


「挨拶がわりだ」


俺は魔法で6本の炎の矢と氷の矢を勇者達に放った


しかし 僧侶の魔法結界に防がれてしまう


俺は剣を抜き 剣で攻撃してくる3人に応戦する


3人の剣をさばき 反撃しようとするが そこに矢と炎が飛んできた


流石にきついか


「よろしいでしょうか」


魔法の玉で見ていたガウが転移の許可を求めてきた


「いや 待て このレベルなら致命傷は避けられる 俺が何度も斬られてからにしろ そうしないと訓練にならぬ」


「えっ ダメにゃ」


「わかりました 危ないと判断した時は勝手に転移しますが……とりあえずは セネが転移しないように押さえておきます」


俺は強くならなければ 夢を叶えるために 勇者あつしを超えなければ


勇者の剣を捌ききれずに剣が


これくらいなら……


俺は肩で受けることにした


しかし 剣が俺に届くことはなかった


いきなり勇者が風魔法で吹き飛んだのだ


その場にいた全員が騒ぎ出した


観戦していた勇者あつしが魔法で戦いの邪魔をしたからだ


「俺だけで戦わせてくれ」


勇者あつしに言ったが……もちろん通じない


勇者あつしが俺の横にきて 剣を抜いた


「どいてくれ まだ大丈夫だ」


しかし通じない……そして勇者あつしが前に出た


……


一瞬だった


全ての攻撃をかわしたと同時に斬り伏せたのだ


前衛の3人が倒れ そして後衛の3人も何も出来ずに倒れた


外傷もなく 6人の大道を一瞬で攻撃したのだ


勇者あつしは剣を鞘に戻し 俺に何かをいい下がって行った


とどめを俺に譲ってくれたようだ


俺は倒れた6人に近づき 次々に首を飛ばしていった


勇者あつしが俺に近づき何かを言ってきた


そうだな 手伝ってくれたのだか


「見事な剣技だった いつか俺も」


俺は勇者あつしに頭を下げた


勇者あつしは何だか困った表情をしていたが……


王女イリスは泣きながら何かを叫んでいた


知り合いだったのか……


俺には呪いがあるのだから 近づくほうが悪い


近づくのを止めなかったのが……


文句は 呪いを作った神に言ってほしいものだ


魔王は逃げられない 勇者なら誰でも知っているのだから 近づくほうが悪い 常識だと思うが……


気まずい雰囲気になり 俺達3人はいつものように距離をあけて座る



勇者あつしが王座の周りをうろうろしながら……


「なっ」


王座に座った


王女イリスはかけより 泣きながら勇者あつしに叫び出した


俺も近づき


「何 座ってんだ 俺の城だぞ」


俺も抗議する


俺と王女イリスが必死で抗議したからなのか すぐに立ち上がったが……


勇者あつしが王座を指差し何かを訴えている


更にジェスチャーで……王座を……見る?


王座を見るが……とくに変わったところは……鑑定魔法か?


「なっ ばかな どういうことだ」


鑑定すると クレーナガ城 所有者あつし となっていた


そもそも そこに転がっている王が所有者だったのでは……


「イリス この城は誰が支配していた」


……通じないが 鑑定してもらったほうがいいか


俺はあつしを真似てイリスに鑑定するようにとジェスチャーしてみたが……


イリスは首をかしげるだけで通じない


ダメか……どうしたものか……


あつしはこの城と関係があるのか?


……



離れられないので 3人での生活が続く


数日後 イリスとあつしが死体を外に運びはじめた


レベル1のイリスはアイテムボックスを使えないが……あつしは……


しばらく見ていたがアイテムボックスを使う様子がない


もどかしい……俺がアイテムボックスで運ぶことにした


イリスは怒っているようだが……1000以上の死体……手で運ぶといつまでかかるか


全てを収納し外に運んでいた場所に向かう


イリスは何かぶつぶつ言いながらついてくる


外に置いていた死体の場所に全ての死体を出した


「これでいいのだろ」


得意気に言ってみたが……違ったらしい


イリスはなぜか物凄く怒っている


何が不満なのか……


すると重なっていた死体をあつしが重ならないように移動させた


なるほど……確かに そうか 俺の仲間だとしたら そうするか……


俺は重なっている死体をもう一度アイテムボックスに収納して 今度は重ならないように出した


イリスは驚いていたが満足してくれたようだ


しかし今度はシャベルを渡してきた 俺にこれで穴を掘れというのか……


見ていたが 今度は間違いないだろう


俺は土魔法で次々に穴をあけていった


俺の魔法を見たあつしも魔法で穴を開けていった


……魔法で穴を掘る方法が思いつかなかったのか?


さっきも死体1000体以上を手で運ぼうとしていたし……あつしは強いが……頭が悪いのか……



3人での奇妙な生活が続く


ある時 あつしが素振りをはじめた


やはり動きが綺麗だ


俺もあれくらい出来るようにならなければ……


俺はあつしの動きを手本に素振りをはじめた


あつしに稽古をつけてほしいとお願いした


もちろん通じないが 木の棒を渡すと受け取ってくれた


何と あつしは敵である俺に毎日稽古をつけてくれたのだ


やはり あつしは凄かった


どの動きも洗礼されている


あそこまで極めれば むしんくうかんが俺にも使えるようになるのだろうか……


あつしの攻撃は読むことが出来ない


むしんくうかん 戦闘空間認識力を極め 相手の動きを完全に把握し 気配なく的確に攻撃する 最強の技


しかし どんな達人でも 攻撃の癖が出るのだが あつしにはまったく癖がない


まるで何も考えずにただ剣を振っているだけのように見えるのだが……


俺があつしに稽古してもらっていると イリスもあつしを見ながら棒を握りしめて素振りをはじめた


その日から俺とイリスは一緒に毎日あつしに稽古してもらうことになった


3人での奇妙な生活が続く

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