第85話 街の中央で


「ドンドンドン」


「誰かしら」


「ふぁ~ぁ どうした」


「おはよう 誰か来たみたい」


メリッサが扉に向かう


「どなたですか」


「受付です ギルドから連絡が来ました 冒険者は全員 ギルドに集合するようにと 強制依頼だそうです」


「何かあったみたいだね ちょっと行ってくるよ」


「大丈夫 気をつけてね」


「もう少しメリッサと一緒にいたかったけどね」


俺はメリッサにキスをして


ちゃちゃ ばにら ちょこと一緒にギルドに向かった




ギルドに着くと 既に10人の冒険者が待っていた


「ようやく 来たか 君達には街の中で魔物を待ち受けてもらう」


んっ 街に魔物が向かって来ているのかな


「大丈夫なんですか」


俺が聞くと ギルドのおじさんが


「怖いかもしれんが 逃げずに街の人の誘導を頼む 魔物は東のレジント砂漠の大蠍の魔物だ 街の外壁を越えてくることはないので安心しろ」


それなら 問題なさそうだね



俺達は街の中心で待機して 万が一魔物が街に入ってきた時に 逃げ遅れている街の人を守る役目だ




俺は街の中央にテーブルと椅子を出して指示通り待機することにした


俺達がおやつを食べていると


「大丈夫なの」


「メリッサ 大丈夫みたいだよ 今は待機中なんだよ」


「なんだか 楽しそうね」


ちゃちゃが美味しそうにケーキを食べていたので そう思ったのだろう


「メリッサは危ないから避難していたほうがいいよ」


「ふっふっ そうね 強制依頼中だったわね」


「ドンッ ドンッ ドンッ」


街の門から大きな音が・・・


魔物が叩いているのだろうか


「メリッサ ちょっと まずそうだから 避難してね ちゃちゃ ばにら ちょこ 行ってみよう」


3人はコクリと頷く


「気をつけてね」


「大丈夫だよ」


俺はそう言って 走って門に向かう



門にたどり着いたが


「ドンッ ドンッ」


門を叩く大きな音が


門にはいくつも穴が開いていた


う~ん 壊れそうだけど・・・


んっ どうした ちゃちゃ


ちゃちゃが俺の手を軽くひっぱり


そして弓を引くポーズを


俺はアイテムボックスから弓と矢を取り出し ちゃちゃに渡す


「ここで 使うのか」


ちゃちゃは コクリと頷き


矢を放った


矢は門の穴から外に


う~ん 穴を通すのは凄いけど 魔物に当たっているのかな


ちゃちゃは更に矢を放つ


あれっ 門から音がしなくなったか


ちゃちゃを見るとにっこりと微笑んだ


おおっ 自信があるんだね


俺は門に近づき穴から外を覗くと 2匹の大蠍の魔物が倒れていた


さすが ちゃちゃ


「ドンッ ドンッ ドガッ」


んっ 反対側の門か


「ちゃちゃ ばにら ちょこ 走るよ」




「ドガン」


げっ 門が壊れたのか


半分ほど壊れた門の隙間からは 外が見える

門の外には大蠍の魔物が沢山いるようだが・・・


シュッ シュッ シュッ


矢が次々に放たれていく


ちゃちゃ ばにら ちょこだ


門が壊れたからといって 大蠍が通れるほどではないが こちらからは 弓で攻撃出来る


大蠍の魔物は 門を完全に破壊しようとするが その前に 矢が刺さり倒れていく


近くで見ていたギルド職員は信じられないと驚いていた


どうやら 大蠍の魔物は硬くて普通なら矢は貫通しないそうだ


C級の魔物の中でも強い魔物で剣の攻撃も魔法の攻撃も効きにくいやっかいな魔物だそうだ


それをE級の女の子が矢を放ち 次々に倒していっているのだから驚くのも無理はないけどね



外に出て見ると魔物がいなかったので 魔物を回収して 門は岩を出して塞いだ


「じゃあ 街の中央に戻ろうか」


3人はコクリと頷き 俺に続いて歩く


「ドガーン」


んっ まだ いるのか・・・


そして 悲鳴声が


「ちゃちゃ ばにら ちょこ 走るよ」


俺達は悲鳴がした方へ走って向かった



魔物が そして 魔物に向かって 両手を広げている女の子が


その女の子の後ろには小さな女の子が倒れている


んっ 両手を広げているあの女の子は・・・


鑑定すると フィリダ 15歳 レベル7


メリッサと揉めていた可愛い女の子だ


「ちゃちゃは そっちの女の子を」


俺は走って フィリダに


そして


「巨大盾」


魔物の攻撃を防ぐ


そして


「焔の杖」


杖を振り回し 魔物を吹き飛ばした


「もう大丈夫だ よく頑張ったね」


「あ ありがとうございます」


「ばにら フィリダを」



魔物が立ち上がろうとしたので


「魔那よ我に力を 連石弾」


石を投げつける


しかし 倒れずに立ち上がり 俺に向かってきた


しぶといな 


「飛翔」


そして


「大魔法 氷山」


普段の俺では持

巨大な氷の塊を真上から落とした


「ドーン」


よし


