童話「桃栗3年」

@SyakujiiOusin

第1話

            童話「桃栗3年」


                               百神井応身


 桃 栗 3年 柿 8年 ということばがあります。

 種をまいて、そこから芽が出てから大きな木に育ち、花を咲かせ実がなるようになるまでに、それだけの年数がかかるということです。

 梅はもっと長くて、18年もかかるのだと言われています。

 皆さんも、大人になるまでには、20年くらいかかります。


 あるところに、とても仲が良い桃と栗と柿と梅の種がいました。

 仲良しだからといっても、いつまでも種のままでいるわけにはいきません。がんばって大きくなり、子供をつくらなくてはならないのです。

 そこでみんなは相談しました。

「お百姓さんに、畑にまいてもらおう」ということになりました。

 でも、根がのびたときにからまると、お互いがじゃまだといって喧嘩になるかもしれません。

 そこで、おたがいの間をあけて蒔いてもらうことにしました。

 土の中で根が伸びたぶんだけ、木の枝はひろがります。

「枝が伸びて葉っぱが沢山ついたときに、なかよしだったことを思い出して、葉っぱと葉っぱで握手しよう」と約束しあいました。

 芽が出てからはたいへんでした。

 陽射しの強い日もあれば、雨が降り続くときもありました。枝が折れてしまうくらい強い風が吹く颱風というのもありました。それはじっとがまんしなくてはなりませんでした。

 病気になることもありましたし、虫に葉っぱが食べられることもありました。

 でも、みんなは「おおきくなってまた会おう」という約束を守るために、へこたれないでがんばりました。

 畑からの栄養を横どりしてしまう雑草や、木を弱らせてしまう害虫は、お百姓さんが退治してくれました。

 自分たちもがんばったけれど、いろんな人のお世話になり助けてもらいました。

そうしてすくすく成長しました。

 あるとき、成長して実をつけた木たちは、約束した通り、また会うことができました。

 もう子供ではありません。

 いろいろのお陰が有って実をつけることができたのだと、自分たちのことがわかるようになっていました。

「そうだ、お礼に熟した実を食べてもらおう。」

 感謝の気持ちが強く育った木たちは、すこしでもおいしくなった実を沢山食べてもらい、よろこんでもらおうと、おたがいにますますがんばりました。

 桃も栗も柿も梅も、立派で美味しい実をならすことができました。今も仲良しです。

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