第17話 誘惑の毒と『M.O.F』解禁。
気品育ちのお嬢様と一般とは呼べないインパクトの強い学生たち四人はリムジンを走らせ海道ゲームセンターに向かっていた。
「えっと…シェリア・ロームさん? 何故、僕たちと一緒にゲームセンターに?」
前半の話を聞いていない相川はシェリアに一緒に行動する意味を解いた。
「そりゃあ一緒にゲームしたいからだろ? 女子でもゲームセンターでUFOキャッチャーとかすんだろ?」
吹雪はテストをした副作用なのかアホな答えしか出なかった。
「こんなむさ苦しい男三人で? なんか勘違いされそうだけど…。」
吹雪と相川が話している最中に修二とシェリアはトランプで楽しくババ抜きをしていた。
修二はギプスにカードを刺し左手で対応してシェリアは初めてやるババ抜きにドキドキとハラハラで興奮していた。
「楽しいですねババ抜き。」
シェリアが初めてしたババ抜きに感想を述べる。
「シェリアって友達いねぇの?」
修二は純粋な質問をした。
「フランスから日本に来て忍様以外に友達はいませんの。」
シェリアはババ抜きに夢中なのか嫌な顔もショックを受けた感じにせずに対応する。
「そうか…。忍が最初の友達か、それ良いな。」
相川と吹雪はシェリアの口から忍の名前が出てて来たのに驚愕はしたが修二の対応力に呆れるばかりだった。
「神崎忍にこんな綺麗な友達がいたなんてな。」
吹雪は忍に感心していた。
「それより皆、忘れてない? シェリアさんは三銃士の一人だよ?」
「まあ、それはゲームセンターで遊んでから考えねぇ? なんか殺伐としてから戦っても楽しめねぇしよ、それでいいか?」
「構いません。」
修二は警戒せずに遊びの事しか頭になくシェリアも余裕な表情で了承した。
そして海道ゲームセンターに到着しリムジンは邪魔にならない所で停車する。
やはり夕方なのか帰り道で寄る暇な学生が多かった。四人が最初に向かったのはパンチングマシンだった。
「よし、新記録出すぜ!」
余程の勉強がストレスになったのか指をポキポキと鳴らし右手にグローブをはめシャドーボクシングを始める。
「シェリアさんはパンチングマシンの経験は?」
相川が不意に何か思ったのかシェリアに経験を聞いた。
「えっとムエタイ訓練とキックボクシングなら経験あります。」
シェリアの戦闘経験に相川と吹雪は唖然とするしかなかった。
「でもよ。これはパンチングマシンだぜ? これは技術とか関係なく…」
吹雪が強気に語っている最中に修二は財布の中を確認をして、百円玉を取り出し冷静にシェリアの右手にグローブを付け、百円玉をパンチングマシンの精算機に入れて的が上がって来たのを修二はシェリアにパンチしろと行動で指示をする。
シェリアは肩まで後ろまで引き、上腕二頭筋に軽く力を入れ一般人には目にスピードのパンチを放つ、その激突した音は耳をつんざくような轟音。
周りいた人達は何が起こったのか理解できず音が鳴った方向に目を向け口を大きくあんぐりと開けて唖然とする。
それは吹雪と相川にも同じ事で、
そして判定は…測定不能と過去に見た事のない点数と言うより文字が出現した。
「あら? 少しやり過ぎました?」
周りから物珍しい目を向けられ自分が何をやったのか自覚なかった。
「まあ普通じゃね? でもよ、ここは一般人がやるゲームだから気にしなくていいんじゃね?」
そんな測定不能な点数を叩き出した女性に冷静な対応をする修二。
「イヤイヤイヤ!? 普通じゃねぇよ! なんだよ測定不能って! 今まで見た事ねぇぞ!」
流石のゲーセン通いをしている吹雪でも動揺したのか、目の前の現実が信じられない状態でツッコミを始める。
「…品川もそうだけど神崎忍の周りって化物ばっかだね。」
改めて世の中の狭さにそう思った相川だった。
「そんじゃあ俺も…。」
修二も左手にグローブをはめ腕を回転させるが、シェリアが測定不能と出たので修二の場合は機械を破壊するのではと考えた吹雪と相川は即座に修二を止め次のゲームに移る。
