第2話 結成、リーゼントとパーマと橫分けチーム。
周りでザワザワしている教室で修二はボーとしていた。そこに吹雪が目の前に現れて、廊下に来いというジェスチャーをする。
修二たちは教室から廊下に出て、通行の邪魔にならないよう窓際に寄せて話す。
「傷の具合はどうだ?」
「なんとか血は止まった。まだ痛いがな。」
修二は額を触りながら大丈夫だと伝える。
「まあ、お互い共闘関係になった訳だが…正確にどれ位の実力なんだ?」
「わりかし強いほうだと思うぜ?」
「――なんだそれ?」
吹雪は呆れた顔をして更に聞く。
「『覇気使い』バトルは知ってるか?」
「全く、知らん!」
清々しい表情で修二は堂々と言いきった。
「俺が中学の時に、どっかの誰かさんが始めた一般人に見つからないようにする。それが『覇気使い』バトルだ」
「知らなかったな」
「てっきり、『覇気使い』だから知ってるかと思ってたが外から来たんだよな? だったら知らねぇのも無理もないな…関係ない奴を巻き込んだな」
「まあ、ここまで来たら巻き込まれた、巻き込まれなかったの話じゃねぇからな。それなら最後まで戦って終わらせようぜ?」
「あくまで共闘関係だからな!」
「何回も言うなよ――それよりさ、次の授業って何?」
「次は現国だ。移動授業だからな……」
「帰りにマクドに寄って行かね?」
「なんでだよ――俺はシェイクにするか」
二人は他愛のない雑談をしながら教室に戻る。だが、遠く二人を見つめる人物の影があった。
そして、昼休み時に修二は校舎裏まで足を運んでいた。そして昨日、吹雪が立っていた場所に目を配り膝を曲げて右手で地面を触る。
(――『氷』が消えている。発動スピードは速いだけで『覇気』を継続させる時間と身体能力は鍛えてなかったのか。それならアッパーで倒されるのは無理がないな)
修二は立ち上がり、用事は済み帰ろうとしたが何処からか声が聞こえて来たので、気になって校舎と体育館の狭い通路あたりを確かめると、そこに三人の不良に絡まれている少し地味な女子生徒がいた。
「ねえ? 君、どこのクラス?」
「良かったら、お兄さんたちと学校サボって何処かに行かないか?」
「まあ、帰るのは少し遅くなるけど?」
下劣な顔と卑猥な言葉でナンパしていた。
修二は大人数で少人数を責める行為には納得いかない性格で、彼女をなんとか助ける事だけを考えていた。
修二は、「いつの時代でも、あんな奴等はいるんだな」と呟きながら三人の不良に近づき肩に手をつけて声を掛ける。
「なあ? その遊びは面白れぇのか?」
「あ?」
不良たちは威圧感を出し後ろを振り向き修二を囲む。修二は怯まなかった。
(――コイツ等、素人だな。高校生デビューしたてか)
修二は、ニヤリと笑いながら不良たちを見た。それが災いして、修二の右頬にストレートが入り倒れてしまう。それに続き不良たちは修二を囲い、拳や蹴りで袋叩きにする。
女子生徒は心配して見ているが、修二には何のダメージもなく、この場を収まるのを待つだけだった。
「興醒めだ!」
ドラマか漫画でも見たのかという捨て台詞を言った。不良たちは修二を殴打して満足か疲労なのか、分からないが唾を吐いて二人の目の前から立ち去る。
「――服が汚れたな」
修二は学ランについた砂埃や汚れを手で払いながら立ち上がる。
不良たちに絡まれていた女子生徒が修二に近づく。
「だ、大丈夫…ですか…?」
「俺なんか放っておいて逃げれば良かったのに、心配してくれたのか?」
修二は皮肉のつもりも無く、率直な意見で言った訳で悪気や悪意は無かった。
「あ、あの……」
「あぁ、責めたつもりじゃねぇんだ。俺が好きで絡んで、わざと殴られた事だしよ。それより……」
修二が、何かを言いかけたが、校舎側の奥からドタバタとする音が響き渡り、こちらに近づいていた。
修二は、音のする方に体を向けると、吹雪が血相を変えて修二に向かって走っていた。
「おい、品川!」
吹雪は急ブレーキで、修二の目の前に立ち止まる。
「な、なんだよ!ビックリするじゃねぇか!」
「ストーカーがいる!」
吹雪は修二の両肩を掴み、慌てふためいていた。
「な、なんだって!?」
修二は吹雪の言葉に、にわかに信じられない顔をしていた。
「この学校にストーカーがいるんだよ!」
「被害者は?」
「俺たち二人だよ!」
「そんな馬鹿な話が……」
修二が辺りを見渡すと校舎側の壁からずっとこちらを観察するように見ている男がいた。修二は指を向けて……
「あ! いたわ。」
「逃げるぞ!」
