第7話行動と企み

ーーーーユウト邸 地下アジト


 …ドスドスドスッ

 …バンっ!


「たっ大変です…ユウトさまぁ!プヒー」


 ブヒーブヒー、と言いながら喚き散らしてくるのは、俺が作った(ほとんどメリッサとレアが作った)裏組織【アイアンメイデン】幹部の一人でレオと言う男だ。


 レオはこう見えて、城塞都市アスペルを治めている、アスペル辺境伯家に繋がる、伯爵家の後継なのだ。

 貴族とのパイプ作りの為にと、幹部に加えているんだが…

 毎日毎日、飽きもせずに、どうでも良い情報を事件だと教えに来る。


「あのなぁ、レオ…こう、毎日毎日騒がれるとさ、鬱陶しくなるだけだぞ?」


「しっ、しかし!西の外れでケンカが起こったと聞きましたので…大事件でプヒー」


 また今日も、本当にどうでも良い話を持ってきてようだ。

 …ワザとか?とも考えたが、これは天然だからタチが悪い。


「そんなものは、都市の兵士に任せればいいし、ティファが見つけたら、一瞬で解決してくれるだろ?」


「…では、ティファ殿は、今どちらに?」


「…知らん!見回りか何かだろ…」


 さらに冷たくあしらって、会話を強制終了させてもらう。

 …レオを見てると昔の自分を思い出すから、冷たくなっちゃうんだよなぁ


 レオと比べれば、今の俺は、健康に成長したお陰で、この世界で成人と呼ばれる、一般的なサイズに成長した。


 現世の時のように、デブでもブサイクでも無いから、それだけでも儲けものだ。


 まぁ、皆に管理されてたからってのも大きいけどな!

 …今も毎食管理されてるけど。



 ただ、転生人生の全てが上手く行ってるかと言うと、そう言う訳では無いんだ…


 俺の夢の一つであるハーレム計画に欠かせない、我が聖剣は未だに沈黙を守っている。

 こ、これは、もはや呪いだとしか思えない状況なのだよ!

 成人してからも機能しないとか、前の体なら絶対あり得ないし…

 常人の1.5倍は精欲旺盛だったからな。


 ステータスにある【ドラゴンの呪い】、ってやつが原因なんだろうなぁ…

 それに元々、不能者って可能性も残ってる。


 この状態が何を原因としているのかは、早めに見つけ出して解決しないと、俺の賢者期間は既に限界突破しっ放しなのだ。



 後は…レベル上昇ストップの問題かな。

 これが解決すれば、今の日陰の立場から脱却して、手柄を立てて爵位を頂戴したり、領地をもらって、ウッフキャハハに勤しめると言うものなんだがな…



 一番重要な下半身の悩みは、解決方法が無いかと、レオに噂の情報収集をお願いしているんだけど…

 どうせ、何も進展無いんだろうな。


 …プー、ヒー、ふーひー

 そんな事を考えながら、荒れた息遣いを落ち着かせている、ブ…レオを見ていたら視線が合ってしまった。


「あぁ、そうだ!…ユウト様が言われていた、精力に効きそうな場所がありましたよ!」


 プルンとスライムのように威張るレオが衝撃の言葉を放つ‼︎

 何も期待していなかった俺は、レオ様に尻尾を振って話をせがんだ。

 …天使に見えますぜ旦那!




 ……

 レオ曰く、アスペルの西にある【トプの大森林】と言う場所にある湖が、そこが子宝の湖だ、と密かに云い伝えられいるそうだ。

 …ん〜なんだか嘘臭いな。


 俺はレオの話を半分疑いながらも、試せる事は何でもやるべきだと思い決意する。



 ただ問題は…俺のレベルは2、だと言う事だ。

 モンスターや暗殺が怖くて、外は極力避けて、地下でヌクヌク甘やかされてきた俺。

 そんなクズニートな俺に、冒険はリスキー過ぎる。


 …

 …だが、

 だがしかーし!


 男にはやるべき時がある。



 …なので、一人で冒険!などとは考えず、ティファに同行してもらうべく、俺は屋敷を出て、特に当てもなく探し始めた。

 広い都市の中を、何の情報も無しに探し回るのは大変だって?


 いやいや…ティファを探すのは、至極簡単だと言う事を教えよう。


 …まず、耳を澄まし、行き交う人達の話題にティファの痕跡が見え隠れしているのを聞き取る。

 そして、そちら側に進んでいくと…話題の中の痕跡がさらに濃くなっていく。

 後は人々の騒めきを探せば…あら不思議!


 …いた。


 ワーワー、キャーキャー、黄色や灰色の声援の先には、完全無欠の美少女が佇んでいる。


 この街で彼女を知らない人間はいない。

 そう言える程、高潔でパーフェクトでナイスバディなティファは、この街の都市長よりも発言力と人気がある!

