第6話 説得と脱出その2

 間一髪のところで避けて、手首を掴む。膂力に差があるせいで、それだけで女は腕を動かせなくなった。


「なんだよ、さっきまでぴーぴー泣いてたわりに元気じゃねえか」

「死ね! よくもあたしの初めてを!」


 涙で腫れ上がった目で俺を睨みつけながら、女は叫んだ。


「処女だったのかよ。どうりで痛い痛いってうるさかったわけだ」


 これ以上、暴れられても困るので矢が刺さっている方の足に足払いをかける。痛みに顔を歪めながら、女が転倒。ナイフを持った方の腕をひねり上げて、背中に馬乗りになる。


「離せぇ!」

「まぁ聞けって。ここで俺をぶっ殺してもいいが、脱出できなけりゃ意味ねえだろ?」


 まだ女はじたばたと暴れていた。間違ったこと言ってねえのに、なんで暴れるかねえ。


「お前の足だって治ってねえんだ。ここは、遺跡を出るまでは協力した方がいいと思うんだが?」


 怪我を指摘すると少し抵抗が弱まる。もう一押しってところか。


「一人で出られるっていうんならいいがな。また罠にかかったら、今度こそ命はねえぞ」


 最後に一声かけて、少し様子を見る。少しずつ抵抗が小さくなり、止まった。

 なんでわざわざ説得なんかしなけりゃならないのか、理解に苦しむぜ。協力しなきゃ出られないのなんて、火を見るより明らかだってのに。


「マスターが強姦したせいでは?」


 花がなんか言ってきたが都合が悪いので無視。知ったことかよ。


「……外に出たら、覚えてなさいよ」

「はいはい」


 協力する気になったのを確認したので、背中からどいてやる。


「早速だが、あっちの壁際になんか仕掛けがある。お前、分かるか?」


 女が起き上がろうとしたので手を貸そうとしたが、払いのけられた。足の痛みに苦鳴をあげながらも一人で立ち上がり、壁際に足をひきずりながら移動。

 なんで女ってのは強情なのかね。手伝ってやろうとしたってのによ。

 4号の明かりを向けて壁際の魔法陣を照らしてやる。何やらしばらくがさごそと操作をして、魔法陣が消えた。それと同時に出口が現れる。


「やるじゃねえか」


 女は俺を無視して出口の道を壁伝いに進んでいく。嘆息をついて、俺も後を追う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る