第71話 ゲームクリア

 「変わり過ぎだな、さっきまでのギャルゲー世界から」

 「私達が好き勝手していたら、案の定ボスが出張りましたね」

 ゲームメーカーにより世界が戦略シミュレーションに変化しても

龍海達インペリアルファミリーは無事だった。

 服装は取り込まれる前の私服に戻っている。

 それまでいた場所は家の体裁はしているが廃墟と化していた。


 「アイリーンの作ってくれた朝飯が消えたのが残念だな」

 「ええ、私も龍海さんとのイチャラブを邪魔されて残念です」

 しびれを切らして打って出たゲームメーカーにどう立ち向かおうかと

龍海が考え出した時、廃墟の壁が漆黒の闇で覆われる。

 「これは義曽祖父様?」

 「ああ、ひい祖父ちゃんだな」

 闇で覆われた壁を見て龍海達は笑顔になる。


 闇の中から巨腕が突き出て現れたのは山羊の角が生えたドクロ頭に

漆黒のマッチョボディの巨漢と言う異形の怪人、ゴート六十六世だった。

 「龍海~♪ 助けに来たぞ、進太郎達は先に連れて帰った♪」

 サムズアップでウィンクするゴート六十六世。

 「ありがとう、ひいじいちゃん♪」

 「流石は万能の魔王です、義曽祖父様♪」

 「ふぁっはっは、お祖父ちゃんナイスじゃろ♪ 久しぶりにハッスルじゃ!」

 曽祖父に相槌を打つ龍海達、ゴート六十六世について行き廃墟を出た。


 「うわ、本当に世界が変わってるよ」

 「荒廃した秋葉原と言う印象ですね」

 「おお、市谷の駐屯地方面からロボが飛んできたのう?」

 「変身は? やべえ、ドライバーが機能しねえ!」

 「私も、ドライバーが出てきません!」

 「大方、生身ユニット出撃不可とかじゃろうが案ずるな駅へ向かうのじゃ」

 空から迫りくるロボットの群れから逃げて秋葉原の駅ビルらしき廃墟へ駆け込む

龍海達。

 

