第14話 襲撃される者。

 六月十七日の月曜日、昼頃の海道高校はいつもと変わらない日常、それは外装から一般人の目から見ればの話しであり、実際は…


「おい、そっち何人倒した!?」


「―――十人」


「僕は三人…」


 学校行事で衣替えの季節となり、海道高校指定の夏服ワイシャツで吹雪と修二と相川の三人組は廊下の中心で背中合わせで血相を変えて固まっていた。


 それは明らかに海道高校ではない金属バットを持った不良生徒と何処の地域かも分からない木刀を持った特攻野郎の連中に囲まれていたからだ。


 周りは惨状であった。廊下の窓ガラスは何枚か破壊され、廊下の道端に血痕が飛び散っており、誰かの歯か分からない物まで、まるで地獄絵図だった。


 吹雪は肩で息をしながら辺りを警戒し、攻撃に備えてカウンターをする体制。


 先週退院したばかりの修二は右腕のギプスははめたまま、左腕と両足で攻撃を対応していた。


 相川は二人と違い戦闘向きではないが、なんとか必死な顔で周りの猛攻を凌ぎっていた。


「おい、キリがねぇぞ! 今回だけは『覇気』を使わねぇか?」


「俺は喧嘩で『覇気』を使うのは禁止されている。相手の命を奪いかねないからな、相川は?」


「僕は『覇気』を出すのに時間が掛かるから、あんまり得策ではないね。」


「だったら…お前等、逃げるぞ!」


 いい加減に周りの攻撃にうんざりしていた吹雪は、窓ガラスに向かって助走をつけずに蹴り破り、まっ逆さまに抵抗なく落ちていく。


 急いで修二は相川を左腕で抱え込み、吹雪が蹴り破った窓から後を追うように助走をつけずに飛び込みまっ逆さまに抵抗もなく落ちていく…


 周りの事情を知らない生徒からすれば自殺したのか勘違いしそうだが、下には生い茂っている雑草と芝生がクッションになり三人は無傷で着地できたのだ。


「おい、無事か!」


 先に飛び込み着地した吹雪が後に落ちた二人に声をかける。


「あぁ、相川は?」


「な、なんとか…あんな高い所から落ちたのが新鮮で…」


 なんとか相川と修二は無傷のまま無事で、相川は四階から飛び込んだ事をキョドりながらも感想を率直に言った。


「まだ新鮮だと感じられるのは良いぞ、俺が修行時代の時にはワニの群生の上からロープを足と枝に縛って腹筋されてたぞ。」


「え? 何その非現実的な鍛え方?」


「お前、どんだけ狂った師匠に鍛えられたんだよ。それに良く生きてたな?」


 修二を除いた二人は顔を引きつらせながら、修二の話しを鵜呑みにするべきか迷う。


「それより逃げんだろ?」


 気を取り直し、修二は吹雪に向かって言った。


「あぁ、学校は危険だ。町の中で消えて撒くぞ!」


「見つけたぞ!」


 そこに四階から下まで降りてきた不良たちが、動いていない修二たちを見つけ大声で号令をかける。


 三人は危機を感じ、校門まで全力疾走し、なんとか無事に学校から抜け出し町まで走る。


「南雲さん、あのリーゼントたち何かに追われてますよ?」


 その頃、部品が沢山並んでいる一つの教室から外を眺めていた南雲の部下の不良が現状をドライバーやハンマー等で熱心に何かを造作している南雲に報告する。


「三流共が何しようが俺たちには関係ないだろ、それにあの三流以下の奴等は外の連中だ。」


「なんで分かるんですか?」


 窓際にいる不良と違う、黒板に落書きしている不良が、キョトンとした顔で南雲に聞く。


「海道っていうのは二つしか無い、一つは俺たちが通っている海道高校だ。もう一つのは金持ちとか天才とかイケ好かない連中が集まるのが海道学園だ。」


 南雲は海道学園が嫌いなのか、とても辛辣な言葉で海道学園の説明を二人の不良に教える。


「海道学園って南雲さんが試験で落とされた…」


「だからって恨んでねぇよ? 別に解答欄全部がズレてたからって気にしてねぇし、あの時『カンザキシノブ』にやられた怪我で集中できなかった訳じゃねぇしよ。俺は全然、気にしてねぇよ。」


