のろいのうた【連作短歌】【創作エッセイ】

袋緒花緒

【連作短歌】新年ファミレス(十首)

おみくじも神頼みもいらぬ初詣

帰路のハンバーグ

ひたすらめざし


すべりこむ

二度目のみくじは待ち時間

今年の運は

吉か凶か


大吉を引いたならば一安堵ひとあんど

凶を引いたら首を伸ばすか


「五名でお待ちのお客様」

焦る声の支配人

「お冷はいかが」とまわるスタッフ


母は小さめ

みんなは大きめライス付き

食後のコーヒー

いつものメニュー


気が付けば空腹感じぬこの体

気づかぬ母は

「いつもどおり」を


父を見て

「フォークが足りぬ」と笑う母

見られぬうちにミンチを口へ


おいしいね

うんおいしいね

おいしいね

ぼくも笑って

「おいしいね」


また来年

渡されたアメはハッカ味

アセロラ味なら欲しかった


「おいしい」と

心の底から言えたなら

ぼくは死なずにすんだのに

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