第24話 異世界ピエロ

 N野県S市に深夜零時丁度に、ピエロが運転する異世界行きのバスが運行しているらしい。

 そのバスに乗ると、異世界へ連れていかれて帰ってこれない。

 中には運よく帰って来た人もいるらしい。

 

 最近SNSで流れている都市伝説、異世界ピエロの噂だ。


 はいはい、ヴィランの仕業乙

 ニュータントの仕業、ニュータントの仕業

 ヴィラン対策室に通報します

 デーモンブリードに相談だ!

 そういやデーモンブリード、最近息子売り出してねえ?


 そんなリプライを見ながら龍海は、長野県の山の中にいた。

 「こいつら、人の苦労も知らねえで好き勝手言いやがって」

 つぶやかれてる世間の声にピリピリしながら人気のない山中のバス停のベンチに座ってスマホを眺める。


 魔界パトロールの仕事を任されて初の事件がこの異世界ピエロの噂だった。

 世間が言うように、この噂の原因はヴィランのニュータントの仕業は正解。

 

 だが、そのニュータントのヴィランがジェスターと言う名ではぐれ悪魔と呼ばれる魔界の悪党だという事までは知られてはいなかった。

 ジェスターが厄介なのは、こいつがフリーの運び屋でこいつに依頼した奴も叩かねばならないのが面倒なのである。


 一気に、デーモンアーマーを纏ったドラゴンブリードに変身する。

 霧と共に異世界行きと表示されたバスが現れたので立ち塞がる。

 「げげ! あの姿はもしや、デーモンブリード!」

 運転席に座る赤毛に白塗りのピエロが、恐怖にひきつった顔をした。

 魔界で最悪の武闘派ヤクザ者国家のプリンス、ジェスターは己の不運を呪った。

 「は~い、そこのバスとまろうか~? ど~も、魔界パトロールです」

 ドラゴンブリードが蹴りでバスを止める。


 「アイエ~~~! デーモンブリード、何で~~~っ!」

 ドアをぶち破って乗り込んできたドラゴンブリードをデーモンブリードと誤解したままのジェスターが泣き叫ぶ。

 「それは父の名だ。俺はドラゴンブリード、ドラゴンブリードの息子だ!」

 脅しをかける様に大仰に構えてみる。

 「イヤ~~~~! 勘弁してください! 何でもしますから!」

 失禁しながら懇願するジェスターを見て、父親が魔界でどんだけ暴れてるんだと思ったドラゴンブリード。

 「何でもするって言ったな? なら、お前が連れ去った人間達を全員回収させてもらおうか?」

 手から闇の触手を出して、運転席にジェスターを縛り付けて命じる。

 

 「わ、わかりましたから! た、助けて下さいっ!」

 ドラゴンブリードに命乞いをするジェスター、彼の能力は車で魔界と人間界を行き来する程度なのでドラゴンブリードに勝てるはずもなかった。

 「それはそちらの態度次第だな、裏切ったり逆らったらその時は潰すから」

 本音では生かしておく気は全くないが、この小悪党に仕事をさせる為にジェスターに一縷の希望を持たせるドラゴンブリードは被害者リストを取り出した。


 「ひ、ひい! わかりましたよお坊っちゃん、まずは何処へ向かいやしょう?」

 ドラゴンブリードに戦わずして屈したジェスターが行き先を聞いてくる。

 だが、ジェスターも向かった先でドラゴンブリードを倒してもらえないかと思いつく。

 「ならまずは、三十代会社員のTさんからだこの人を何処へやった?」

 ジェスターに被害者の写真を見せる。

 「その冴えない兄さんならラミアランドへお連れしやした、今頃楽しく絞られてるかと坊っちゃんもお好きですね~♪」

 ジェスターの下卑た笑いにムカついたが黙った。


 ラミアランド、名の通りラミアと言う下半身が大蛇の美女の怪物ばかりが暮らす砂漠の国。

 よそから男を引っ張り込んで繁殖し、用が済めば気に入らない男は殺して食うと言う風習の国。

 気に入った男は、夫として愛し抜き死んだら遺体を祀るらしい。


 どの道、連れ込まれた男が大変な事は変わりなかった。

 ドラゴンブリードが運転席を蹴ると、ジェスターが運転するバスが出発する。


 闇を抜けて辿り着いたのは、砂漠の国ラミアランド。

 バスを降りて空から街を眺めてみると地球の中東に似た石造りの建築物が立ち並び食べ物の屋台が出て賑わう表通り。

 行き交う住民達は、上半身が美女や美少女で下半身が蛇と言ったラミア達。

 人間から見れば異様だが、ラミア達は平和な日常を営んでいた。


 街の入り口には衛兵立ち、周囲を見張っていたのを気にせず街を観察していたドラゴンブリード、何の気なしに街の入り口へと降り立つ。

 

 当然のごとく、衛兵達に接近され槍を突きつけられた。

 「貴様何者だ! あのバスから降りたという事は男か? 男だな!」

 衛兵ラミアが発情した目でドラゴンブリードを問い詰める。

 「鎧を脱げ、そして私と結婚しろ!」

 「いや、そいつは私がもらう!」

 「いや、それならば私が!」

 「ええい! ならば我々衛兵隊で共有だ、襲え!」

 襲いかかって来た衛兵ラミア達を電撃を放って倒すドラゴンブリード。

 街の方からも、その様子を見られていたわけで大騒ぎとなった。


 「衛兵隊が倒されるなんて活きのいい男だわ~♪ 皆、早い者勝ちよ~♪」

 街中のラミア達が一斉にドラゴンブリード目がけて突進してきたのである。


 「ひゃっは~~♪ ラミアどもに絞られて死ね!」

 ジェスターがドラゴンブリードを罵倒して逃げようとする。

 「お前が死ね!」

 空へと退避したドラゴンブリードが拳を握ると、ジェスターを運転席に縛り付けている闇の触手がジェスターの胴体を締め付けて輪切りにした。


 あわれ、異世界ピエロことジェスターは倒された。

 だが、ジェスターを殺してしまった事で連れ去られた被害者達の居所がわからなくなってしまう。


 果たして、ドラゴンブリードはこの事件をどう解決するのか?

 

 次回、ラミアランドをドラゴンブリードの猛攻が襲う。

 

 

 


 

 

 



 

 




 


 

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