第4話 高次元生命体の謎と言うこと聞かねえ連中

 で、だ。

 7号ことユラの説得は終わった。あとは作戦を実行に移すだけだが、肝心の作戦がねえ。


「こういうときはとりあえず様子見だな」

「うむ。わっちの出番じゃな」

「4号飛べるか?」

「修復中なのだ。まだ実体化できない……む?」


 4号が何かに気づいたように話すのをやめる。


「なんだよ」

「そういえば吾輩のいる世界とマスターのいる世界は違う世界だったな」

「おう」

「そこを……なんかこう、上手くすれば破損していない箇所を出せるかもしれんぞ」

「んん?」


 何か妙なことを言い出してやがる。破損してない箇所つったって球体のど真ん中ぶち抜かれたんじゃ殆ど機能不全起こしてるんじゃねえのか? こいつの能力が球体のどこに内蔵されててどうなってんのか知らねえが。

 それともドーナツ型になって出てくるとか、か? よく分かんねえな。


「まぁやれるってんならちょっと試してみろよ。やるだけならタダだしな」

「うむ。では出てみよう」


 俺の目の前に青白く光る魔法陣が現れてそこから銀色の物体がせり出してきた。

 出てきたのは球体じゃなくドーナツみたいな形でもなく──三角錐だった。


「いやそうはならねえだろ」


 思わず俺は突っ込んだ。


「なっとるのだから仕方ないのだ」

「……まあ、乗れるならいいか」


 よく分かんねえが破損してる様子はないので俺はよしとした。元々、高次元の物体を低次元に出してんだからなんか変なこと起こるんだろ、多分。

 4号の上に魔力による力場が展開。その上に俺とユラが乗り4号が上昇する。


「2号」

「うむ!」


 女の元気な返事が聞こえ空中に小さな魔法陣がいくつも展開。そこから獣の口部分だけみたいな小型の飛行物体が現れる。口の中には眼球。2号の子機だ。視神経が繋がって……かどうかは知らねえが俺の視界と子機の視界が共有される。

 2号は嗅覚が鋭いのでこれであの女の匂いを辿れば居場所は分かるってわけよ。

 ショタの居場所を探る方法も思いついたので4号に言っておく。


「なんかでかい魔力は見つかるか?」

「見つからぬ。恐らく隠蔽しているのではないか?」


 予想どおりの答えが返ってきたので特に落胆はない。高位の魔術師がよくやるが理由は知らねえ。能ある鷹は爪を隠すってやつか。


「わっちがそちらも追おう」

「その手があったか。大体の居場所でいい。見つかるなよ」


 2号の提案に俺は指を鳴らす。鳴らなかった。

 魔力の隠蔽はよく聞くが匂いまで厳重に隠している可能性は低い。もちろんあり得なくはないが匂いで探るのもやっておいて損はないだろう。


「アルベルトさん、皆がいないとほんとに何もできませんね」

「うるせえな。いるからいいんだよ」

「7号、落ちそうになっても私が助けてあげるわよ」

「吾輩が落とさないようにするから安心するのだ」


 1号にユラは「ありがとうございます」と返事。どうにもこいつらはユラに甘い。教育に悪いのでやめてほしい。主にこいつが調子に乗るといった方向で。

 2号の子機と共有した視界で獲物を俺は探し続ける。普通、こんな情報量送られてきたら脳が破裂しそうなもんだが2号の本体を経由して視界共有してるせいか別に頭痛が起こったりはしない。便利なもんだ。

 中々目的の相手が見つからない。お、この娼婦の姉ちゃんはエロいな。後で遊びに行くか。


「なに見てるんですかアルベルトさん。娼婦は病気の危険があるからダメって言ってるじゃないですか」

「ちゃんとした娼婦なら病気なんか……ちょっと待て、なんで俺が見てるものが分かったんだ」

「僕も2号さんと視界共有してるので」

「は!?」


 俺は普通に驚いた。2号のやつ複数人共有までできるのか、知らなかったぜ。でも俺が見てるものがバレるからユラに繋ぐなよな全く。

 しかし俺はこのことを聞いて新しい使い方を1つ閃いた。


「お前、もしかしてユラと俺の視界共有とかできるのか?」

「それはやってみぬと分からぬが、多分できるじゃろうの。わっちの見てるものをマスターに送ればいいだけじゃからな」

「ふーん」


 2号の返事は理屈上、できそうな感じがあった。何かの役に立つかもしれねえから覚えておこう。


「お、見つけたぞ」

「でかした」


 2号が目標を発見。俺も視界を切り替えて確認をする。街から1人で出ていくのが見えた。


「よぉし第1条件はクリアだぁ! あの化け物ショタはどうだ!」

「街で匂いは途絶えておる。少し前には一緒におったようじゃが、多分どっか行ったようじゃな」

「完っ璧じゃねえか、最高の状態が整ってやがる! これはケツ振って俺を誘ってやがるなぁ!」

「それは絶対ないと思いますよ」


 テンション上がってる俺にユラが水を差してきやがるが無視するのに限る。だがそんな俺にユラはまだ続けた。


「それにアルベルトさん、こういう良さそうな状況で失敗するタイプじゃないですか。やめといた方がいいんじゃ……」

「あー、それはわっちも思うの。こういうときマスターは必ず失敗するでな」

「吾輩はこういう場合の成功例を覚えていないのだ」

「俺様も」

「私も」

「私もですぅ」

「そうだっけ……?」


 7号2号4号霧1号花が絶好調である俺に向かって文句を垂れてくる。6号は馬鹿なので記憶にないらしい。

 何故こいつらは全員して俺の行く手を阻むんだ。だってどう考えたってチャンスだろ。そうだよな? な?

 脳内会議では全会一致だったので直ちに作戦を実行することにした。


「うるせええええええええええ!! どう見たってやれるんだからやるんだよ!!」


 俺の大号令に全員がため息をつきやがった。

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