測量士流星群
井中 鯨
測量士流星群
エトランジェの祖父曰く、
そんなことを聞いたものだから、流星群が近づく夜は、窓枠に置いていた
翌朝、流星群と石の発光の観測失敗を俯きがちに報告すると、祖父は「五年後にまた流星群は来る」と励ましてくれた。いじけ気味のエトランジェを見た祖父はすぐさま話題を変えた。
「なぜ測量士流星群と呼ぶか知ってるかい」
エトランジェは皆目見当がつかないと答えた。
「では、明日までよく考えてごらんなさい。明日朝に答え合わせをしよう」そう言うと祖父はエトランジェに馬小屋の掃除を命じた。
それから測量士流星群は三度、この
その箱は不意に開かれた。エトランジェはある冬、調査団の一員として
「向こうに洞窟があった。奥に進んだら赤霞石の鉱脈を見つけたんだ」
エトランジェは、祖父が亡くなる前日のことを一気に思い出した。赤霞石の発光、測量士流星群の由来。それらは質感を伴って深い土の中から這い出てきた。石の手触り、その晩寝る向きを変えたこと、羊小屋のにおい、祖父の角ばった手。
夕飯のあと、焚き火を囲んで皆で話をしていると、洞窟を見つけた団員がポケットから洞窟で採掘した赤霞石を取り出した。
祖父はいわゆるホラ吹きではない。だから周りの者に、ありのままの事実を伝えられてもエトランジェは動じなかった。祖父は嘘をつくような人ではないからだ。測量士流星群という名の流星群は存在しないそうだが、ある地質学者は、時期的に考えて十一月中旬に南の空に降るものをさしているのではないかと推測した。その流星群の名前は実に事務的なものだった。
祖父がこの世に置いて残した石と星の謎は、また蓋をして地中に埋めることにした。エトランジェはそう決めた。自分に子供ができたら掘り起こせばいい。祖父の置き土産に思いをはせる。少年を慰めようとした時に出た不意の洒落なのだろうか。いや、実際に星が降る夜に石は光って、測量士流星群には、それ相応の由来があるのかもしれない。あるいは、わからないことをわからないままにする喜び、わからないことを考え続ける幸せを、祖父は旅立つ前にエトランジェにそっと残したのかもしれない。
測量士流星群 井中 鯨 @zikobou12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます