童話「かわらんべ」

@SyakujiiOusin

第1話

            童話「かわらんべ」


                               百神井応身


「かわらんべ」とは何のことでしょう?

 そうです。河童(かっぱ)のことです。「かわわらべ」と漢字では書きます。

 信州の天竜川には「かわらんべ」が住んでいて、川の深いところで泳いでいるとかわらんべに引き込まれて溺れてしまうから気を付けるようにと、大人たちは子供に教えました。

 昔はプールなどありませんでしたから、泳ぐのは川や池でした。

 河童は、人間の尻子玉が好物で、それを抜かれると人間は死んでしまうのだということで恐れられていました。

 誰が見たのかわかりませんが、河童の体格は子供のようで、全身が緑色をしていて、頭のてっぺんには丸い皿がついているのだと言われていました。

 そのお皿は円い形をしていて、いつも水で濡れており、皿が乾いたり割れたりすると死んでしまうのだとも言われていました。口は短いクチバシのような形をしていて、背中には亀のような甲羅を背負っていて、手足には水掻きがついているので、泳ぎは早いのだと言い伝えられていました。

 見たこともないのに、河童には肛門が3つあり、傍によると生臭いと、まことしやかにいう人もいて、子供たちは川で遊ぶときには注意されなくても、流れの速いところや深いところには近づかないようにしていました。

 昔の大人たちは野良仕事が忙しくて、子供たちと一緒に遊ぶことができませんでしたから、子供たちが自分で気を付けるようにさせるためには、いろんな知恵を働かせたのだと思われます。

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