(完全に気にしてる。)


 口を尖らせ南雲は本当なのか分からない言い訳ばかりを並べて作業に徹していた。


 そして南雲の部下の不良二人組も奇跡的に心の声がハモり一致した。


(あの外から来た連中は力は弱いが、頭数は多い連中だぞ? まあ、あの三流たちなら三流以下には勝てるだろ、こっちはこっちで『カンザキシノブ』を打開する事を進める。)


 南雲はそう思い作業を続けながら怪しく笑う。




「ここなら安全だろ…」


 吹雪たちは人気のない場所、気味の悪い薄暗い狭い路地裏まで走り疲れて肩でゼェーゼェーと息を繰り返していた。


「ここって?」


 走って体力が限界に達したのか、地面にへこたれている相川が簡単な質問をする。


「俺の知り合いの親父がやってるバーだ。いつも面倒事が起きた時は、ここで何日もやり過ごしていた。合鍵も貰ってるしな。」


 吹雪はポケットから裏口の合鍵を取り出し、ガチャっとドアから音が鳴り開かれた。


 薄暗く棚に色んな種類の酒とカウボーイの町を意識したような店のオシャレな雰囲気。


 吹雪たちがカウンターの裏側まで進み、部屋の電気のスイッチを見つけ電灯させると、カウンターの席に忍者がいたのだ。


「あ! あの時の忍者!」


 修二が後ろから忍者に指をさし、仲村との初めて一戦の時に途中で邪魔をしたので修二には印象的に覚えていたのだ。


「こいつが…」


 吹雪は忍者に攻撃されないか警戒をする。


「貴様等に伝達だ。今回の騒動と我々は一切関係ない出来事だ。それに『毒の覇気使い』の仕業でもないので悪しからずだ。」


 忍者は淡々と今回、『カンザキシノブ』とは関係していない事を修二たちに行動を先回りして伝達しにバーで待機していたのだ。


「それをわざわざか?」


「当たり前だ。こんな所に好きで来ると思うか? このゴミ虫。」


 忍者の罵声に吹雪は腕捲りしてカチンと来たが、相川がなだめる。


「そうか、じゃあ『カンザキシノブ』は関係ないんだな。」


 吹雪がマトモに話せる状態ではないので代わりに修二が忍者と話し合う。


「あぁ、それとシノブ様が貴様に“腕の調子はどうだ”という伝言を受けた。返答は?」


 修二にはシノブの質問の意図に気づいていた。修二は珍しく怪しい嬉しい表情でニヤつきを浮かべ…


「大変だったが、なんとか修復できたぜ。そう伝えておけ。」


 修二の意味不明な言葉に吹雪と相川はキョトンとした表情で見つめ合う。


「後ろの奴等は未熟なばかりに仲村一之との一戦で品川修二の状態を知らなかった様だな。」


 忍者が予想外の発言をし、吹雪と相川は驚きを隠せない表情で忍者の話しに興味を持つ。


「仲村一之の『水鉄砲』は水だと言っても音速で飛ばせば無事では済まない。水を蒸発させたからと言って飛ばしたエネルギーの衝撃波は絶対にある。その蓄積されていたのが右腕だ。」


 忍者の話しに未だに理解できない吹雪だが、相川は蓄積という言葉を聞いて理解した。


「だから骨を折った。」


 相川が、そう呟くと吹雪は怪訝そうな表情で相川を見る。


 ここまで話しを聞いても理解できない吹雪の行動に呆れため息を吐いた忍者は…


「あの時、品川修二の右腕は限界だった。それは水を殴り続け衝撃波で骨に亀裂が入っていたからだ。それをシノブ様は戦いの中で感知し、右腕と必要ではない左足を三ヶ月の期間を得て回復をさせるために折ったのだ。」


