第30話 最終決戦、リーゼント対最強。
忍は心の中は悪態をついていた。『覇気の限界突破』を教えたのが輝だと理解し、更に使用した後のデメリットを教えていない事にも理解した。
「デメリットを知って使っているのか?」
「知らねぇけど、今はお前がムカつくだけだ!」
忍の問いに修二は無慈悲に答えず、足に炎を纏い噴流で接近する。
修二は拳に膂力を込め、忍の頬を完全に捉えて的確に殴る。
その修二の攻撃に対し忍は前回と同じく両腕で弾き捌いていく。が、以前より早く力強い攻撃だったので遂には服をかする所まで来ていた。
「オラァッ!」
修二は気合いで忍の隙があるボディに怒りの一撃を与えた。
忍は腹筋に力を込めていたが、修二の一撃に耐えきれず初めて苦悶の表情を浮かべ、大きく吹っ飛ばされ背中から壁に激突する。
激突した壁は巨大なクレーターを作りあげ修二の一撃がどれだけ強いのか分かった。
「こんなもんじゃねぇだろ! さっさと来い! テメェは何度も殴らねぇと気がすまねぇんだよ!」
修二はクレーターに埋まっている忍に追撃しようと走る。
「調子に…乗るなよ!」
忍は目の前に黒い渦を出現させる。修二は黒い渦が出現した事により警戒し、手に炎を纏わせ噴流を急ブレーキで停止させ様子を見る。
だが、これは忍の策略で修二が停止した事を確認すると忍は黒い渦の中へと入った。
「『ダークネスホール』、それが黒い渦の名前だ。この穴は瞬間移動の役割と攻撃してきた『光系統の覇気』以外の全てを…“吸い込み放出”する。」
何処からか忍の声が聞こえ余裕があるのか、修二にベラベラと技の効果を話す。
「関係ねぇよ! テメェが意識失うまで殴るだけだ!」
「そうか…ならば、やってみろ!」
修二の怒号に対し、忍もムキになり怒号で返す。
(何故だ。何故、ムキになって怒ることがある。)
忍は闇の中で一瞬だけ行動を停止させ、自分自身の言動に疑問を持っていた。
心の底から、理解できないぐらいにひしひしと怒りがこみ上げる。普段ならば冷静に対処できる物が、何故か大声で叫びたくなる程の憤怒が忍を支配した。
忍は頭を理性だけで冷静になり、倒すべき相手に目を向ける。
そして気配を遮断し修二の背後から穴を静かに出現させ、上半身だけを晒し攻撃する。
修二は振り向きざまに右拳で仕返しと攻撃しようとする。が、もう忍の姿はなく目の前に写るのは空虚な空間だけだった。
修二は気づく、忍は『闇の覇気』を使いながら空間移動している事に。ならばと修二は対策があると言わんばかりに身構える。
そして二度目の背後から攻撃を仕掛ける忍だった。が、修二は気づいてた様に振り向き右ストレートを放った。
だが、忍は焦ることもなく素早く闇の空間へと戻った。
(気づいてた。どうやって? 分からないが多分、次を仕掛けても無駄だな…少し本気出すか。)
修二が空間移動の攻撃を何かしら対処した事を考察するのは時間の無駄だと思った。なので答えを見る為と無駄な戦いを終わらせる為、闇の世界から現実世界へと姿を表す。
「成る程、炎の探知機か。空気の流れで俺がいる場所を大雑把だが、異変があれば対処できるのは簡単だな。」
忍が目撃したのは、修二が空中に火球を浮かべメラメラの部分が異変さえあれば動く仕組みの物を『覇気』で操作しているのが分かった。
「…神崎、俺と最後まで戦う気あるか?」
突如と放たれた修二の意味不明な質問に忍は呆然としていた。
「今、この状態が分からないのか? 最後までという極端な話をされても分からないな…。」
「…最後っていうのはな、どっちがーーー最後まで立ってられるからだ!」
修二は火球を放り投げ、倉庫にある荷物に当て燃やす。
そして荷物は瞬く間に燃え上がり、更に連鎖で荷物が燃え移った。
「こっからは誰も侵入させねぇし、誰の助けもいらねぇ…骨が砕けようが、内臓が潰れようが関係ねぇ…死ぬまでやる。それだけだ。」
死を覚悟した修二は忍が逃げられない様、周辺を燃え上がらせデスマッチを希望したのだ。
「自分の命が惜しくないのか!」
忍は叫ぶ、命を賭けてまで自分自身を倒したい修二の気持ちが理解できなかった。
「二度負けた相手に三度負けたら男の恥だ! 三個目の黒星が刻まれるぐらいなら死んでも倒す!」
修二から嘘偽りのない自殺紛いな言葉と行動に忍は困惑し、頭を抱えた。
(イカれてんのか? コイツは!)
