Op.24 苦渋の決断

 施工部隊の樹械兵ドライアードたちを徐々に後退させながら、シタンは自ら殿を担って鬼神の如く奮戦し、ベリンダの住民が避難する時間を稼ぎ出そうとする。しかし防壁を乗り越えてくる鋼殻竜パンツァーの数は、夜陰に勢いづくかのように増えていき、最早、その侵攻を抑えきれない状況に陥っていた。

 そして、さらに事態は悪化する。

 爆破するかのように防壁を突き破り、ティアマトが巨大な姿を現したのだ。それを目の当たりにしたシタンは、ベリンダの橋桁を吊り下げるメインケーブルを切断するよう、残存するセコイアデンドロンの樹士に指示した。アルテシア王国の領内に鋼殻竜パンツァーの大群を侵入させないようにするための措置だったが、ベリンダには未だ多くの住民が取り残されていた。

 メインケーブルに向けて巨大な斧を振り下ろすセコイアデンドロンへと、シタンの意図を察知したかのように多数の鋼殻竜パンツァーが群がっていく。セコイアデンドロンは構うことなく斧を振り下ろし続けるが、あと一歩というところで四肢を噛みちぎられてしまう。しかし、そこにシタンの駆るサージェントプラナスが割って入り、僅かに残るメインケーブルのワイヤーへと、銃剣による鋭い斬撃を見舞う。

 崩落するベリンダ。

 風に乗って、逃げ遅れた住民たちの悲鳴が聞こえて来る。

 それを振り払うかのように、シタンと樹士たちは自らの樹械兵ドライアードを駆り立て、鬼気迫る勢いで渡河を許した鋼殻竜パンツァーの掃討戦に移った。

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