Q.20悪いことをしているのを見たときはどうすればいいのかな
薄くも厚くもない雲が空一面を覆っている。
雲は1つの塊というわけではなく、いくつもの独立した雲が近づいたり離れたりして空をブロックしていた。
そんな面白味の薄い空を少年と少女は真剣な眼差しで見つめていた。
「ねえ。聞いていい?」
「ああ」
わざわざ尋ねるなど少女らしくないと少年は思った。
いつもであれば少年はからかうところであったが、そうしなかった。
「だれかが悪いことをしているのを見たときはどうすればいいのかな」
「俺が知るかよ」
「意地悪」
少年の受け答えはどこか重たかった。
曇天のように。
少女の受け答えは味気なかった。
曇天のように。
「そんなもんに答えなんかねえよ。なにが悪いか悪くないかなんて本来は自分たちで勝手に決めるもんなんだよ」
「もしも、ともだちが悪いことをしてたときはどうすればいいのかな」
雲は流れていく。
どこまで流れても青空が顔を出すことはない。
「幸せになる方法を選べよ。お前もそいつも」
「そんな選択ないじゃない」
「そういうことだよ」
少女は沈黙を守っていた。
「今日はするのか?」
少女はなにも答えず屋上から去っていく。
少女が歯をくいしばり、叫びをこらえていることを少年は知っていた。
「俺はお前もともだちも傷付いてほしくない。それはできないことだろうか。いいや、違うな」
我ながら感傷に浸りすぎであると少年は思う。
「お前ならできるはずだと、お前にしかできないから俺はそう言ったんだ」
一瞬、雲の隙間から陽の光が差し、少年の目を焼き付くす。
太陽は似合わないものだと少年は思った。
少年少女と100の問答 竹内緋色 @4242564006
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