第80話 竜の巫女16




俺達は赤竜山がよく見える 場所で数日過ごした


逃げ出した盗賊の話では 軍隊の魔物に襲われ

更に 赤竜のブレスに軍隊蟻と一緒に焼かれ

赤竜山の盗賊はほぼ全滅してしまったそうだ


3日目の昼頃になると

赤竜山に盗賊がいなくなったからなのか

赤竜から逃げるためなのか 軍隊蟻の魔物が

西へ 巣があるヘボミアの森の方に帰っていった


4日目 昼過ぎても赤竜が現われなかったので

恐らく 軍隊蟻の魔物が全滅したか

全て逃げ出したのだろう


今日1日様子を見ればいいだろう


「じゃあ 明日の朝から森に入ってみよう

とりあえず 走って 山の六合目にある盗賊のアジトを目指す 運が良ければ 盗賊の幹部を捕まえることが出来るかもしれないからね」


「危険は」


「う~ん 竜の巫女のティアがいるからね 

まあ 女好きの竜か 

もしくは ティアの得意な肉料理かな 

たっぷり作ってもらって収納しているから大丈夫だと思うけどね」


「えっ 肉で竜が」


「ティアと言ったら 可愛さ そして 可愛さだからね」


「料理でしょ」


「そうそう 料理もね 今のところ 予言書も変化ないので このままでいいと思うよ」


「あっ そうですね 何か間違えているなら 予言書が変化するかもですね」


「今日は早く寝て 明日は朝一から 山に入るからね 早めに楽しもうね」


「ふっふっ いいですよ」


……







「おはよう ティア いい」


「ダメですよ 朝食食べて出発です」


「張り切ってるね」


「1年間以上 ずっと 竜の巫女と言われ続けて

ずっと 竜について考えてました

毎日 間違いなんじゃないかと 

しかし あなたと出会い 本当かもって 

そして 今日それが分かるかも知れないんですよ」


「そうだね でも 無理はしないでね 運命なんて

自分の行動でどうにでも変わるものだからね」


「ふっふっ どうかな あなたと出会うのは

決まっていたと思う どんな行動をしてもね

きっと 私のところに会いに来てくれたと」


「ティアは可愛いからね」


「でしょ」


ティアは笑っていたけど

その後は何か覚悟を決めたように真剣な顔をしていた


俺達は朝食を食べて 稽古をして休憩


そして


「じゃあ ティアは俺の背中に

ちゃちゃ ばにら ちょこ 一気に行くからね

赤竜が来ても戦わないからね 攻撃しないように」


ちゃちゃ ばにら ちょこ がコクリと頷いた


「出発~」




俺達は走って 赤竜山に入って行く


赤竜山は綺麗な円錐型の山でどこからでも 真っ直ぐ頂上を目指すことが出来るそうだ


盗賊のアジトは6合目辺りにあり

この山には誰も追ってこないので

目立つように屋敷が立てられているそうだ



まあ 行けば分かるだろう


山に入ると いたるところに

盗賊の死体や 軍隊蟻の死体が

生きているものはいない



俺達は急な斜面も関係なく どんどん進んでいく


5合目くらいに差し掛かった時


出たか


空から 竜が 赤竜が来るのが見えた


「ストップ 作戦実行」


俺はテーブルを出して行き

ちゃちゃ ばにら ちょこは肉料理を並べていく


赤竜は 俺達の上空を旋回して


そして 俺達の前に下りてきた


で でかい 近くで見ると

やはりでかい 全長6メートルくらいあるのか

4本足で背中には2つの翼がある

アニメでしか見たことないが

日本の龍ではなく 西洋の竜


竜を見てみたいって思っていたけど

やっぱり 怖いよ

料理を食べて 気に入ってくれるといいけど……

ティアが竜の巫女になるなら 

やはり料理だろう


俺が考えていると


赤竜が


「小さき者よ ここが 俺の縄張りだと分かって 入って来たのか 」


あれっ 人の言葉をしゃべった 

竜は知能は高いと聞いてたけど……

う~ん 

話なんて 出来ないから 

盗賊達は餌付けしたと思ってたんだけど・・・


話が出来るなら……


「赤竜様の噂を聞き 勝負に来ました」


俺が言うと 赤竜が


「我と勝負だと 面白いことを言う よかろう 相手になろう 全員で掛かってくるがいい」


「いえ 勝負は こちらの 料理の得意なティナがします きっと 満足するに間違いないでしょ」


「ほう 面白い 得意料理は」


「えっ だいたいのものは作れますが

特に肉料理が得意です」


ティアがそう言ったので 俺が追加で


「お望みの料理が出来るまでの間 こちらの料理を食べて お待ち下さい これらも全て こちらのティアが作ったものです」


「よかろう それでは 羊の魔物の肉を使った料理を作るがいい」


「えっ」


ティアが驚いて 困っていたので すかさず俺が


「ティアは料理が得意ですが 狩りが苦手です

まずは ここにある料理を食べて頂いて

昼は大牛の魔物の肉にしましょう

そして 希望の羊の魔物の肉の料理は夜に

羊肉の用意はお願いしますね」


「我に用意せよというのか」


「狩りの得意な赤竜様なら雑作もないことだと

それに ティアは どんな魔物の料理だろうと

作ることが出来るそうです

楽しみではありませんか 

自分の取ってきた魔物がどのような味になるのかが

まずは ここにある料理の味を確かめてみてください きっと満足いくと思いますよ」


「まあ よい 暇潰しに貴様らの相手をしてやろう」


「ありがとうございます」


ふ~ぅ 上手くいったかな


そして 仕上げは


「ちゃちゃ 子狐達にも 食事をあげてね」


ちゃちゃは コクリと頷き 子狐を召喚した


「なっ 九尾狐」


赤竜の声が震えた


やはりビビッているようだ


竜は長寿だ  長生きしていて 知能が高いなら

九尾狐の強さを知っていると思ったんだよね


「すみません 子狐達も 食事の時間でして」


「構わん そうだな 先に羊の魔物を捕ってこよう

それまでに 食事をすませておくといい」


そう言って 慌てて 飛んでいった


「九尾狐ちゃんって 赤竜さんよりも 強いみたいですね」


間近で 赤竜を見て 叫んだり逃げ出さなかった

ティアも十分強いと思うけどね


「そうみたいだね 俺はちょっと出かけてくるから

大牛の魔物で何か作っていてね」


「任せて 赤竜さんを満足させてみせるよ」


「ちゃちゃ ばにら ちょこ ここは任せたよ

キュウもよろしくね」





俺は6合目を目指した

赤竜を遠ざけて 

盗賊のアジトを襲撃する作戦は成功だね




アジトの場所わかりやすぅ


一目でアジトの場所が分かった


全ての道が アジトに向かっているし 

大きい屋敷だし


外には誰も見張りがいない

赤竜の山に入れる者が誰もいないので

まったく警戒してないようだ


さてと 出てきてもらおうかな


「ドガーン」


俺は入り口の扉に向かって

岩を投げて 扉を破壊してみた


すると 中から ぞくぞくと盗賊達が


俺は距離をとって 投石紐で攻撃だ


「強石弾」


「襲撃だ ぐわっ」


俺は 距離をとりながら 

向かってくる盗賊を倒していく


「連石弾」


からの


「焔の杖」


それにしても弱い


30人ぐらい 倒したら 


中から 偉そうな5人の盗賊が


「ここは 赤竜様の ぐはっ」


「貴様 分かって ぐわっ」


何かしゃべっていたみたいだが 

気にせず 石を投げて 5人の盗賊を倒した

近づき 倒れている一番えらそうな 盗賊を

鑑定すると マッテオ 43歳 レベル55 


う~ん 大盗賊団のボスとしては弱すぎだよね


睨みつけて来たので とりあえず 杖で腕を叩く


「ぎゃあ 俺が誰だか ぎゃあ」 


「やめないと ぎゃあ」


「次は 頭を」


「待て 待ってくれ ぎゃ」


「待ってください」


「で 赤竜をどうやって」


「それは ぎゃあ」


「貴様は処分して他の人に聞くか」


「すぐに 赤竜がここに来るぞ」


「いや 下で肉を美味しそうに食べてるよ

羊肉が好きだってさ」


「どうして それを」


んっ やはり 盗賊達も餌付けかな


「で おまえは どうやって」


「そ それは金の装飾品だ・・・です

10日に1度 献上しています」


あれっ 料理で餌付けじゃなかったのか 

まあ いいか

とりあえず 縛り上げて 

他の盗賊に聞いて見たが 答えは同じだった


屋敷の中には沢山の金の装飾品が置かれている

赤竜に献上するための物だろう


そして 綺麗な奴隷にされた女性達が200人くらい 聞くと233人だって

拐うだけではなく 村や街で買って集めたそうだ


とりあえず 女性達に食事をしてもらい 

価値のある物を全て収納した


その後で 女性233人 盗賊の生き残り26人を連れて5合目に行くことにした





「おかえり その女性達は」


「盗賊に奴隷にされていた女性達だよ」


「綺麗な人達ですけど・・・あなたの奴隷に」


「俺は人の奴隷は手にしないと決めてるんだよ

ティアが欲しいならあげるけど どうする」


「そうですね ギルドに連れていくのは 可哀想だと思います もし 盗賊がいなくなり この山に住むことが許されるのなら その女性達をこの山に住ませるのはどうかなぁ 盗賊のアジトがあるなら 住むのは問題ないだろうし 後は食事の問題だよね」


「ティアが責任を持つなら そうすればいいよ」


「でも 売ればお金が入るんでしょ いいの」


「大丈夫 お金には困ってないからね 」


「だったら 赤竜さんに相談してみるよ」


相談って う~ん ティアは恐くないのかな


「さすが 竜の巫女様ですね」


「えっ あの赤竜さんは優しそうでしたし」


どこがだろう 俺はかなり恐かったけど……


「へぇ~ そうなんだ じゃあ 全て 

ティアに任せるよ」


「うん 頑張って交渉してみるよ」


昼を少し過ぎた頃 赤竜が大羊の魔物を木に10匹刺した状態で持って戻ってきた


「ほう その者らをどうするつもりだ」


「この人達は 犯罪者なので 街に連れて行きます

あっ そうだ 俺はこれいらないので 

よかったら貰ってくれませんか」


俺は盗賊のアジトにあった 大量の金の装飾品を全て赤竜にあげることにした


「おおっ 素晴らしい いいだろう 貰ってやろう

まあ そいつらは 暇つぶしに山に住むことを許していただけだしな」


「ありがとうございます」


「赤竜さん この女性達を 今まで通り ここに住まわして貰ってもいいですか」


「ほう で 何が出来る」


「う~ん そうですね

みんなで一緒に食事をするとか 

一緒にお話するとかは 

どうでしょうか 楽しいですよ」


「我とか はっはっはっ 面白いことを言う

竜である我と一緒に食事か」


「みんなで食べると 美味しい料理が更に美味しくなるんですよ」


赤竜がティアを睨む


すると ちゃちゃが眠っている九尾狐を抱えて


ティアのところに行き


ティアに九尾狐を持たせて 後ろに下がった


おっ 脅しだね さすが ちゃちゃ


「うっ まあ いいだろう 暇つぶしくらいにはなるか」


「ありがとうございます では 私もここに残り 毎日 美味しい料理を作りますね 素材はお願いしますね」


赤竜からはムッとした感じがしたが


「まあ いいだろう」 


そう言うと 飛び立って 山の山頂に向かっていった


「ティア 本当にいいの ここに 残っても」


「はい 大丈夫ですよ 村に戻りたい時は

赤竜さんにお願いしてみます

まあ 最初は 信頼作りからですけどね」


強い さすが 竜の巫女

ティアは笑顔だったが

その瞳からは強い意思を感じた


「じゃあ ここで お別れってのも

寂しいから 数日は泊まっていこうかな」


「よかった 実は 少し不安だったんだよ」


ティアは微笑み 俺に抱きついてきた








毎日 フラフラになっているけど 


何をしているの


んっ ああ 新魔法を使うためにね


へぇ~ でも そんなフラフラになるのに大丈夫なの


大丈夫だよ ティアが頑張ってくれるから

それに 寝たら回復するからね


ふっふっ 頑張るよ




毎日 俺は夕食の後に 必殺技を使っている

必殺技を使うと体力を消費するからね

安全なこの山ならフラフラになっても大丈夫だろう


必殺技を使って消費された体力は ポーションでは回復することが出来ない

必殺技を戦闘中に使うのは 諸刃の剣になるのだ

なので 俺は戦闘前に使うことを選んだ

それなら いくら必殺技を使っても問題ないからね

ちゃちゃ ばにら ちょこにも協力してもらい

新魔法を会得することが出来た




ティアと233人の女性達が住む屋敷


ティア以外の女性達には全員奴隷の首輪がついている


俺は人の奴隷には手を出さないと決めている……


決めていたんだけどね


……


奴隷の首輪はついているが 自由になった女性達


……


笑顔で可愛い女性達


……


……


俺は 毎日 忙しく過ごし


20日も滞在することになってしまった

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