Op.12 ケテルの機能

 アルテシア王国の王城に幾つか設けられているバルコニーは、花壇や噴水などが備えられており、ちょっとした庭園となっている。そんなバルコニーの一つで、ミコトはケテルを弄くっていた。

 ジルの首飾りに装着されていた記憶媒体を用いることによって、ミコトの推測通りケテルは起動した。しかし、ほとんどの機能にアクセスすることができず、ミコトは途方に暮れていた。

 王城警護のために立哨しているアルテシア王国の主力樹械兵ドライアード――ゼルコバが、ミコトの瞳に映った。

 ミコトは何気なく、遠方のゼルコバに触れるように人差し指を重ねた。すると、アイコンの上にマウスカーソルが重ねられた時のように、ケテルから放たれた光束によってゼルコバが青色に縁取られた。

 脳裏に閃くものがあり、ミコトは再びゼルコバに人差し指を重ねた。その状態で二秒ほど待つと、空中にメニューウィンドウが表示された。次いで、ミコトはメニューウィンドウに並ぶ項目の一つを選択する。

「これって……!」

 ミコトは思わず声を上げた。

 目の前には、ゲームコントローラのようなものが表示されていた。試しに「前進」に当たるボタンに触れる。すると、それと同期するかのように立哨していたゼルコバが一歩を踏み出した。

 脳裏の閃きが確信に変わり、ミコトは高揚感に急きたてられるまま、メニューウィンドウの他の項目を選択しようとした。

 その時だった。

 ミストルティンに設置されている鐘楼の鐘が一斉に鳴り始めた。

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