悲劇のヒーローから始める

ケイキー

第1話 よるは暗い

 今でも、夢に見ることがある。


 暗い校庭で、自分はその真ん中に立っている。あたりは静寂に包まれている。その暗さと静けさに少し戸惑う。誰かいないか、と辺りを見回す。

 その願いが届いたのか、静かなはずだったその世界に、黒い人影が現れる。

 はじめは自分の周りに一人。それから、そのそばに二人目。自分を取り囲むように四人。そして、人影は徐々に増えていき、やがて校庭を埋め尽くす。

 それでも足りない、というように校舎の方にも現れる。すべての窓から黒い顔が覗いている。

 ここで、僕は、なぜか、呼吸ができなくなる。

 黒い人影は、みな、口の端をゆがめ、僕を見ている。

 そして、アハハハハハ、と笑い出す。

 僕を攻撃してくるかのようだ。

 その視線で、声で、僕の顔も、僕の手も、僕の足も、僕の心も、僕のすべてを、破壊しようとするかの勢いだ。

 僕を責めてくる。

 もうやめてくれ、と切に願う。

 わかっている。自分はそうされるべき人間だ。

 わかっている。自分で自分を破壊するから、もう、許してくれ。

 頼む、頼む、頼むから……。



 いつも、そこで目が覚める。

 そして、大丈夫、と自分に言い聞かせる。


 大丈夫、大丈夫、大丈夫……。


 あの頃の自分とは違う。

 

 なぜなら、今の僕にはあの先生がいてくれるから。

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