「けどよ、逃げて隠れているのに敵に塩を送る行為なんかするんだ?」


 吹雪は忍者にシノブの行動について疑問をぶつけてみた。


「それはシノブ様が品川修二の実力を認めたからだ。普通の『覇気使い』なら仲村一之で躓くからな、それで何度も挑んで実力の差を思い知らされて諦める連中ばっかだからだ。だが、今回は仲村一之を倒し次いでに竹島権田を倒した貴様等にシノブ様は大変気に入っておられるから、こうやって情報を持ってきたのだ。」


「『カンザキシノブ』は万全の状態で本気で戦いと言う意味で取っていいのか?」


 ずっと黙っていた修二が不意に口を開き、忍者にシノブの意思を問いかける。


「その解釈は好きにしろ…もしかしてシノブ様に勝つ気でいるのか?」


「あぁ! あんだけの力を見せつけられたら倒したくなんだろうが。それに『覇気使い最強の座』も欲しいからな!」


「『覇気使い最強の座』? あれはタダの称号で勝ち取っても意味もない名誉だ。」


「俺には意味があんだよ。アンタにとったらタダの称号で名誉かもしんねぇけど、俺にとったら目指すべき場所なんだよ。それに『カンザキシノブ』に会えて良かったと思ってる…」


「?」


 修二を除いた三人が息を飲み、沈黙の間が絶妙に好奇心を掻き立てる。


「周りが何を言おうと俺は『カンザキシノブ』が最強なのは認める。だから、俺は『カンザキシノブ』と最後まで本気マジの戦いをしたい。それは俺の決意でもあり願いなんだ。」


 修二の意外な告白に、三人は呆然とするしかなかった。


 修二がここまで『カンザキシノブ』の事を思い憧れ倒したいという意思が三人に理解はできなかったが、吹雪と相川は理解できなくてもフッと鼻で笑い…


「だったら俺たちは…」


「品川を『カンザキシノブ』の所まで守ってリードしてあげないとね。」


 吹雪は修二の右肩を組み、相川は左肩を組む。

 ここに『覇気使いスクラム』が完成し、より結束が固まったという三人の意思と思い。


「何時かは、その思いもシノブ様…いや、最後の三銃士、木元雅の手によって崩されるだろう、それでは…」


 忍者は煙玉を投げ捨て数秒後に煙りが晴れてゆき忍者の姿は消えていた。


「『毒の覇気使い』で気を取られて忘れていたが、最後に木元雅がいるんだったんだな。」


 吹雪は思い出したかの様に木元雅の話しをする。


「そうだな。そいつを倒せば『カンザキシノブ』に辿り着けるんだな。」


 そう言った修二は左手をギュっと強く握り締める。


「先ずは辿り着く前に、この状況をなんとか覆さないと…」


 相川は悩む、けれど悩んでも埒が明かないので吹雪たちはカウンター席に座り、今の現状に三人は分かりやすく頭を抱えていた。


「とりあえず、アイツ等が襲ってきた理由を探ろうぜ。」


 吹雪が過去に何があったか記憶を辿ろうと提案をした。三人は天井に顔を向けて過去に何があったのかを記憶を辿る。


「僕は…先月に行ったメイド喫茶でマナーの悪い客に注意をしたら逆ギレされて揉めた。でも、帰りまでストーキングされて、嫌がらせのつもりで家まで付いて来たんだと思うけど、そこで偶然にも吹雪くんと出会って気づいた吹雪くんの睨みで逃げてたから、僕じゃないね。」


「俺は…中学の時にゲーム大会でチート使ってる馬鹿がいて審判にジャッジしてもらって強制退場させてから、表に出たら何人かで待ち構えていた。それから付き合いで内藤と一緒といたから手分けしてボコボコにしたから…俺じゃないな。」


 相川と吹雪には過去に色々とあったが、どれも今回と関係ない話しだった。最後は修二だけなのだが…


「俺は…確か先週に退院してから、リハビリで散歩に出た途中で中学生にカツアゲしてた他校の奴等がいて、説得したけど話しが通じる相手じゃなくて偶然にも肘内が顔面を直撃して、それを見た周りの取り巻きに襲いかかれて…犯人俺だわ。」