 …と、俺は思ってる。



 ティファはこんなに支持されてるのに、ご主人様である俺の人気は一部の変態達からばかりだ。

 一体、この差はなんなんだろう…


 まぁ、恐らく、こっそりマニア色の強い店を作りまくったから、だろうけどね。

 一部からは熱狂的な指示を得ていった結果、都市内なら俺の知名度もソコソコは上がっているんだけどな。


 …そんな事をボケーっと考えていると、ティファが俺に気付いてやって来た。


 歩いてくる時に揺れる、ブランドの髪が光に反射して、神々しさを感じるな…


「…ご主人様、どうされましたか?ご用でしたら呼んでくだされば、すぐに参りましたのに。」


 申し訳無さそうにする彼女に、勝手に探しに来ただけだからと、気にしないように伝える。


 それから、屋敷まで二人で歩き、俺は下半身の件はオブラートに包んで湖の説明をした。

 そして、健康の為に行ってみたい!とお願いしてみた。


「はい。もちろん、ご一緒致します。」

 俺の目論見通りあっさりとOKをもらえた。


 まぁこの辺は、今までの付き合いで把握済みだから、大丈夫だとは思ってたけど。


 …屋敷に戻ると、ティファに大森林に向かう為の馬車をお願いし、俺も久々の冒険に向かう為の準備を始める。




「リロードオン!」

 慣れた手つきでアイテムを召喚して行く。


 ー竜の守護ー

 ・上空からの攻撃を完全防御

 ー防御の宝珠ー

 ・敵の攻撃を3回まで無効化

 ー気付きの腕輪ー

 ・半径10m以内に敵が入ると知らせる

 ー能力向上のベルトー

 身体能力の向上(LV5程度)

 ー疾風ブーツー

 脚力上昇、移動阻害緩和



 …今回は、これ位で大丈夫だろう。

 そんなに高レベルのマップでは無かったし。


 今、使っているアイテム達は基本、消耗品だ。

 耐用回数の経過か、一定時間利用で、文字通り消えてしまう…

 だから、バンバン使うのは避けたい。


 だけど、あまりティファに頼りきりなのも情けないし、ケチって死ぬのは避けたいから、用意は周到に!が基本だよな。



 …準備を整えて待っていると、窓の外から、庭に馬車が入っくるのが見えた。

 おそらくティファだろうと、呼ばれる前に玄関へと向かう。


 そして、庭で俺が見たのは…

 遅くなりました!と言いながら御者台に座るティファと、二頭のラビットホースだった…


 ラビットホースとは、飼育可能なモンスターで、馬の2〜3倍位のスピードが出せる。

 ただし…ピョンピョン走るから、動きがめちゃくちゃ荒くて100%酔うんだよな…



 でも…いい笑顔で待つティファに、馬の交換なんて言えないので、笑顔でお礼を言い、どんよりしながら荷物を積み入れて乗り込む。


 準備完了と伝えると、ティファが不思議な顔をして俺を見てくる。


「…あの、ご主人様?メリッサやレアは行かないのですか?」


「…ん?あぁ、二人には留守を任せてるからな」



 ……⁉︎

 何故かティファが同様してるんだけど、何でだろうか?

 確かに一泊予定ではあるけど、俺が"ナニ"も出来ないのは知ってるだろうし、拒否られる理由は無いと思うのだが…


「……か、かか、かしこまりました。」

 動揺が収まらないティファは、二頭のラビットホースの手綱を荒く握りしめる出発する。


 大森林までは、あっという間に着いたけど…手加減が無くて、何度か吐きまくりました☆



 ……

 そう言えば…もう6年近く3人と一緒に住んでるけど、ティファと2人だけでお泊まりってのは初めてだったな。


 俺はそんな事を思いながら、目の前の大森林を見つめる。


「…ご主人様、準備が整いました。」


 平常運転に戻ったティファに頷いて森に入る。


 森の中は日の光がうっすら入り、外よりも数度は涼しく感じて快適だ。

 モンスターさえ出なければ、散歩に丁度良い感じすら覚えるな。


「確か、湖は森の中心近くにあって、地下洞窟への入り口と一緒の場所だったと思う。」


 俺は、自分のゲーム時代の記憶を頼りに、前を歩くティファに大体の場所を伝えた。



 …カサカサ

「止まって下さい。」

 先頭を進んでいたティファが手を向けて合図をし、耳を澄ませている。


「おそらく、小規模のモンスターの群れです。…5〜6体と言った所でしょうか。我々に気付いて向かって来ています!」



 …ガサガサ

 ……ウグルゥゥウ…


 前方の茂みから現れたのは、【グリズリーベアー】と言う、熊の体に狼の頭部を乗っけたようなモンスターだった。


「私の後ろにお下がりください。」

 ブロードソードを抜いて構える、ティファの指示に従い、俺は周囲の警戒をする。


「グゥオォオオ!」


 どうやら、向こうもやる気だ!

