Op.23 怯え
黄昏時の荒涼とした大地を黒錆色に染め上げながら、無数の
シタンは、ベリンダの住民に避難を指示しつつ、部下の樹士たちと共に臨戦態勢を整えた。一方、
咆哮と金属音と血飛沫が交錯する中、シタンは
施工部隊に二樹が編成されていたセコイアデンドロンは、その巨大さゆえ防壁内に二樹分の駐樹スペースを確保できず、内一樹を施工中の水堀の傍らに駐めていた。シタンが思いついた策とは、そのセコイアデンドロンを遠隔操作し、水門を破壊することで完成間近の水堀に水を満たすというものだった。
シタンは、防壁の頂からケテルを用いてセコイアデンドロンを遠隔操作するため、ミコトにサージェントプラナスへの同乗を求めた。しかし肝心のミコトは、凄絶な戦場の様相に怖じ気づき、その要請を拒否する。
「防壁に登るって……いくらシタンさんでも、あんな数の
「サージェントプラナスの俊足があれば問題ない。大丈夫だ」
「大丈夫じゃないですよ! どう考えても無謀です!」
「しかし……やらなければならない。住民の避難には時間が必要だ。ここで食い止めなければ多くの犠牲者が出る。頼む。女神である貴公にしかできないことだ」
「僕は女神じゃありません! ……女神を、演じているだけです」
「ミコト……」
「危険すぎます……そうですよ。女神を演じる条件の一つとして、僕に危険が及ばないようにするって、シタンさんは言いましたよね」
それを聞いたシタンは、激しい怒りの表情を露わにし、ミコトを殴りつけた。倒れ込むミコトに対し、シタンはそれ以上の暴力を振るおうとはせず、代わりに「すまない……貴公の言う通りだ……」と言い放ち、ベリンダの住民と共にミコトを避難させるよう、手近の樹士に指示した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます