第5話
「それで」
と私。
「真中さんの奥さんかとも思ったが、友田さんの言うとおり違う人だ。顔は見なかったが、背が女にしてはかなり高かった。真中さんの奥さんは小柄な人だったからな。だいたいこの集落に、あんな大きな女はいない。しばらくして声をかけてみたが、何の反応もなかった。見た目は生きている人間にしか見えなかった。が、雰囲気が、生きた人間ではないように思えたな」
「それはどうしてです?」
と池下さん。
「うむ、なんだか生気が感じられないというか、動きがなにか変だというか」
「変? どんな動きです?」
と私。
「小さく、ゆっくり、揺れていたんだな」
「揺れていた?」
「そう、左右に揺れていたんだ。どう言ったらいいのかよくわからんが、その動きがなんとなく変というか妙というか。とにかく変な動きだったな」
「変ですか?」
と飯田さん。
「ああ、変というか不自然というか。口で説明するのはちょっと難しいが」
「そうですか。で、女の人はどうなりましたか?」
「いなくなった」
「どこかへ行ったんですか?」
「いや、気がついたらいなくなっていた」
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