 叫びながら、群の前衛二頭が、左右からティファを切り裂こうと迫る!

 が、ティファは動じることなく右側の敵に突きを入れ、一撃で倒す。


 …仲間が倒されても怯まず、もう一頭が襲いかかるが、ティファの鎧に爪を弾かれ、横薙ぎに切り捨てられた。



 …うーん

 圧倒的過ぎて、モンスターが可哀想なくらいだ。

 さすがに実力差を感じたのか、群れの残りにも動揺が見え始める。



 ティファもそう感じたのか「はぁぁああ!」と叫び【ハウリング】と言う咆哮スキルを放った。


 すると、スキルの影響で、恐怖状態になったモンスターは、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまった。



「…ふぅ、お怪我はありませんか?」


「お見事。もちろん大丈夫だよ。」

 両手を振って無事な姿を見せる。


 と、ティファが刹那の動きで、斜め左下から俺に向かって剣を斬りあげて来た!


 ヤバイ…死んだな。


 と、思うぐらいの鋭い一閃は、俺の背後から迫っきていた、矢の一撃を斬り弾いてくれていた!


「お下がりください!」

 ティファが俺を掴んで、自分の後ろに立たせ庇ってくれる。



 この射線の通りにくい森で、気付きの腕輪の効果範囲外から狙って来るとは…

 敵は、知性を持った射手って事か。


 ティファも俺と同じ考えなのか、不用意に動かず、辺りを警戒している。


「姿を見せなさい!卑怯ですよ!」


 ……

「…ここは、ワレワレのトチだ、人はサレ」

 たどたどしく答える声は、人間とは少し違うように聞こえた。


「ティファ、俺がやるな?」

 遠距離攻撃が苦手な彼女に代わって、俺も活躍させてもらおうと、アイテムを召喚する。


「…リロードオン」

 ー金の礫・銀の礫ー

 ・それぞれを犠牲にする事で、異なる条件を礫に付与出来る

 ー射手の鈴ー

 ・遠距離攻撃武器の射程範囲内に居る敵の居場所を感知出来る


 金の方を犠牲にして、銀の礫に命中箇所と自動追尾を付与する。

 次に、鈴を鳴らすと、敵の居場所が頭の中にマップと共に浮かんだ。


「さすが森の中…結構な数がいるな」

 マップの中で赤く光るのが、敵の印なので、モンスター含めて結構な数が見える。


 でも、俺を狙ったのは……あいつだ。

 光点をターゲットに指定して、ロックオンする。


「うおりゃあ!」

 思いっきり投げると、方向無視で障害物を避けた上に、速度を上げて礫が向かって行く。



 ーードンッ!

 ーーバサバサッ…ドサッ


 音が聞こえた方向に向かってティファと走る。


「肩を狙ったから、死んでは無いと思うんだけど…」

「流石です!ご主人様。」


 …

 目的地に着くと、そこには猫耳・猫尻尾を生やした【獣人】がいた。


 ケモっ子キターッ!

 と、喜びに叫びたい所だったのに…オッサンだったよ。


 ……

 ティファに捕縛してもらって、話を聞くと、最近、森の中に人族の姿を多く見るようになったらしく、巡回していたら俺達と遭遇した為、縄張りを守ろうと攻撃してきたそうだ。


 ティファは、俺を攻撃した事にかなりご立腹だったけど、何度かお願いしたら、何とか解放する事に納得してくれた。

 …ん?なぜ、解放するのかって?


 …いやいや、カッコつけるためじゃないよ?


 この獣人…ペルの話では、良く見るようになった人族と言うのは、揃いの文様が入った鎧を着た連中が多いと聞いたからだ。


 何故なら、俺達がホームにしている、アスペルは、この大森林から時折出てくるモンスターと、森を挟んで向かい合う【フローラ帝国】からの侵略を防ぐ為に、作られた都市なんだ。

 だから【アダド王国】にとって、アスペルはかなり重要な拠点と言える。


 …今回、命をとらなかった、豹人族のペルには、帝国の兵士が大森林を渡って、王国に進軍するような事が起こった時、いち早くその情報を報告させる為の、密偵をさせようと考えたからだ。


 そうして、王国の急所であるアスペルの危機を、俺が颯爽と救えば…

 王国は感謝し、大きな恩賞を与えてくるだろう。

 ふっふっふ、完璧だな…


 …

 ペルには連絡手段として、

 ー虫の音色ー

 ・虫型の電話機、形は様々あり

 を、渡しておいた。



 だいぶ時間は取ってしまったけど、その後は順調に進む事が出来て、夜になる前には湖畔に到着できた。

 火を起こして、ベースになる場所を確保する。




 ……さぁ、キャンプを始めよう。

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