「対戦ゲームならどうだ? これなら力は使わず知能と技能だけでなんとかなるぜ?」
吹雪はゲームキャラとして老人キャラを選び、修二はシェリアに操作方法を教え二足歩行しているワニを選択した。
対戦した結果は…
「…負けた。」
ワニが老人を頭から丸飲みにするシーンでシェリアの勝利が確定した。
何年もゲーセン通いで培ったパーマの技術は初めて対戦ゲームをするお嬢様に惨敗していた。
「俺でも吹雪に勝てなかったのにスゲェな。」
「うん、これは力は関係ないけどスゴいね。」
シェリアの勝利に修二と相川は腕組みしながら絶賛していた。
「もう一回だ!」
泣きの再戦をするが…現実は厳しく残酷で結果は全て惨敗だった。
流石の対戦ゲームに自信があった吹雪でも端側で三角座りをして落ち込んでいた。
「まあ、世の中は初心者でも強い人はいるから…。」
「次は何をする?」
「じゃあシューティングゲームでもしようよ。これだったら協力プレイだから落ち込む事は…。」
敗北フラグを立てるのが好きな人物しかいないのか上位レベルで相川が先に倒れ、シェリアだけが残って全エリアと全レベルをクリアしていた。
相川も吹雪と並び同じように端側で三角座りをしながら落ち込んでいた。
「お前等、これ楽しんでやるゲームだろうが。」
修二がごもっともな意見を言ったが…
「だって…役に立たなかったし一人でクリアしてたから僕の存在が…薄くなって…。」
協力ゲームで役に立たなかったのがショックな相川と…
「何年学校サボってゲーセン通いしてハイスコア目指して頑張ってた自分が…温室育ちで綺麗で美人のハイスペックお嬢様に負けた事が悔しいが…俺のアイデンティティーが消えつつある。」
ショックで纏まらない言葉を使い意味不明な事を発言する吹雪…相当重症なのようだ。
「…さて次は何やろうか?」
そんなネガティブコンビを無視して修二はシェリアに次のゲームを何したいか聞く。
「そうですね…そろそろ品川さんと戦ってみたいですね。」
「俺、右手ギプスはめてるけど?」
「構いません。一週間前で治ってるのに病人の振りをするのも飽きたでしょ?」
ニッコリとシェリアは修二の状態を簡単に見抜いていた。
「あ、これ? いや…外そうかと思ったんだけど…外すタイミングを見失って…まあ、言い訳はやめて始めようか…楽しいバトルをよ。」
修二は腕を曲げ力づくで包帯を固めたギプスを破壊する。もはや人間かどうか怪しくなってきた。
流石のシェリアも顔を引きつらせ苦笑いをして戸惑っていた。
「ここでは周りを巻き込む。別の場所に移ろうぜ…。」
外に出ると夕暮れで修二とシェリアは海道ゲームセンターからすぐ隣にある幅が広い裏路地に突き進む。
最後まで進むとそこには雑草が生い茂って周りが鉄板のフェンスで囲まれている場所に到着する。
それはビルの一等地が買えるほどの広い空き地がだったのだ。
「こんな場所を知っていたんですね。」
「まあな。ここは誰も来ることはねぇし思う存分に戦える。それとも観客がいる方がいいのか?」
シェリアの歓喜な声とは違う仕方ないと言う表情と皮肉まじりな言葉で返す修二。
空き地の中央まで歩き、どちらも離れて睨み合うように対峙する。
「一つ聞いていいか?」
「はい?」
真面目な顔をした修二の質問にシェリアは微笑みながら受ける。
「シェリアは忍が好きなのか?」
突然と修二の不意討ちな質問にボフンと顔から湯気が立ち込め頬が赤らめていた。
「え? な、何故…そ、そんな質問を…。」
シェリアは動揺していて言葉がどもって、ちゃんと発言できていない様子だった。
「…図星か。まあ、その行動だけ見られば十分だ。」
修二は走り出し、シェリアの顔に容赦なく右ストレートを目掛けて放つが簡単に捕まれ、修二の体は瞬時に倒され腕ひしぎ逆十字固めの体勢になっていた。
「うぐっ! こ、このぉ!」
