【お急ぎの方へ☆サクッとネタバレ】Episode10 3人のアリソン オムニバスホラー3品

 今回のオムニバスホラー3品(A、B、C)も、それぞれ独立しており、話は全く繋がっておりません。3人のアリソンも、それぞれ別人です。



A 『刑罰』

★本作の”アリソン”★

 清らかで嫋やかな百合の花のごとき美女であるも、残虐で極悪非道な女殺人鬼。その手にかけた被害者は300名近く。全く反省なしであり、まさに悪魔。


 7日後に裁判――”裁き”を控えている女殺人鬼アリソン・ハインドマンの向かいの独房に、ベイリーという名のお上品な風情の若い女も入った。

 ベイリーは「裁判の前日の夜、自分と同じくアリソンに心酔している自分の仲間たちの手助けの元、アリソンを脱獄させる予定」と言う。救いの手が差し伸べられたことに安心のうえ、気を良くしたアリソンは、ベイリーからの”殺人者としてのインタビュー”にも上機嫌で答える。


 実はこのベイリー、プリズングルーピーなどではなく吸血鬼。

 裁判の結果などを待たなくても、極刑(死刑)間違いなしのアリソンに、吸血鬼たちと裁判長や看守たちは一芝居を打ち、アリソンに脱獄に成功したと思わせることに成功。

 ”闇の中なのに明かりを必要とせず”、とある墓地までベイリーと彼女の仲間たちとともに逃げてきたアリソンであったも、やけに”喉が渇いている”うえに、”十字架が怖い”。


 アリソンは、ベイリーの仲間の1人に殴られ気絶させられ、四肢を杭に縛り付けられ墓地の草の上に磔にされてしまう。

 アリソンの元に看守たちとともに現れたのは、ニコラス・コール裁判長。裁判長は、この場でアリソンに死刑を宣告。

 しかも、アリソンの刑罰は、ただの死刑ではない。

(本作の設定では)吸血鬼となった者は輪廻転生の流れに乗ることが出来ない=二度と生まれ変わることが出来ない。


 そう、アリソン自身もこの時までにベイリーに少しずつ血を吸われて、吸血鬼となっていた。

 情状酌量の余地もなく、更生の可能性も皆無であるアリソンの転生の可能性を完全に消滅させたうえでの死刑。未来永劫、殺人鬼アリソンの毒牙にかかる者が皆無であるように、と。


 眼をグワッと見開き、鋭く長い牙を剥き出し吠え続けるアリソンであるが、もうすぐ東の空から”太陽が昇る”のだ……



B 『不一致』

★本作の”アリソン”★

 毎夜のように続く晩餐会に嫌気がさしている、ややコミュ障で陰キャな貴族の姫。だが、勘は鋭く観察眼には優れている模様。


 アリソンは毎晩の晩餐会を疎ましく思っているも、彼女とは対照的な陽キャでコミュニケーション上手な双子の妹姫・セレニアは根っからの超パーリーピーポー。


 ある夜の晩餐会に、当代一の美男子と名高いロジー公爵様が登場。なんとロジー公爵様は、明るいセレニアではなく、アリソンを気に入ってしまった。

 だが、このロジー公爵様は、極めて探究的な真性スカトロジスト!!!

 しかし、アリソンはそういった性的趣味は持っていない。性の”不一致”だ。


 陰気な姉に思い人をかっさわれてしまったことに、キーキー喚くセレニアに、アリソンは公爵様の愛を獲得するための秘訣――ロジー公爵様自らがお作りになった料理を残さずに食べること――を”ついうっかり”教えてしまう。


 アリソンの代理でロジー公爵様の「秘密のお食事会」へと向かったセレニア。果たして彼女は、ロジー公爵様が自らが体内で作った料理を完食することは出来ずに泣きながら許しを乞い続けているのか、それとも……



C 『魅力』

★本作の”アリソン”★

 女の体に男の心を持って生まれた人。人の話――それも唯一無二の大切な人の話――を最後まで聞かないせっかちな性質であるうえ、その大切な人を信じることもできなかった。

 

 

 生まれ故郷の者たちからの迫害を受け続けることに耐え切れなくなったアリソン。あてもなく彷徨い続け、飢えと渇きで倒れる寸前、ある墓地へと辿り着く。そこに一輪の百合の花を手にした喪服姿の美女――女優ミルドレッド・ウィンタース――がやってきた。


 この墓地は現実のものではなく、自身の”未亡人風の魅力”をより輝かせたいミルドレッド・ウィンタースのためのミルドレッド・ウィンタース劇場だった。どういう仕組みかは不明であるも、アリソンはそこに迷い込んでしまったらしい。

 そして、ミルドレッドは”女を愛する女”であった。


 一緒に暮らすようになったアリソンとミルドレッドは、愛し合うことに。もちろん、現実のベッドでだけではなく、あの墓地にても……

 しかし、ある時よりミルドレッドの様子がおかしくなる。

 アリソンは、それをミルドレッドの心変わりだと思い込み、彼女の話を最後まで聞かずに家を飛び出す。


 その後、アリソンは惨たらしいバラバラ死体となって発見される。

 自分が殺された時の記憶は失ってしまっていたアリソンであるも、殺される寸前……襲われた時、後ろから”ミルドレッド愛用の香水の匂い”がしたことまでは覚えていた。

 アリソンは、ミルドレッドの”芸の肥やし”となる(彼女が本当に未亡人になる)ために、彼女に殺されバラされたのだと……


 例のミルドレッド・ウィンタース劇場にて、愛よりも憎悪と妄執に覆いつくされアリソンの魂は、ヘドロのごとき醜悪で巨大な化物に化し、ミルドレッドを生きたまま噛み千切りまくり惨殺。


 しかし、アリソンを殺した真犯人は、ミルドレッドではなかった。

 ”ミルドレッド・ガールズ”と自称している、彼女の強烈なファンというよりも、”信者”と呼ぶべき女3人組だった。彼女の強烈な魅力は”信者”を生み出していた。この女3人組は、”ミルドレッドと同じ香水”ももちろん愛用中。

 奴らは、愁いに満ちた未亡人風の魅力を持つ女優ミルドレッド・ウィンタースが、愛する者を亡くして”真実、未亡人となったなら”、あの魅力にさらに磨きがかかるのでは、と斜め上に狂気を走らせ、アリソン殺害に及んだというオチであった。




【おまけ】

 今月のオムニバス3品には、”アリソン”(太陽の光)という名前の人物が登場するだけでなく、以下の作中表現や登場人物の台詞にも共通点があります。


・ 喉の渇き

・ 神様からの贈り物

・ メス豚

・ クソ ※「B 不一致」にては、登場人物の台詞こそ出てきませんが、ずばりロジー公爵様の”産物そのもの”がダイレクトに登場です。ちなみに、ロジー公爵様に仕える美青年執事が嘔吐する原因となった「黄色いワイン」とは、ロジーは公爵様の尿でございます。

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