第三者の目から見ても明らかに修二のやろうとしている行為はマトモでは無い。
だが、修二の目は真っ直ぐ忍だけを見て気が狂った様子もなく真剣そのものだった。
「だから、覚悟はいいよな? 手なんか抜いてみろ、泣かしてやる。」
修二は真っ向から忍に突っ込み勢いの良い右ストレートが頬を狙った。
その右ストレートを忍は左手で受け止め、大きく修二の腕を捻りガッチリと固定する。が、修二はジャンプしドロップキックで忍を突き放す。
忍はドロップキックで腕を離してしまい、再び隙を見せ修二に攻撃を許してしまう。が、忍は油断せず修二の猛攻を防いでいた。
「お前は桐崎に利用されて俺と戦っているだけだ! ならば命を失う戦いに意味等ないだろ!」
「関係ねぇよ! 例え、師匠が言ってなくても何時かはテメェに、ぶち当たってだろうがな! お前の捻れ曲がった性格も考えも気に入らねぇ! この手で倒さねぇと…俺の怒りが収まらねぇ!」
修二は大声で忍の質問を返す。そんな修二の行動が忍を更に怒らせた。
「怒りが収まらないだと…? それはこっちの台詞だ! 品川修二ぃぃぃぃッ!」
忍は修二に対し感情を露にした。そして叫んだ後は普段は受け身で対応する忍が初めて攻撃という攻めを見せた。
忍は修二に一瞬で目前まで近づき、素早い右ハイキックを繰り出し、頬に当て意識を刈り取ろうとした。
だが、修二は避けず防御もせずにマトモに忍の蹴りを仁王立ちで受けた。
「どうしたんだよ? 弱い蹴りで俺は倒せねぇぞ、本気で来やがれ!」
今の蹴りで修二の唇が切れ、更に出血し、鬼の様な表情と怒気に忍は臆せず右脚を引き、少し後退した。
そして右脚を腰の位置まで上げ、修二に敗北を教えた無数に蹴りが見える百烈キックを浴びせた。
修二は防御せず無数の蹴りを無抵抗に受けた。顔は切り傷の様に出血し、まだ完治していない体から傷が開き流血していた。蹴りが止むと修二は倒れず真っ直ぐと忍を睨んでいた。
「…終わりか?」
修二が放った言葉は前に忍が言った事だった。
「!」
忍は修二が受けた攻撃をマトモに受けて立っていた事に驚愕した。が、更に体がボロボロの修二が胸ぐらを掴み、頭突きで反撃した。
忍はダメージで修二から離れる様に後退し、何かあったのか確認をする。
忍の額からはポタポタと二滴、三滴、血が地面に流れた。
「テメェに初めてダメージを与えたぜ。」
不意によるダメージじゃなくマトモに受けたダメージに忍は目を見開き、目の前に起きている真実が信じられなかった。
そして忍は震えながら額から流れている血を手で触れる。
そんな忍を見て満足したのか修二は気が抜け、膝が崩れ肩で息を繰り返し苦悶な表情を浮かべた。
「……。」
忍の思考回路は停止し、ずっと手に付着している血液を見ていた。
そして忍は驚愕の表情を浮かべて口を開いた。
「何故だ! 何故、お前が俺に立ち向かう! お前は巻き込まれた側なんだぞ!?」
忍は大声で修二に向かって質問をぶつけた。
そんな質問をされた修二は息を整え、傷だらけの体を気力だけで奮い起こし、忍に鋭い眼光で睨み付け反論する。
「はあ? ふざけんじゃねぇよ! 友達の体に風穴空けといて、テメェを許す俺じゃねぇ! それによ巻き込まれた、巻き込まれなかったの話じゃねぇんだよ! テメェが個人的に気に入らねぇからだ!」
忍は修二の答えに拳を握りしめ、『闇の覇気』を体に覆う。
「ーーーくだらんな! そんなくだらない理由でお前に構っている暇は無い! この世界で消し炭にする!」
忍は『闇の覇気』を両手に纏わせ、修二に向かって走り出す。
(ーーーヤベェな。調子に乗ってたら目の前が霞んできた。アイツに攻撃はできたが、こっちがボロボロだ…仕方ねぇ、能力を最大限まで引き上げるしかねぇ!)
修二は雄叫びを上げ、『M.O.F』を使い四肢を燃え上がらせる。
炎を確認した後、構えを取り忍を迎え撃つ体制に入った。
「品川ぁぁぁぁぁッ!」
「神崎ぃぃぃぃぃッ!」
二人は名前を叫び、お互いの頬に『覇気』をぶつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます