第176話 千エン02




何を言っているんだろ 英雄様だなんて


それも伝説の第4の英雄様を騙るなんて


この国を救ってくれた英雄様の名前を騙るなんて


第4の英雄様がいなくならなければ この国は 世界は


・・・


妹がサンドイッチを食べ終わると 私と妹はエリックの母親の元に


飢えて死ぬより


お金持ちに飼われたほうが


・・・


妹を1人にするよりは


・・・






「シアです サンドイッチ美味しかったです」


「ふっふっ よかった 足りないならもっとあるからね それに食べたい物があったら言ってね」


「えっ えっ お姉ちゃん」


私に聞かれても


「シアちゃんも風呂に入ってから この服に着替えてね そしたら出かけるからね」


「はい」


そうだ


「あの どこに出かけるんですか その 魔物」


「ふっふっ そうよ まずは洋服を買ってから その後で魔物退治ね」


「私は その」


「ふっふっ 大丈夫よ エリックが倒すからね 必ず守るから安心していいわよ」


えっ


・・・


魔物退治?


・・・


私を 私と妹をどうしたいの


・・・


買い物は初めてだった


値段を見ずに沢山買ってもらったけど


恐ろしくて値段は聞けない


これも似合うわよっと高そうな服をどんどん薦めてくるんだもの


・・・




そして


ついに 街の外に


「じゃあ ロアちゃんとシアちゃんは私が ロアちゃんはおんぶで シアちゃんは抱っこするね」


えっ えっ 魔物退治に行くんじゃ


・・・


エリックと母親は 走って北に


襲ってくる恐ろしい魔物は


全てエリックが


・・・


魔物って


こんなに弱いの


エリックは簡単に魔物を倒していく


物凄く数が多いのに全て瞬殺


・・・




北の森が見えた時 エリックの母親がとんでもないことを言い出した


「そろそろ ロアちゃんとシアちゃんも戦ってみましょうか」


えっ えっ もしかして お金持ちの遊びなの


私達はおもちゃなの


しかし


「うん」


シア どうして返事しちゃうのよ どうして笑顔なのよ


私とシアには鉄の剣が渡された


可愛い格好でミニスカート 防具はくれない


・・・


「ママ あれがいいんじゃない」


「ふっふっ そうね」


えっ え~


2メートルくらいある 恐ろしい魔物が向かってくる


うっ さっきまでは1メートル前後の昆虫系の魔物だったのに あんな大きな魔物なんて


足が震える


私はお姉ちゃんなんだから 私がしっかりしないと


なのに 足が動かない


「やぁっ」


シア


オークに向かってシアが剣を振るう


初めてなのに


シアの剣先は綺麗な弧を描き


「ざしゅっ」っと一撃を


「シア 逃げて~」


シアが シアが殺される 動け 動け 動け私の足


震えてまったく動くことが


しかし


えっ えっ


オークはシアの一撃を受けてバタリと倒れ お金を落とした


えっ えっ


「シア」


「凄い 倒せた お姉ちゃん 倒せたよ」


えっ えっ 何で シアが えっ あれっ シアのレベルが


「ダメだよ 正面から斬りつけたら」


「そうなの でも倒せたよ」


「止まっている魔物ならいいけど 今みたいに向かってくる大きな魔物だと倒してもぶつかってくる場合があるんだよ」


「ふっふっ そうね まあオークくらいならいいけど 大牛の魔物くらい巨体なら体重に押しつぶされるかもね」


「えっ 大牛の魔物って誰も倒せないよ」


「それくらいは今日中に倒せるようになるけど」


「ふっふっ 倒せても戦ってはダメよ なぜだか分かる」


えっ えっ 倒せることを前提で話を


「倒せるならいいと思うけど」


「100%倒せないと戦ったらダメなんだよね ママ」


「ふっふっ そうね」


えっ えっ 大牛の魔物を100%


「私なら」シアが聞くと


「そうね 50%くらいかしら」


えっ 勝てるかもしれないの どうしてシアが


「へぇ~ じゃあ 戦ってみたい」


えっ シア何を言っているの


「ふっふっ 50%の勝率で戦えばすぐに死んじゃうわよ そんな勝率で戦っていたら冒険者なんて誰もいなくなるわよ」


今もほとんどいないけど


「へぇ~ そうなんの?」


「16人が生死のかけたトーナメントで4回戦えば 残りは1人になるでしょ 15人は死亡するの」


「100%勝てなくても 100%逃げることが出来ればいいんだよ」


「ふっふっ 正解 次はロアちゃんの番ね」


えっ えっ 今 100%勝てる戦いしかダメって言ったばかりなのに


「お姉ちゃん頑張ってね」


シアまで でも なんだろ 力がわいてきているような


「ほら 怖いなら遠くから石を投げればいいんだよ 剣じゃなくても弓でも魔法でもいいんだからね」


エリックが私に石を


えっ えっ 私は魔法なんか 弓もないし それより石って


「お姉ちゃん来たわよ」


えっ えっ どうするのよ これで 石で倒せるなんて聞いたことないよ でも やるしかないのよね シアに出来たなら 私だって


「えい」


私が石を投げると


オークに石が命中


オークはふらつき


やったの


顔が怒りに満ちていた


ええっ 怖い 怖いよ


エリックや母親は平然な顔をしていて動かない


助けてくれないの えっ シア


シアが私の前に移動し


「ざしゅっ」っと一撃を


えっ えっ


また 一撃で恐ろしい魔物を倒してしまった


「シア ありがとう 凄いね」


「お姉ちゃんもレベル上がっているんだから倒せると思うよ」


私のレベル あっ あれっ 何で 何で私のレベルまで


「ふっふっ 来る途中 魔物が沢山いたでしょ 経験値はエネルギーだから近くにいる者の体に均等に入るのよ」


えっ そうだけど こんなに いいの


強くなるためには経験値が必要だ 経験値を私達に分けるということは その分 エリックとエリックの母親が強くなれないってことになるのだ 冒険をするためには強くならなければならないのに 経験値を他人の私達に分けるなんて普通はありえないのだが


「いいんですか」


「当然だよ 可愛い子を守るのが英雄なんだから」


いや そんな話は聞いたことがないよ


「その エリックはいったい何者なんですか」


「僕はね」


「いや エリックのママに聞いているの」


「え~」


「ふっふっ エリックはね 第4の英雄よ」


ええ~ 母親まで それをいうの~

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