第13話 乱入、ダイノマフィア! その1

 「くそっ! 学生ヒーロー共のせいで賭けが成立しねえ!」

 ついに三回戦で十二校にまで絞られた、全国高等学校ヒーロー競技大会。

 

 だが、その裏では学生ヒーロー達を対象にした闇賭博が催されていた。

 その賭けとは、客は参加校の中からどの学校が優勝するか? という物で

一口一千万円からの大金が裏社会で動いていた。


 その闇賭博に五億円ほど賭けていたドン・ティラノは、大損に嘆いていた。

 「畜生、こうなりゃ奴らの所へ殴り込みだ!」とドン・ティラノが吠える。

  博打に負けたダイノマフィアが、牙をむく。


 力華学園は次の対戦相手に決まった都立国防高専こと、東京都立国防高等専門学校のメンバーと休憩中に遭遇していた。

 「おやおや、ニュータントヒーローの皆さんじゃないですか♪ 愛媛からわざわざ僕達に負けに来てくれてありがとうございます♪」

 ゲスな笑顔で露骨に嫌味を言ってくるのは眼鏡をかけた小柄な少年、骨舐凶児ほねなめ・きょうじ

 「その言葉、試合後にそっくり返してやるよ」

 凶児の挑発を、静かに受けて立つドラゴンブリード。


 「お~、怖い、怖い♪ まったく有名ヒーローの二世っていうのは羨ましい」

 凶児はゲスな笑顔のままその場を去ろうとするが、彼の前に学ラン大男が立ちふさがる。

 「骨舐、貴様それでも国防生か? 他校生に失礼な事を言うとは何事だっ!」

 凶児の肩を掴んで睨む大男

 「……ご! 合力主将っ! も、申し訳ありませんっ!」

 凶児が合力ごうりきと呼ばれる大男に謝る。


 「謝るのは俺ではなく、力華学園の皆さんにだろう?」

 合力が凶児の肩を握ると「ぎゃあああっ!」と凶児が痛みに声を上げる。


 「ああ、その辺で勘弁してあげていただけないでしょうか? 試合の場で

堂々と勝負しましょう」

 ドラゴンブリードが合力を止めに入る。


 「おっと、お見苦しい所を失礼。では、後ほど試合で。行くぞ骨舐っ!」

 合力が凶児の首を掴んで引きずって行く。


 「覚えていろよ、ニュ~~~タント共~~~っ!」

 凶児の遠吠えが響いた。


 「何だったんだ、あいつら?」

 カロリーブースターが唖然とする、喧嘩を売られても怒る気にもなれなかった。


 「あれが国防のゴリラこと合力か、もう一人は骨舐重工のバカ息子だな?」

 レンズも呟く。


 「あいつら有名なの?」

 ドラゴンブリードがレンズに尋ねる。


 「君はもう少し、ヒーロー業界のニュースに目を向けるべきだと思うよ? 彼らは有名だとも、あの三年の合力は昨年度優勝の立役者であの眼鏡はパワードスーツ製造で台頭してきた骨舐重工の御曹司だ」


 「骨舐は、ヨモツイクサって新型が有名だぜ?」

 カロリーブースターがスマホでサイトを検索しカタログを見せる。


 「何か禍々しいな黒くてドクロみたいなマスクで、ヴィランみてえじゃねえか?」

 ヨモツイクサを見た感想を言うドラゴンブリード。


 「しかし、骨舐のバカ息子が良く難関校の国防に入れたものだな」

 レンズが呟く。


 カロリーブースターも

 「だよな、試験内容がペーパーだけでなくジープで追い回されたりとかハードな体力テストもあるってのに。もしかして親があいつの根性を叩き直す為にコネで放り込んだとか?」

 と、想像を口にする。


 「ジープで追い回すテスト? 一体、何したんだあの眼鏡君は? ニュータントを下に見たような物言いがヤバい奴に見えたが?」

 ドラゴンブリードが、骨舐凶児という人物に興味を持った。

 

 「人間至上主義の家系で色々こじらせて育ったらしく、中学生時代にゴロツキ共を雇ってニュータント狩りとか悪さをしてたそうだ」

  カロリーブースターが気分が悪そうに語る。


 「その割には、根性が治ってないみたいだからニュータント嫌いも筋金入りだな」

 骨舐凶児、彼はドラゴンブリードが初めて出会うニュータントを嫌悪する存在として記憶された。


 「そう思う、ああいう手合いは無理に気にしなくてもいいんじゃね?」

 カロリーブースターが言ってくる。


 「そうもいかないんだな、家の方針は『間に立つ者』だからああいう手合いとも上手く付き合っていかないといけないんだ簡単に嫌って切り捨てられない」とドラゴンブリードが返す。


