第10話
「それは真中さんに聞いてみないとわからんが」
長老が真中さんに連絡を入れるということで、この日の集会は終わった。
その結果は明日の集会で長老が報告すると言う。
――真中さんか……。
その名を聞くのは久しぶりだった。
十数年前、冬。未明に真中さんの家が火事になった。
真中さんは身体の数箇所にやけどを負ったが、命に別状はなかった。
しかし奥さんとまだ小学生の娘は死んでしまったのだ。
家は全焼。
しばらく入院していた真中さんだったが、退院すると黒くすすけた家の残骸を全て撤去した。
「もうこの地にはいたくない。出てゆく。二度と戻ってこない」
そう言うと、長老だけに何かあったときのためにと、電話番号を教えたのだ。
住所は長老も知らない。
次の日、集会に行くと、いつもよりもすこし多めの人が集まっていた。
誰も何も言わず、人形のように座っていたので、私も黙って適当なところに腰を下ろした。
そのまま待っていると、誰かが入って来た。
真中さんだ。
左の頬、顎、首にはっきりとわかるやけどの痕がある。
十数年ぶりに見たが、その容姿は流れ行く歳月を裏切るかのように、ほとんど変わっていなかった。
真中さんは長老の横に座った。長老が言った。
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