付箋的恋愛術

白ウサギ

第1話 バイト先の後輩

「好きな食べ物は?」


「は?」

俺はバイト先の自分の机に貼られた紫の付箋の内容に

思わず周りを見てしまう。


「なんだ、こりゃあ?」

付箋を机から剥がし、裏も見るが何もない。


「おはようございます。先輩」


「おっ、江島えじまおはよう」


扉を開けて入ってきたのは同じバイト仲間の江島えじまみさき。

外見はおかっぱ頭のメガネをかけた知的美少女。


ただ、中身は・・・。

「今日もモテなさそうですね」


「うるせーな、別にいいだろ」


「一生独り身の未来が視えます」


「おまえは超能力者か?」

毒舌JKだった。



「なぁ、江島、この付箋しらねぇか」


「何故私が知らなければいけないのですか?」


「すみません」


おかしいな、俺が年上で先輩のはずなのに・・・。

まぁ、こっちは35歳でレンタルビデオ屋でバイトの身、

向こうは医者志望の将来有望な秀才JKときてる。


どうあがいても、俺と江島の社会的格差は歴然。


「その付箋がどうかしたのですか?」


バイトの制服に着替えてきた彼女が、俺の持つ付箋を取り上げた。


「先輩に興味ある人がいるなんて・・・呪いですかね」


「なんで!?」

目の奥の瞳で付箋を睨みながら呟く彼女。


「いや、俺の事を好きな誰かが・・・」


「そんな人はいません」


「断言した!?いや、いるかもしれないだろ」


「いません。先輩、バイトの皆に嫌われてますから」

笑顔で毒を吐く彼女。


「マジで?」


「自覚がないのが可哀想」

そう言って颯爽とレジへ向かっていく彼女。


「俺が何かしたのか」

付箋を見ながらバイト先で孤立する俺。


無性に寂しくなった俺は誰が置いたかわからない

付箋に答えを書いた。


好きなもの、唐揚げと・・・。




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