 爆音を上げて周囲の建物などを破壊しながら地上へ降下するロボット軍団。

 「メアリが乗ってたロボットが出て来たな」

 「何の力もない状態で命の危機って新鮮です」

 「十分にタフじゃの、急ぐそ!」

 ゴート六十六世が龍海達を両脇に抱えて走る。

 外から敵が銃でバンバン撃ってくる衝撃は不可視のバリヤーで防がれていた。

 龍海達が京浜東北線のホームまで連れて行かれると空にブラックホールが出現した。

 「来たぞ! あれが我らの切り札じゃ!」

 ブラックホールの中から現れたのはハロウィンで見る穴がくり抜かれて顔ができたオレンジ色の巨大なカボチャであった。

 巨大カボチャが目からカボチャ型の火の玉を発射して敵ロボットを攻撃しつつボディから緑色の蔦を吐き出し龍海達を捉えて口の中へと引きずり込んだ。

 「ちょ! どーなってんだ!」

 「中は操縦席でしょうか? ゲーム機のコントローラ―みたいなのが付いてます」

 「まずはスイッチオンじゃ!」

 ゴート六十六世がスイッチを押す、すると、巨大カボチャからゴツい金属質な巨大な手足と山羊の角が生えたヒロイックな頭が生えて巨大ロボットに変形した。

 龍海はその変形する様子を内部にあるモニターで見て唖然とした。

 「いや、ツッコミどころが多すぎる」

 「こ、これがスーパーロボットなのですね♪」

 龍海と違いアイリーンは感動していた。

 「何でアイリーンはロボに食いついてるの?」

 「ロボットはロマンですよ龍海さん♪」

 嫁の言う事にいまいち追いつけていけない龍海であった。


 「先に帰したあいつらで、ロボゲーム世界ならこっちもロボで対抗じゃとメイがCGをフランがデータを急ピッチで作り送り込んだが傑作じゃ」

 ゴート六十六世が笑う。

 「ニュータントは敵も味方も何でもありだな」

 「凄いロボットで対戦ですね♪」

 「ギリギリ発言は止めようね、権利元から怒られるから」

 アイリーンを窘める龍海。


 「ふぉほおっほ、神気取りな輩には悪魔からの嫌がらせじゃ♪」

 ゴート六十六世は悪ノリしていた。


 「家の悪ノリに巻き込まれた敵には同情しつつ喧嘩売った報いをだね♪」

 龍海も取り敢えず戦えるとわかったのか、やる気を出す。

 「ほっほっほ、ではお祖父ちゃんは先に帰っておるからな♪」

 若い曾孫たちに後を任せてゴート六十六世は自分だけ先に現実へと帰還した。


 「龍海さん、このロボの名前は私が名付けても良いですか♪」

 「ああ、構わない! うりゃ、パンプキンファイヤー連射モード!」

 アイリーンに答えつつ龍海がボタンを連打して火の玉をロボの胴体のカボチャの目から連射する。

 龍海達のロボットは、戦略シミュレーションと言うよりはアクションシューティングゲームの機体と言う感じだった。

 「ありがとうございます♪ では、デーモンパンプキン発進ですっ♪」

 すでに起動しているがお約束でロボットの名前と発進を叫ぶアイリーン。


 デーモンパンプキンを操っての反撃が始まった。


 一方、市ヶ谷にいたゲームメーカーはデーモンパンプキンの登場にキレた。

 「あのチーター共ぉぉぉぉっ! 何処までも私の世界をぶち壊す気か!」

 自分の能力も大概チートで、ヘルグリム帝国に喧嘩を売った事を棚上げする

ゲームメーカー。

 「この世界では私が神、奴らはバグ! 蹂躙してくれるわ!」

 ヘルグリム帝国がスーパーロボットならこちらもだと、機体の中のコンソロールで無数のロボット達を生み出し自機をコアとして巨大な白骨と言うべきロボットを作り上げた。

 「このガシャドクロで握り潰してくれるわ、腐れカボチャ!」

 完成したガシャドクロを立ち上がらせて秋葉原へと進軍するガシャドクロ。


 「ロボと言うよりは怪獣だな、撃って来やがった!」

 ガシャドクロが目から放ったビームを避けて相手の懐に入り込もうとする

デーモンパンプキン。

 「本当にシューティングゲームみたいですね、アイヴィーホイップ!」

 続いて敵が実弾で砲撃して来たので、アイリーンがデーモンパンプキンの両腕から

巨大な緑色の蔦を生やして払い落とす。


 敵の抱負弾を払い落とした直後に、巨大な拳で殴り飛ばされて落下するデーモンパンプキン。

 「ぐは! アイリーン、無事か?」

 「はい、私も機体もまだ戦えます!」

 「なら行くぜ!」

 龍海の操作でデーモンパンプキンは手足をボディに収納して転がって移動する。

 先ほどまでいた落下地点にビームが降り注ぎ大地を削った!

 「お返しです、パンプキンハンマー!」

 再び手足を出して巨大なカボチャの生えた蔦を、鎖鉄球の如く振るうデーモンパンプキン。

 その一撃は、ガシャドクロを横転させた。


 「ば、馬鹿な! 私のガシャドクロが押されただと!」

 このゲーム世界では自分が無敵だと思っていたゲームメーカーの自信が揺らぐ。

 機体の姿勢を立て直すガシャドクロ。

 

 一方、デーモンパンプキンの内部では変化が起こっていた。

 「龍海さん、機体の画面にメッセージが表示されましたよ?」

 「追加データをダウンロードしますか? はい一択だ!」

 どういう原理で送られて来たのかわからないが、パワーアップできるなら迷わずするでコントローラーを操作してデータをダウンロードした龍海。


 すると再び空にブラックホールが開き、穴の中から頭部に二本の角を生やした巨大な黒い馬型ロボがデーモンパンプキンの下へ駆け下りて四つに分離し手足とドッキングした。


 「デーモンパンプキンバイコーンカスタム、強そうですね♪」

 「両腕にバイコーンの上半身がはんぶんずつくっついた!」

 ダウンロードした龍海も驚いたが、デーモンパンプキンは左右の腕に

バイコーンの上半身が分割されて両腕と合体し拳にバイコーンの頭を模した手甲を嵌めた形になった。

 バイコーンの下半身部分はというと、両足の追加装甲となっていた。

 

 「おのれまたかっ!  またチートか、腐れカボチャ!」

 バイコーンカスタムにパワーアップしたデーモンパンプキンに苛立ちを露わにする

ガシャドクロ。

 「やかましい! お前のようなクソ運営は打ち壊しだっ!」

 「行きましょう、バイコーンクラッシュですっ!」

 アイリーンがスイッチを押すとブヒヒンと、両腕の馬頭が嘶く!

 

 ガシャドクロへ拳を向けたデーモンパンプキンが、拳を射出する!


 角の生えた馬のロボの生首が射出されるというシュールな光景だが

飛ばされて空中で一体となったバイコーンヘッドが嘶きながらガシャドクロの

どてっ腹をぶち抜いた!


 敵の体内を文字通り牛飲馬食とバリバリかみ砕きながら突き破りデーモンパンプキンの下へと戻ってくるバイコーンヘッド。

 「かっはっは! 馬鹿め、どんなに攻撃しようが私は負け……再生しないだと?」

 ガシャドクロの中でゲームメーカーが慌てる、自身の能力ならばどんなにダメージを受けても再生するはずであった。


 だが、ガシャドクロは損傷が修復されなかった。

 「敵が回復しませんね、チャンスです♪」

 「よし、止めだ! パンプキンアタックッ!」

 龍海がスイッチを押すと、デーモンパンプキンが手足を胴体に収納し空飛ぶ巨大カボチャの形態になる。


 そして、その形態からエネルギーを放出しまるで小惑星かと思わせるほど巨大な

光るカボチャとなった。

 「馬鹿な! 奴らは何故神である私を超える力を発揮できるのだっ!」

 ガシャドクロの内部でゲームメーカーが叫ぶ!


 だが、いくら叫ぼうが泣こうが回避不能なサイズのエネルギーの塊となって突進してたデーモンパンプキンからは逃れられずそのエネルギーによりガシャドクロは消滅させられたのであった。


 ゲームメーカーがガシャドクロともども消滅すると同時に、デーモンパンプキンも

パイロットの龍海達ごと光の粒子となって消えていった。


 気が付くと、龍海とアイリーンは自宅へと戻って来ていた。

 「ふう、どうやらゲームはクリアできたみたいだな」

 「そのようですね、今度は現実の世界でロボットを操縦してみたいです」

 「ああ、でも実機で一から作るとなると時間がかかるだろうな」

 「ならじっくり時間をかけて作りませんか、私達が乗れなくても子孫が

乗るかもしれませんし未来への投資として始めましょう♪」

 「そうだな、俺が皇帝になったら巨大ロボット製造計画を始動するか♪」

 龍海とアイリーンがやり取りを〆る。


 この言葉から数十年後、魔界にも地球にも巨大ロボットという文化が

開花する事を二人は知らない。


 まさか後の世に、自分達の曾孫が切り札として巨大ロボットで戦う日が来る事など

とはこの時の龍海達には想像すらできなかった。



 


 


 

 

 

 


 

 

 


 

 


 

 

 

 

 

 

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