「逃げる必要ねぇよ、なんで見てるのか聞いたら良いじゃねぇか」
「おい、よく考えてみろ! こんな変わり者、二人を舐めるように見る時点で普通じゃねぇ!」
「何故、『覇気使い』っていう可能性を考えないんだ? もしかしたら、戦いたいのかも知れないだろ?」
「だとしても不気味だぜ」
修二は、吹雪の行動と言動に呆れて、柱から覗いている男に近づく。男はビクついた様子で、その場に止まる。
「あのさ、なんか用があるのか?」
「え、えっと、その……」
男は挙動不審で、話す事がままならない状態だった。
「まあ、ゆっくりで構わねぇからよ。落ち着いて喋ってみな?」
吹雪は修二の背中に隠れて、肩から覗いて見る。遠目で見ていて分からなかったが、近くで見ると男は横分けで、これと言った特徴のない優男だった。挙動不審以外は――
「ぼ、僕……。廊下渡る時に……。その……聞こえたんだ、『覇気使い』って単語に……」
「――なあ?これから、この
ジト目で修二が手で口を隠し小声で吹雪に話しかける。
「――だな」
「それで、その話を聞いてどうしたいんだ?」
修二は本題に戻る。
「その…僕も…仲間に入れてほしいんだ! 僕も君たちと共闘を組みたいんだ!」
それはストーカーからの驚きの発言だった。話しがあるなら、すっと言えと思った吹雪はげんなりした様子で修二に問う。
「品川、教室に帰ろうぜ?」
「とりあえずさ、放課後の校門の前で待っててくれよ。それから話しの続きをしようぜ、俺は品川修二だ、お前は?」
「
「おい!」
吹雪は修二の行動に驚きながらも怒気を込め、反抗した。
「吹雪、お前が嫌なら来なくていいぜ? 相川と二人で話はつけるからよ」
「…わーたっよ、俺も付いて行く。おい、変な真似してみろ! 俺たちに関わった事を後悔させてやるからな!」
吹雪は、一足先に教室に帰り残ったのは修二と相川だけだった。
「それより彼女の事は良かったの?」
「彼女?」
「僕に合う前に彼女いたよね?」
「……」
修二は相川に合う前の通路にいた背後を振り向く。そこには不良たちに絡まれていた地味な女子生徒はいなかった。
「帰ったんだろ? そんじゃあ放課後にな」
約束を取り付けた後の二人は、お互いに沈黙のまま教室に帰って行った。
昼休みの間の時間に帰ってきた吹雪は不機嫌なのか机に頬杖をしながら考え事をしていた。
そこに同じ中学から海道高校に入学した天海美鈴が険しい顔をしながら吹雪に近付いた。
「品川くんに何かしたの?」
「なんにもしてねぇよ、ちょっと話しただけだ。美鈴ちゃんが思ってる事とは大分違うからな」
「……あの時の吹雪くんを知ってるから、私は品川くんを心配してるの」
「……俺は、なんとしてでもアイツを倒す。それが汚い手口でもな」
修二が教室から帰って来て、二人を見た。美鈴は修二を見たら逃げるように自分の席に帰り、修二は二人に何かあったのかと心配していた。
「喧嘩でもしたのか?」
吹雪は少し、不機嫌な様子で修二に問いに返答する。
「関係ねぇだろ…それよりあの横分けと放課後合うんだろ?」
「無理しなくていいぜ?」
「いや、構わねぇよ。チーム結成するなら俺の目的を教えておかねぇとな」
「……」
修二は、少しギクシャクする吹雪を横目で様子を見ていた。それから、ただただ時間が過ぎて行き約束の放課後を迎えた。
校門の壁に二人は寄り掛かって、修二と吹雪は相川が来るのを待ち、暇をもてあましていた。
「悪かったな、八つ当たりしてよ」
沈黙を破ったのは吹雪だった。修二は空を見ながらニヒルな笑みで話を聞いていた。
「どうしたんだよ、改まって?」
「なんか焦ってた。早くチーム結成して、俺の願いが叶うなら、なんでもしてやるって思ってたけどよ……」
吹雪の話しを、修二は黙って聞いていた。相川が来るまで、吹雪の過ちを聞いていた。修二は、嫌な顔を一つもせず、頑張って話しを聞いていた。分からない言葉が出たら、即座に聞いていた。
「お待たせ」
「よし、じゃあマクドに行くか! それと『覇気使い』の話はなるべく内密にな?」
昼間の反省を生かし三人は徒歩でマクドに向かった。
三人は、それぞれの注文した物をトレイで運んでいた、途中で修二のリーゼントが目立って写真を取られていたが気にしていなかった様子だった。
そして、テーブル席に座り、吹雪が咳払いをして真剣な表情で話す体勢になっていた。
「これから話す事は、お前等の覚悟を知りたい。これから何をしたいのか、何をするのかで今後の行動を決めたい!」