修二はなんとか抜け出そうとしたが、上手く間接の隙を突いて拘束されているために、無理に抜け出そうとすれば再び右腕骨折になり、また病院送りにされる。
それだけはなんとか避けたかった修二はこめかみに血管を浮き出させ、獣のような雄叫びを上げ…
「う、嘘…完全に拘束してる筈なのに…」
シェリアは今起きている現実を素直に受け止める事ができなかった。
修二はシェリアに完全にマウントを取られていたのに険しい顔をしながら倒れていた体を起き上がらせ…右腕だけでシェリアを持ち上げていたのだ。
「アンタの体重なら、まだ持てる。修行時代に両腕と両足に丸太をくくりつけて登山してたんだ。マウント取られたのは悔しいが、白いパンツが見れたのはラッキーだな。」
セクハラまがい発言の後はニヤリと笑い修二は右腕を必死に大きく振り回す。
流石に危険と感じたシェリアは修二の頬を蹴り、拘束を解きアクロバットな動きで着地し距離を取った。
「まさか立ち上がるとは思いませんでした。本当に人間ですか?」
「さあな?」
「これじゃ埒が明きませんので『覇気』を使わせていただきましょう。」
シェリアはスカートからコンバットナイフを二本を素早く出して両手に持ち、右手にあるナイフを逆手に持ち、左手にあるナイフはハンマーグリップで持っていた。
「え? 殺傷武器? それ当たったら俺、死んじゃうよ。」
流石の修二でもナイフを出されるのは予想外なので血の気が引き動揺し恐怖する。
「それじゃあ頑張って避けてくださいね?」
ニッコリと容赦のない死刑宣告を伝え、殺気を放ち右足と左足で距離を縮めるため、にじり寄る。
(完全に仕留める気だ。何処から、そんな殺気が出てくるんだ…ここは逃げるに徹するしかねぇよな。流石にナイフと戦うのはマズイだろ…。)
修二はナイフのリーチが届かない所まで後退するが背後を見ていなかった為、フェンスの壁際まで下がってしまい、しまったと言う表現で逆に追い込まれる状態になってしまった。
シェリアは左ナイフを前に突きだし、修二の腹に目掛けて突進する。
必死な顔で修二はワイシャツを脱ぎ、シェリアの左手をワイシャツで覆い、中国拳法の如く巧みに学ランを扱いナイフの軌道を変えるが残った右ナイフが修二の頬を狙っていた。
だが、シェリアは右ナイフを逆手持ちにしていたのでゴリ押しではあるが、修二は頭突きでシェリアの右拳を止める。
「無茶苦茶ですね。反射神経は良いのに戦いの中に品が感じられません。」
シェリアは修二の危なっかしい戦法を注意するように伝えるが…
「こっちは喧嘩でやってんだ。ナイフまで持ち出されたら必死に足掻くしかねぇだろ、死にたくねぇからな!」
額に力を入れシェリアを押し出し、緊張しているのか修二にしては珍しく息が上がり、フェンスから急いで離れ再びシェリアから距離を取る。
「そんなに死ぬのは嫌ですか?」
シェリアは疑問な表情をしながら修二に問い掛ける。
「当たり前だ。死ぬのは
修二の怒号と魂の叫びが大きく木霊する。
いつの間にか復帰し決闘場まで観戦しに来ていた吹雪と相川も無表情のまま黙って聞いていた。
「…甘いですね。その甘さで忍様を倒そうとしているのですか? ふざけないでください。そんな甘さを持つぐらいなら、ここで朽ち果てるのがお似合いです!」
さっきまでの穏やかな雰囲気が嘘のように豹変し、修二の甘い考えが彼女を怒らせる。
シェリアの皮膚の色が毒々しい紫色に全体に巡るように変化する。
「…俺の考えは甘いか。それ師匠にも言われたな…しょうがねぇな、相川『M.O.F』を使うからそこで見てくれるか?」
「分かった!」
相川は元気よく了承の返事をする。
「そんじゃあ―――『MAX OF FALRE』。」
そう唱えると体がメラメラと燃え、最後には修二を包み込んだ。
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