 どうやら、今回の件で心当たりあったのは修二だけだった。


「テメェかよ! よく左腕だけで喧嘩できたな! お前は化物かよ!」


「いや、アイツ等の動きが遅くて避けようとしたら偶然にもヘッドっぽい奴が後ろにいて、それで左肘が…仕方ねぇな、この喧嘩を終わらせるか。」


 何かと言い訳を考えたが、何も思い付かなかったので、あっさりと簡単な答えをだす。


「でもどうやって?」


 相川が怪訝そうな表情でそう聞くと…


「とりあえず一人捕まえてヘッドと仲間の居場所を言わさせる。駄目だったら、もう一人もう一人と捕まえる。」


(ある意味、こっちの方が襲われるより怖いよ。)


 そう密かに思った相川だった。


「どうする? ロープでグルグル巻きで固定してバッティング練習で脅すか?」


「それだったら逆さ吊りで乳首と乳輪をライターで炙ってバッティングの方が効果あるんじゃねぇ?」


 吹雪はバットでスイング練習で脅すと提案すると更に恐ろしい事に修二が非道極まりない拷問を提案する。


 あくまで脅して情報を聞くだけが度を越して拷問に変わり、相川はドン引きしながら二人がケラケラと笑いながら悪魔の顔悪いかおをしているのが容易に想像できた。


 それで有言実行の二人は町に出て、手分けして一人で修二たちを探している不良を見つけ、二人の目はキラリと光り野獣を捕獲するハンターの如くに背後から襲いかかり、近くの工務店で買ったロープでグルグル巻きにして、体の自由を奪い店まで連行する。


 そして逆さ吊りにする前に、理解不能な事態に不良が泣き出してしまって二人は呆然とし罪悪感が芽生え、しぶしぶと逆さ吊りは止めて椅子に座らせ落ち着くまで話しをする事にした。


「二人共、自分たちの計画性に問題あるとは思わない?」


 相川が真顔で少し怒気が籠った口調で、問題を起こした二人に問い掛ける。


「さあ?」


 とぼけた様子で、二人は顔を合わせ声が偶然にもハモる形で自覚していなかった。


 相川はそんな二人にタメ息を吐き呆れながらも、不良に頭の居場所を聞いていた。


「分かったよ、海道の港倉庫に集合してるって!」


「海道倉庫だな。あそこなら集まって暴れても問題ないからな。」


「なんで?」


 冷静に分析した吹雪の言葉にキョトンとした表情の修二が問いただす。


「あの海道倉庫は個人で登録されてる場所で、所有者が現れる事が今まで無かったんだ。けど、それを好き勝手に集まれて暴れていいのが海道倉庫だ。夜中になると何故か家に帰らないといけない怪奇現象まで起こってる噂だ。そこに一人で乗り込むのか?」


