第44話 いや、僕、不登校なんで関係ないです
7月上旬の期末テストが終わったら、旅行にでも行こうかと僕は考えていた。一般的に夏休みが始まるのは、7月の下旬。つまり、そのあたりから交通機関は、ふん詰まりに
まぁ、企画したのは、僕ではなく、兄の知り合いの不良大学生だが。彼らは、日程を調整しやすい分、付き合うのが楽でいい。
「久しぶりだな」
「えぇ、そうですね、
黒く太い
「調子はどうだ?」
「まぁ、ぼちぼちですよ」
「ぼちぼち、か。それは、何よりだな」
「えぇ。で、急に何の用ですか?」
「何の用はないだろう。俺は
井尻先生の言うことは、教師として至極真っ当に聞こえるが、この男、4月冒頭に訪れて以来、2ヵ月間、音沙汰がなかったのだ。その代わり不登校問題の解消のためにまじめ系クラス代表を送り込んでくる始末。
そう思えば、井尻先生の言葉が先生らしければらしいほど、嘘くさく聞こえる。
「なるほど。でしたら、要件は済みましたね。お引き取りを」
「いやいや、せっかく会いに来たんだから、もう少し世間話をだな」
「いえ、けっこうです」
「まぁ、そう言わずに、クラスの近況報告でもさせてくれよ」
「いえ、興味ないので」
「何でだよ。おまえのクラスメイトのことだぞ」
「いや、僕、不登校なんで関係ないです」
「……聞くだけ、な?」
井尻先生は、強引に話を続けようとしてくる。この辺りの粘り強さは教師ならではといえるが。
「で、もう前置きはいいでしょう」
彼のペースで進行するのは気に食わないので、僕は強引に話を進めた。
「結局、要件は何なんですか?」
「はぁ、まったく、最近の子供は話の順序というものを知らない。すぐに結論を出したがるんだから、まったく、
事務処理に無駄が介在することが嫌なだけだ。時間の無駄でしかないし、誰も得しない。
そういう無駄を
「説教なら、文書で送ってもらえますか? 時間があったら読みますので」
「この……! そういう人をなめた態度は社会に出たら通用しないんだぞ」
「学校の中から出たことのない人に社会とか言われても」
「……くそガキ」
小中高、そして大学、教員採用試験を受けて、再びいずれかの学校へと戻る教師は、基本的に学校の中から出たことがない。そういう意味で、彼らのいう社会とは、学校の中のことであり、まぁ、よくてバイト先程度である。
ゆえに、学校の中から出たことがないと
だからといって、くそガキはどうなんだ。教師として。
「まぁ、要するにお互い時間を有効に使いましょうってことですよ。先生だって、残業は嫌でしょ」
「いったい誰のせいで……、まぁ、いい。確かに、今日は、おまえの話をしに来たわけじゃないんだ」
だったら、何しに来たんだと口から出そうになるのを抑えて、井尻先生の次の言葉を待った。
井尻先生は、疲れたようなため息をついてから、やっと要件を告げた。
「実は、
……パラドゥーン?
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