36.4度
しみしみ
おやすみ
目が覚めた。
君はまだ眠っていたから、朝ごはんをつくったんだっけな。
朝ごはん、冷めちゃうから君を起こしたんだ。
でも、君から三十六度は感じられなかったんだ。
もうあの日から何度めの春だろう。
見慣れた桜。
君と一緒に見たっけな。
ここを歩いて、笑いあったっけ。
最後に交わした言葉は、おやすみだったっけ。
あの日から私も君も、眠ったままだよ。
おはようって言って。
それで街に出て、手をつないで、一緒に歩こうよ。
話せなかったことが、沢山あるよ。
言葉なんかじゃ、足りなくて。
何年待たされたって構わないよ。
だから、もう一度。
会いたい。
その凛とした声を聞いて、やわらかい君の匂いに包まれて。
ああ、幸せだったな。
私は君なしで生きていけるのかな。
でもそう思いながら迎える春は何回目だろうね。
きっとずっとそう思いながら生きてくんだ。
おやすみ。
君が起こしてくれるまで。
君がおはようって言ってくれるまで。
私は眠ったままいることにするね。
36.4度 しみしみ @shimishimi6666
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます