第3話

 朝は気分良く目覚めた、暫くはまたダラダラ過ごそうと考えた。

 

 朝早くにチャイムが鳴った、千里眼で覗くと警察だった。

 

「紅葉、警官だ」

「大丈夫よ、私に任せて」

 

 紅葉がドアを開けた、俺は後ろに付いて行った、警官が二人いる。

 

「朝からすいません、この男に見覚えはありませんか?」

 

 昨日の男だ。

 

「さぁどこにでもいそうな顔だし、私は他の男に興味はないからわからないわ」

「そうですか、昨日の昼にこの男がこのマンションに入ったのを監視カメラに映っていたので」

「うちには来てないわ、何の事件なの?」

「近くの公園で瀕死の状態で発見されたんです、この男が包丁を持っていたので誰かと揉めたんじゃないかと聞き込みをしてるだけです、朝から失礼しました」

 

 警察が去って行ったのでドアを閉めた。

 

「ねっ、大丈夫だったでしょ?」

「お前の冷静さには勝てないや」

「万が一疑われても監視カメラに私達は映ってないわ」

「そうだな、紅葉が恋人で良かった」

「恋人以上になるのはいつかしら」

 

 紅葉がいたずらっぽく笑っている。

 

「また今度キリのいい日にな」

「えっ、あっはい」

 

 紅葉が顔を真赤にしてうつむいた。

 

「今日はデートしよう、美味しい物でも食べ歩きしないか?」

「うん、行きましょう」

 

 またチャイムが鳴った、郵便局だ簡易書留を受け取った、この前申し込んだクレジットカードだった、紅葉の分も渡してやった。

 

「いいの?」

「好きな物を何でも買うといい」

「ありがとう」

 

 二人で神戸の街を探索した、平日でも人は多い、京都のように観光客も多いようだ外人をよく見かける。長く大きい商店街を歩き、中華街にも寄った肉まんが食べたかったが人がかなり並んでいたので止めた、近くのカフェに寄りサンドイッチとパフェを食べた。

 

 神戸コロッケも店で買って食べた、かなり美味かったのでまとめ買いした。夕方になりマンションの近くも見て回った、いろんな店が揃っている。

 

「今晩刺し身にしないか?」

「いいわね」

「そこの店で買って帰ろう」

 

 大きな魚屋に入った。

 

「今夜は刺し身パーティーにするから二人分適当に見繕ってくれ」

「あいよ、ちょっと待ってくれ」

 

 十分程で刺し身の山を出して来て包んでくれた、金を払いマンションに戻った。

 

「傷まないように早速食べよう」

「そうね」

 

 刺し身を皿に並べ二人で食った、かなりの量だが完食した。

 

「凄い美味かった、また食おう」

「美味しかったわ、また食べましょう」

 

 じいさんからテレパシーが飛んで来た。

 

『優斗、紅葉そっちの生活はどうかね?』

『楽しく過ごしてるよ』

『私もです』

『昨夜の事件はお前達だろう?』

『そうだよ』

『よくやった』

『おじいちゃん、優斗って剣を持つと人が変わるのよ』

『それくらいの方がいい、ところで優斗今お前を探した時にもう一軒八神と言う家を見つけた、お前の両親かもしれない』

『場所を教えてくれ』

『西元町の安田マンションの四百三号室だ、神戸に他の八神を送った覚えはないからな』

『明日にでも見てくる』

『見つけたら殺しても構わん』

『あぁそのつもりだ』

『それが片付いたらまた二人でゆっくりしなさい』

『わかった』

 

 テレパシーが途切れた。

 

「優斗、何で笑ってるの?」

「見つけたからだ、やっと復讐出来る」

「私は止めないわ、一族の裏切り者だから」

「あぁ明日が楽しみだ、千里眼で見てみる」

 

 俺は千里眼で安田マンションを探し部屋の中を見た、写真よりかなり老けたが間違いない、五十歳くらいだろうか? 子供はいないみたいだ、見るのを止めた。

 

「間違いない、親父とお袋だ」

「何時くらいに行くの?」

「二人が揃った時に行く」

「わかったわ」

 

 二人で風呂を済ますと神戸コロッケを食べながらくつろいだ、二人共歩き疲れたので早めにベッドに入った。

 

 朝のアラームで起きた、朝食を済ませコーヒーを飲み、千里眼で両親の部屋を見たが二人共まだ寝ている、仕事はしてないのだろうか? 早く終わらせたい、第三の目で見ながら神戸コロッケを食べた。

 

「優斗、神戸コロッケ気に入ったの?」

「あぁこんな美味いコロッケは初めてだ」

「栄養はあるからいくら食べてもいいわ」

「今日って金曜日だよな?」

「そうよ、どうしたの?」

「親父達が今起きたところだ」

「仕事はしてないのかしら?」

「俺もそれを考えた、早めに終わらそう」

「わかったわ、家に乗り込むの?」

「一応玄関から入るつもりだ」

「任せるわ」

「じゃあ行こう」

 