かんがるーの魔物は潰れてお金を出した



俺はB級ポーションを2つ取り出して ちゃちゃとばにらに投げる


「ちゃちゃ ばにら 飲ませてね」


俺は巨大盾と魔物を回収


う~ん 魔物はどこから・・・


周りを見渡したが 他に魔物はいないようだ


どこから 魔物が来たのかは フィリダが教えてくれた


街の外壁を飛び越えて入ってきたそうだ

小さな女の子が驚き転んでしまい 

助けようと飛び出したのだと

震えながら フィリダはそう言って

そして 座り込んでしまった

フィリダは涙を流し

こんなんじゃ 英雄にはなれないわよねっと


俺はフィリダをお姫様抱っこして

頑張ったねと

君の助けた子供にとって 君は英雄だよっと言うと

フィリダは俺の胸に顔をつけて 

更に大きな声で泣き出した




神様が見ていたのかな


私が自惚れていたのを


予言書を見てから 私 努力もしなしで


・・・


こんな私なんかの元に英雄が来るはずがないわよね


・・・


ねぇ 聞いてるの


俺は可愛いと思うよ


ふっふっ そんな話はしてないわよ


俺が英雄なら 間違いなくフィリダのところへ行くけどね


来ないみたいだよ


その英雄は見る目がないんだね


あなたも メリッサのところへ行ったじゃない


フィリダのところにも来たよ


もう メリッサに今まで ごめんねって私が謝ってたって


それは 自分で言わないとね


うん もう少しだけ一緒にいてくれない


いいよ







俺はフィリダにキスを


ねぇ もっと落ち着くところに


この子達のことは気にしなくていいよ


そうじゃなくて みんな見てるよ


ダメかな


「ダメだろ」


ギルド職員のおじさんがやってきて いや 最初からいたのかな


「何かありましたか」


俺が言うと おじさんが


「何かって 君達が大蠍の魔物やカンガルーの魔物を倒したって聞いたから来たんだが」


「それなら この子達ですよ ちゃちゃ ばにら ちょこは弓の名手なんですよ」


「B級のかんがるーの魔物を倒したのは君の魔法だろ」


「魔法もこの子達ですよ ねぇ ちゃちゃ ばにら ちょこ」


3人はこくりと頷く


「そ そうなのか」


じぃーと フィリダが見てきたので


俺がキスをすると


おじさんが


「なあ とりあえず それは後で ギルドにきてくれないか」


「フィリダもそれでいいの」


「うん ってここは街の中央じゃない 違うところで」


おおっ いいんだね


「じゃあ ちゃちゃ ばにら ちょこはギルドで報告を頼むよ 行こうか」


俺がフィリダとその場を離れようとすると


「待て待て この子達はしゃべれないだろ それに まだ強制依頼中だぞ」


「えっ 終わったんじゃ」


「報告までしないと終わったことにならないぞ 報酬もらえなくなるぞ せっかくB級の魔物をたおしたのに」


「別に」


「ふっふっ 待ってるから 行って来てね 君は君達は街を守ったんだから この街にとって君は英雄なんだから」


「フィリダもね」


「ふっふっ」


「で 結局 抱っこしたまま行くのか」


おじさんが言ってきたので 


「降ろすのがもったいないのでこのままで」


「はぁ まあいいがな」







ギルドに入ると拍手で向かい入れられた

この街にはB級の魔物を倒せる人がいなかったと

C級の大蠍の魔物も1匹も倒すことが出来なかったと

そして ギルド職員達全員からありがとうと


魔物の襲撃は砂漠からこの街に逃げてきた冒険者が原因らしいと教えてくれた

大きな鍵を見せてくれて この鍵は砂漠にある天魔の塔の鍵だと教えてくれた

砂漠の魔物を倒すと手に入れることが出来るが 砂漠の外に持ち出すと追いかけてくるそうだ

魔物を倒せばいくらでも手に入るので 価値はないそうなのだが・・・

う~ん 魔物を引き寄せる効果があるのか・・・


今回はB級1匹 C級36匹を倒していたのでギルドポイントが950ポイント付くそうだ

フィリダも冒険者登録していたので 950ポイントは子供を助けたフィリダに付けてもらうことにした

フィリダからは断られたが 俺もいらないので ギルドのおじさんにお願いすると

苦笑いしながらフィリダに付けてくれた










ねぇ 本当によかったの


だって フィリダは英雄だからね


私じゃ助けられなかった


でも フィリダがいなかったら 間に合わなかったかもね


ねぇ この本をメリッサに渡してくれない きっと役に立つと思うの


自分で渡しなよ 友達なんだろ


許してくれるかな


大丈夫だよ


うん 今までのこと 謝って許してもらう


それがいいよ


ありがとう 英雄様


そう言って フィリダは俺に抱きつき


キスを


そして


・・・

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