「あぁ、俺に用があるなら出向くに決まってんだろ?」


「相川、俺と修二は行くけど…どうする?」


 修二と話し終えた吹雪は嗜めるように相川に問い掛ける。


「僕は戦闘と喧嘩は得意じゃないけど君たちの役に立つなら行くよ。」


「そんじゃあ、『覇気使い』の戦いじゃなく『人類』の戦いでやるか。」




 海道港倉庫エリアに、不良の情報通りに修二たちを襲ったヤンキーと暴走族の連中が集まっていた。


 そこに遠くから、ゆっくりと一歩ずつ集団に近づく三人がいたのだ。


「三十人はいるな。」


 歩きながら一目で吹雪は適当に数を言った。


「こっちは三人だから一人、十人だな。」


 更に隣の修二は無理なノルマの数を言った。


「―――一人、十人は無理じゃない?」


 相川も冷静な分析で正論を言った。


「俺たち、二人が追加されたら一人、六人になるッスよ。」


 何処から現れたのか、仲村と竹島が三人と並ぶように歩いて近づいていた。


「竹島、もう傷は大丈夫なのか?」


 吹雪が隣に来た先週に退院した竹島に容体を聞いた。


「大丈夫だ。お主こそ、鍛練は怠っていないだろうな吹雪?」


 竹島は鼻で、なんのこれしきの平気な表情で返答する。


「お前等、いつの間に仲良くなったんだ? 俺、品川修二よろしく。」


 ここで修二は呑気に疑問をぶつけ、その次いでに竹島に挨拶をする。


「さあなっていうか、ちゃっかり仲村のオマケ付きかよ。」


 吹雪は適当に答えを出し、仲村を見た途端に辛辣になり、仲村は体がガクッと落ち込んだ。


 相川は落ち込む仲村を背中を手で擦りなだめる。


 そして急に修二が立ち止まった瞬間に、全員が修二を真似するように立ち止まった。


「そんじゃあ覚悟はいいか?」


 修二が五人に問うと覚悟はできてるという決意を固めた表情で頷き微笑み、修二を見る。


 六人に気づいたのか、外にいた不良たちが口笛を吹くと倉庫からゾロゾロと更に追加される形で集まる。


 修二は前に出て大きく息を吸い込み…


「うおぉぉぉぉぉぉッ!」


 隣のエリアまで聞こえる大きな雄叫び声が木霊した瞬間に、五人も続くように雄叫びを上げた。


 叫び終わると修二は敵陣に向かって全速力で走りだす。


 それが戦いの合図で、五人も修二に続き全速力で走る。


 敵陣も雄叫びを上げて、こっちに向かって走ってくる修二たちを迎え撃つために少数の六人に向かって全速力で走る。


 修二は前線にいる敵二人を左腕のラリアットで地面に沈め、更に近づいた不良を右前蹴りで吹き飛ばし前に進む。


 吹雪は助走をつけた右ストレートで一人を地面に倒し、更に背後にいた敵に吹雪は感知して、右回しハイキックで不良の頬に目掛けて蹴飛ばす。


 相川は素人さながらのタックルで応戦するが、やはり喧嘩慣れしていない為、簡単に反撃される。


 相川は首根っこを捕まれ腹を数発も膝蹴りされるが、仲村が相川を膝蹴りしている不良を背後から前蹴りして吹き飛ばす。


「大丈夫ッスか?」


 仲村は相川に駆け寄り、ファイティングポーズを取りながら背中合わせで互いの後ろを守る。


「うん、ありがとう。僕は戦闘は得意じゃないけど足手まといにはならないからね。」


「それを聞いて安心ッスよ。」


 竹島は五人を相手同時にしながらも余裕の表情で空手技を駆使し、無力化していく。


「おい、誰がどんだけ倒せるか勝負しようぜ。」


 いきなり竹島に近づいた吹雪が、倒した人数の勝負を提案した。


「ふっ、よかろう。後で負けても吠えずらをかくなよ?」


「その言葉そのまま返してやるぜ!」


 吹雪と竹島は敵陣のど真ん中に狂喜的な高笑いで突っ込み大暴れしていた。


 数時間には修二たちを狙っていた不良と暴走族は見事に全滅していた。


 色々と傷だらけの吹雪と竹島はせっせと不良と暴走族を積み木のように積み上げて数を数えていた。


「俺は二十人、竹島は?」


「―――お主と同じで二十人だ。」


「っていうかやり過ぎッスよ。」


「もう、力が出ないや。」


 二人の加減なしで横目に、無傷の仲村はツッコミをする。目に打撲痕、唇が切れ軽傷の相川は疲れた表情で寝そべっていた。


「あれ? 全部倒したのか?」


 そこに倉庫からスッキリとした表情で現れた修二は…額から出血に相川と同じく唇が切れ、更に頬に打撲痕にシャツの色の殆どが反り血で五人の目の前に現れた。


「お前の方が重症じゃねぇか、また病院に逆戻りだぜ?」


 楽観的な様子と分かってたという表情で対応する吹雪。


「そんじゃあ帰ろうぜ、腹減った。」


 修二が、そう言うと仲村が相川を担ぎ上げ肩組みの形で帰路する。


「そう言えば、五月ぐらいに美鈴ちゃんと買い物行った時に、出会ったチャラい二人組はどうしたんだ?」


「あぁ、面倒くさかったんでポリバケツに入れたッスよ。」


「お前、やってる事怖い。」


「それ数時間前の僕たちにも言える?」


 傷だらけになりがらも、おぼつかない足で歩きながら友達感覚でくだらない事で雑談をし笑い合い、六人は夕焼けの中に消えた。

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