 ゲートを抜けドアの前に出た、隣は空き部屋みたいだ、チャイムを押した。

 

 お袋が出てきた。

 

「どちら様ですか?」

「八神といいます、もしかしてあなた方も京都の八神一族の方ではないですか?」

 暫く沈黙があったが、入って下さいと言われたので部屋に上がった。

 

 お袋が親父に説明している、親父が話し出した。

 

「八神さん、我々の事は黙っててくれませんか?」

「どうしてです?」

「私達は子供を捨て一族を裏切ったのです」

「もしかしてこんな三つ目の子供ですか?」

 俺は第三の目を開いた、二人が驚いて固まった。

「俺があんたらの子供だよ」

「そっ、そんな」

「俺を捨てた罪と一族を裏切った仕返しに来たんだ」

「怖かったんだ許してくれ、二十年間ビクビクしながら暮らして来たんだ」

「許せるわけがないだろう、じいさんも殺していいと言っている」

「お前に実の親が殺せるのか?」

「実の親でも関係ない、捨てられた俺の気持ちがわからないのか?」

 

 俺は怒りで叫んでいた。

 

 親父達が剣を出して来た、震えている、俺はドラゴンソードで親父達の剣を折った。

 

「それは龍王の剣じゃないか?」

「そうだ俺が龍王に認められた」

 

 ドラゴンソードに炎をつけた、親父達の両腕を肩から斬り落とした、切り口は炎で焼けて血は出なかった。

 

「すまない、許してくれお願いだ」

「駄目だと言っただろう」

 

 まだ逃げようとしている、玄関は紅葉が剣を出し塞いでいる。

 

「八神流奥義達磨斬撃」

 

 剣を振った、両足も根元から切断した、体が崩れ落ちる、まさに達磨だ。

 

「あはははっ、実に愉快だ」

 

 俺は笑いながら二人の両目を剣でくり抜いた、目玉を踏み潰す。

 

「もういっその事早く殺してくれ」

「はははっ、駄目だお前達はその体で死ぬまで後悔しながら過ごせ」

 

 ゲートを開きじいさんを呼んだ。

 

「じいさん、殺さずこの姿で放っておこうと思うんだがいいか?」

「構わん」

「お父さんいるんですか?」

「お前にわしをお父さんと呼ぶ資格はない」

「じいさん、ありがとう俺達もこれで帰る」

「わかった、一族にはわしから報告しておいてやろう」

「頼むよ」

 

 じいさんが帰った。

 

「じゃあなクズ共」

 

 俺達もゲートを抜けマンションに戻った。

 

「もっと残酷に殺すのかと思ったわ」

「あれの方が残酷だ、あの姿で残りの人生を送らないといけないんだぞ」

「そうねある意味残酷ね」

「はぁースッキリした」

「第三の目から血の涙が出てるわ」

 

 俺は鏡を見てティッシュで拭った。

 

「嬉し泣きだ」

「それならいいわ」

 

 またコロッケを食べた、心の中がスッキリした、二十年の恨みが晴れた。

 

「優斗の表情から影が消えたわ」

「恨みを晴らせたからかもしれないな」

「男前になったわ」

「それはよかった、二十年来の願望が叶ったからな」

「じゃあ今夜はお祝いしましょう」

「じゃあピザとフライドチキンが食べたい」

「そんなのでいいの?」

「あぁそれがいい」

「わかったわ、夕方までくつろぎましょう」

「その前にコロッケを買って来る」

「行きましょう、私も食べたいわ」

 

 またコロッケをまとめ買いしてきた、やはり出来たてのが一番美味い。

 

 夕方になり紅葉が電話でピザとフライドチキンの配達を頼んだ、すぐに届けられた、ジュースも付いて来た。

 

 二人でジュースで乾杯し食べ始めた、ちょうどいい量だった美味かった。

 

「美味かったな、今日はいい一日だった」

「美味しかったわ、また食べましょう」

「じいさんは和食ばかりだったから、こういう物が美味く感じる」

「じゃあ、暫くは洋食にするわ」

「頼む」

 

 チャイムが鳴った。

 

「誰?」

「警察だ、俺が出る」

 

 ドアを開けた、警官が二人いた。

 

「またあんたらか」

「八神さん、ご両親はどこに住んでます?」

「俺は産まれてすぐに捨てられたから顔も名前も知らない」

「そうですか」

「何かあったのか?」

「隣町の八神と言う夫婦が無残な姿で発見され、息子にやられたと言っていたので」

「俺達は数日前に京都から引っ越して来たばかりなんだ、さっきも言ったが親の顔も名前も知らない、疑ってるのか? 監視カメラでも見て来いよ」

「いえ、ただ同じ名字がこの辺りではここだけでしたので、失礼しました」

 

