せきあぐる 昔語りと 世に伝ふとは
@aka1335
第1話 記憶
今は2019年。あの日から683年と少し。
真白な壁、漆黒の瓦の塀。枝が見事に切り落とされた高い木々。
それらに囲まれた広い屋敷。
屋敷の側を流れる小川。屋敷の横を往来する人々。
屋敷の近くには白い砂利が敷かれた神社があり、私はそこで背後から何者かに首辺りを切られ息絶えた。
砂利に流れ落ちていく血が鮮やかに目に映り、あの時が終わった。
息絶えたはずの私だったが、その後のことも幾ばかりか知っている。
私の世話をしてくれていた女人が泣きながら私の名を呼び続ける。
そして、長らく遠くへ戦に出かけていた私の愛する人が私の体を起こし、泣き叫んだ。
「こんなことになるなら言っておくのだった・・・」と。
私の右の袖から何かが落ちた。
遺体は大きなカメのようなものに入れられることが多かったように思うが、私はきちんと丁寧に棺に入れられた。そして、手に何かを握らせてもらった。
鮮明に映る感じではない鏡、そして可愛くはない・・どちらかと言えば気味の悪い人形などが一緒に入れられた。
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