どうせなら知将になりたかったんだが

@koutetu-no-zaru

第1話 よくあるプロローグ

その日も、主婦である希美のぞみは4才の子どものお迎えに、保育園に急いでいた。


(今日もやってしまった……)


パートの終了時間がお迎えに間に合うギリギリの時間設定であるため、つい足早になってしまいながらも、希美は持ち前のメンタルの弱さから自己反省会をやめられない。




(なんで私はこう、脳みそがところてんなんだろう?)


希美は何か新しい事柄が生じると、それまで考えていたことをすっかり忘れてしまうという自分の頭の弱さにいつも絶望寸前だったのだ。ガスコンロの火を消し忘れ、数時間後に小さい火が灯っているのを発見することなどざらである。今日とて職場で、後でやろうと考えていた作業をすっかり忘れてしまい、先輩から注意されたのだった。




(わりと毎度のことだもんなあ。恩田先輩、仕事できる人だし、またかよって顔してたな……本当にできない子ですんません)


美人の恩田先輩の、冷めた目での軽い叱責。男なら逆にご馳走様な状態なのかもしれない。そんな風に考えてしまうあたり、希美はそのお気楽さで、自己不信による完全な絶望状態を回避できている状態だった。


(40才って、不惑なんじゃないの?自他ともに戸惑いだらけの人生続いてるんだけど)


四十を二つも超えているはずなのに、と思わずため息をもらした。




その時だ。


ガツンと熱い衝撃が希美を襲った。一瞬のうちに、痛みと熱が凝縮されたような衝撃。それを感じたと思ったらすぐに世界が暗転した。

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