 警官が帰って行った。

 

「あなたがあんなに堂々としてるのは初めて見たわ」

「変か?」

「ううん、惚れ直したわ」

「親父達を片付けたから変わったのかもかもしれないな」

「それでいいわ」

 

 またチャイムが鳴った。

 

「配達業者みたい」

「そうだな俺が出る」

 

 ドアを開けると定期購入した豆乳だった、受け取りリビングに戻った。

 

「まだ何かありそう」

「よく気付いたな、誰か来るぞ」

「誰?」

「わからん中年の男だ」

 

 チャイムが鳴った。

 

 ドアを開けた、私服の男が警察手帳を出してきた。

 

「何の用だ?」

「公園での事件と隣町の事件は知ってるだろう?」

「あぁ制服の警官が来たからな」

「俺はお前らが怪しいと目を付けている」

「俺達は無関係だ、警察は二人で行動するんじゃないのか?」

「俺の独断で動いている、部屋の中を見せてくれ、刀か何か隠してるだろう?」

「家宅捜査の礼状を見せろ」

「そんな物関係ないな」

 

 男が上がり込んで来た、立ち塞がったが突き飛ばされた。

 

「不法侵入と暴行で訴えるぞ」

「お前みたいなガキに何が出来る? やれるもんならやってみろ」

 

 男が部屋を探し回った。

 

「畜生、武器をどこに隠した?」

「そんなものは無いと言ってるだろう」

「また来る」

 

 男が出て行った。

 

「何なのあの男、腹が立つわ」

 

 俺は警察手帳をテーブルに置いた。

 

「男が俺を突き飛ばした時に取った、じいさんに相談する警察関係には強いと聞いてる」

 

 テレパシーを飛ばした。

 

『どうした?』

『沼田という刑事が不法侵入で家宅捜査を勝手にして俺を突き飛ばした』

『そうか、任せておけ圧力をかけてやる』

『頼むよ、あの男は許せない』

『すぐに終わる待っていろ』

『わかった』

 

 テレパシーが終わった。

 

「お前にも聞こえてただろ?」

「えぇ待ちましょ」

 

 三十分程で電話が鳴った。

 

『はい』

『私、警察署長の西山と言います』

『で? 沼田は?』

『その件でお詫びに行きたいのですが、今から行ってもいいですか?』

『あぁ、沼田に荒らされた部屋も見てくれ』

『わかりました』

 

 電話が切れた。

 

「署長が詫びに来るそうだ」

「クビにしてもらいましょう」

「そうだな」

 

 すぐに署長と警官二人と沼田が来た。

 

「この度は沼田が単独行動をしてすいませんでした」

「不法侵入だ俺は暴言と暴力を振るわれた、マスコミに言うぞ」

「申し訳ありません、それは止めて下さい」

「言葉で謝るだけなら子供でも出来る」

「沼田は今、懲戒免職処分にしますので圧力を解いてもらえませんか?」

「本当にクビにするならな」

「本当です、それに我々は八神一族に関わってはいけない事になっています」

「そうか、じゃあもう関わらないと約束出来るか?」

「はい約束します」

 

 俺は沼田の警察手帳を署長に渡した。

 

「沼田、さっきの暴言はどうした? 俺になも出来ないガキだと言っていたが」

「畜生、どうせクビだお前らを道連れにしてやる」

 

 沼田が拳銃を抜いて二発発砲した、弾丸は壁に当たった、慌てて警官が取り押さえた。

 

「クソ野郎は拳銃もまともに撃てないみたいだな、クズは死ね」

 

 沼田は泣きながら拳銃をこめかみに当て引き金を引いた、沼田の頭や脳が飛び散った。

 

「署長、こんなクズのせいで廊下が汚れた」

「すいません、綺麗に片付けます」

「もういいか? 圧力は解いてやる」

「はい、お願いします」

 

 ドアを閉めた。

 

「はははっ、バカが死にやがった」

「スッキリしたわ」

「じいさんに伝えるよ」

 

 テレパシーを飛ばした。

 

『どうなった?』

『署長が謝りに来て、付いて来た沼田は懲戒免職になって自殺した』

『そりゃよかった』

『ありがとう、圧力を解いてやってくれ』

『わかった』

 

 テレパシーが終わった。

 

「これでやっと平和になった」

「そうね」

 

 俺はコロッケと豆乳を出してリビングで食った、紅葉は荒らされた部屋を戻した。

 

「疲れたわ寝ましょう」

「そうだな長い一日だった」

 

 着替えてベッドに入った、二人共すぐに眠った。

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