「僕は、今まで何もしてこなかった。いや、何もしようとしてなかったんだ……だから、僕は自分でも何かできる事をしたかったんだけど、道中で君たちの話しを聞いて、ストーカーまがいな事をしてしまった。」
「まあ、そう言う事なら許すけどさ――結構、怖いんだぜ? あの行動……」
あの仲立ちしていた、吹雪の威勢は何処に行ったのか分からないが、先ずは相川の気持ちが知れたのは良かった。
そして、吹雪が手を上げていた。
「次は俺だな。俺は
「
二人は吹雪が言っている、
「そいつは正体こそ分からないが、これだけ言えるのは――確実に“強く”、そして“存在自体”が“異様”だ」
「――そいつは、一体どんな奴なんだ?」
修二が、吹雪に聞く。そいつの名前、そいつの姿が気になっていた。修二には吹雪に強いと言わしめる程の実力を持った人物に……
「男か女か分からないが、名前は『カンザキシノブ』、見た目で確認できたのは“黒い靄”がかかった人間の形だ」
二人は想像する。男か女か分からない、“黒い靄”がかかった異様な人形の人物。そして、吹雪が放った強いの言葉。一体どのように表すのか想像がつかなかった。
「『カンザキシノブ』…そうだね、名前だけだったら男か女か判別できないし、けど! その見た目なら目立つ筈!」
「それが分かったら、苦労なんかしねぇって、奴は巧妙に生活している。誰にも気付かれず、現れたい時に現れる。神出鬼没で目的不明の歩く化物」
(――こんな話はしたくは無かった、何故かって? それはコイツ等が、にわかに信じがたい顔をしているからだ。そりゃそうだ、こんな話誰が信じるんだ? だが、これは紛れもない事実だ。俺はコイツ等の力を借りる理由があるからな。それまでは……)
「どんな奴なんだろうな、『カンザキシノブ』って! どんだけ強いんだろうな?」
修二は嬉しそうな顔をして、二人に問い掛けていた。
「品川くん?」
相川は、修二の発言に驚愕はしなかったが、吹雪は修二の発言に驚愕していた。
普通は、遠回しにでも会いたくないという一言が出てくると思っていた。
けれど、修二は違った。そいつに興味を持ったのだ。
吹雪は小さくニヒルな笑みを浮かべ、修二に問う。
「お前の目標を聞いてなかったな?」
修二は薄く笑みを浮かべ……
「強い奴と戦って、俺が『覇気使い最強』になる。楽しみだな、その『カンザキシノブ』っていう奴。」
(――やっぱり、馬鹿だ。けれど、こういう奴だからこそ『カンザキシノブ』を倒す一手になるんだ。後は相川次第だな、相川が付いて来れるか……)
吹雪は心配した顔で相川を見ていた。相川は吹雪が自分の顔を見ていたのに気付き、少し不安そうな顔をして……
「大丈夫だよ、僕だって共闘を組んだからには、出来るだけのサポートはするよ」
「そんじゃあ、結成って事で構わねぇよな?」
吹雪が、そう言ってコップを持ち上げ、乾杯の体勢を取った。修二と相川もそれに続くようにコップを高らかに上げる。
「店の中だが、迷惑にならないように早めに済ませるぞ。打倒、『カンザキシノブ』!」
吹雪の乾杯の音頭で、三人は、軽くコップをお互いに叩き、ここにチームを結成させる。
その光景は、まさに奇妙だった。
ここは、海道病院。品川修二の父、品川宗春が働いている。今は患者に経過報告を聞いている途中だった。
「今は遠くまで歩けるようになり、学校に行ける状態まで回復しました」
「大分、落ち着いたようだね。去年は、本当に重症で、ウチに運ばれて来たからね」
診断の相手は綺麗に整った髪の毛が肩まで伸びきった男だった。
「えぇ、これも先生の治療の
男は、お辞儀をする。
「それじゃあ、もう経過報告は必要ないね。また、異常があれば病院に来てね」
「ありがとうございました」
病院から出た男は四人の男に囲まれた。
「お帰りなさい、南雲さん!」
四人の内、三人の不良が頭を深く下げる。その不良は修二を袋叩きにした不良たちだった。
「『カンザキシノブ』の居所は分かったのか?」
この男の名前は
「まだっていうより、不可能に近い。完全に奴は痕跡を消して、全く尻尾を掴ませようとしない」
この男は、
「奴を見つけて、去年の借りを絶対に返すぞ」
待ってろよ『カンザキシノブ』、誰がNo.1なのか教えてやるぜ。
南雲は不適な笑みを浮かべながら、病院を後にしたのだ。
そして、この両チームが史上最悪の事件を起こすのは、まだ先の話である。
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