 「間に立つ者って何だ?」

 カロリーブースターが尋ねる、その問いに対してドラゴンブリードが父から受け継ぐヒーローの指針、間に立つ者について語り出す。

 

 「ニュータントと一般人の間に立って、双方が手を取り合えるように、片方がもう

片方を虐げる事が無いようにトラブルを解決するのが我が家のヒーロー性だ。だから間に立つ者って言うんだよ」

 ニュータントと一般人、どちらか一方の側でなく双方の間に立ち事件を解決する事で双方が共存共栄して行ける世界を目指すヒーロー、それが間に立つ者だと答える。


 「そうか、でもその道って下手するとどっちからも敵として攻められるから立ち回りには注意しろよ?」

 カロリーブースターが友の身を心配する、ドラゴンブリードが語るヒーロー性は

どちらか一方に与するより困難で下手をすれば双方を敵に回す危ない橋だからだ。


 「うん、だからなるべくそうならないように、もしそうなっても何とかなるように味方をたくさん作って行きたいんだ。相手の人柄や思惑がどうであろうとある程度清濁を併せ飲んで」

 何にしても仲間を多く作ると言う策を語るドラゴンブリード。


 「なら人付き合いを面倒くさがるのを治そうか? 後、君は女心とかも学びたまえ。カロリーブースターにも彼女がいるんだぞ?」

 レンズが、ドラゴンブリードに説教する。


 「いや、俺にも彼女できたって何だよ! 彼女は関係ないだろ?」

 カロリーブースターがレンズにツッコむ。


 「まあ、カロリーブースターの彼女の話は置いといて試合に行こうぜ♪」

 ドラゴンブリードがステージへと歩き出す。


 「ちょ! お前、そーゆーとこだぞ女子にモテねーの!」

 カロリーブースターがドラゴンブリードを追いかける。


 「やれやれ、優勝するまでこの二人の面倒を見なければならないのか」

 二人の後をついていくレンズ。


 彼らの物陰では、清掃員の服を着た恐竜頭の男ダイノマフィアの戦闘員が無線を手に取り「力華学園チーム、これから試合会場に入る模様です」とドン・ティラノに定期連絡をする。


 「了解、両チームが会場入りして第1ラウンドが始まったら仕掛けろ!」

 アジトのオフィスで、ドン・ティラノが告げる。


 そして試合会場に、力華学園と都立国防高専が揃う。


 合力が纏うのは、ゴリラの様にマッシヴな重装甲型のスクネ。

 「皆さん、良い試合をしましょう♪」

 マスクの下は爽やかな笑顔、スポーツマンシップに溢れた好漢だ。


 「あなたがたなら、このカバネで充分です♪」

 背負ったボンベが特徴的な軽装型、ドクロモチーフのマスクのカバネに身を包むのは凶児だ。

 くっくっく♪と嫌な笑いが漏れてくる。


 「よろしくお願いします」

 短く挨拶をしたのは両腕だけが全体的に見て肥大化したミナカタを纏う国防第三の選手、彼だけは名前がわからない。


 全員黒一色で統一された、訓練用とはいえ実戦に耐えられるパワードスーツを纏ったヒューマン・ヒーロー達だその実力は侮れない。


 力華学園側も一礼をした所で、天井を突き破って空から翼竜型ニュータント、客席から飛び降りて来たのは背広姿に鈍器で武装したラプトル型のニュータントの集団が攻めて来たっ!


 「何だ貴様ら? 俺達の試合の邪魔をするな!」

 ラプトル型の集団へ突進するスクネ、腰の入った掌打がヴィランを張り倒す!


 「試合前の肩慣らしと行くか」

 ミナカタが、肥大化した腕を空を舞う翼竜へ向け射出する!

 ワイヤー仕掛けの機械の巨腕を操り、掴んだ翼竜を振り回し他の翼竜を殴り飛ばして行く。


 「な、何でここにヴィランが! 聞いてないぞ!」

 慌てつつも、戦わざるを得ない状況を把握しヴィランへと口から黒い液体を吐き出しテイザーガンを撃つカバネ。


 「俺達も行くぞ!」

 ドラゴンブリード達も四方からくるラプトル型のヴィランへと突っ込んで行く。


 彼らの三回戦は、ヴィランとの乱闘から始まった。

 

 

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