第3話 知識欲旺盛型令嬢の場合2
…あれからブレンダの両親は、あの時に城で出会った名も知らぬ人が一方的に約束したとおり、ブレンダが勉強することに関して一切口を挟まなくなった。
ブレンダは今までの鬱憤うっぷんを晴らすかのように貪欲に知識を求め
寝食さえ忘れてのめり込む様子には、さすがに止められたがそれでも日々の大半は知識を得る為に使われた。
『いつかまたあの方に出会うことがあったら、必ずわたくしの持てるかぎりの知識を生かしてこの恩返しをしよう』
そう心に決めて…。
…それからしばらくのち、ブレンダは後宮へ行く日が来た。
最初は慣れない後宮での生活に中々馴染めなかったが、それでも少しづつ後宮に溶け込むように努力した。
だがやはり人間同士の相性というものはどうしようもなく、ブレンダはとある高位貴族の令嬢にひどく嫌われてしまった。
最初のきっかけは些細なことだった、とある有力な高位貴族の令嬢の主催する
お茶会に呼ばれ、はじめはなごやかに茶会は進んでいた。
そして話が弾みだした頃、おもむろに高位貴族令嬢が新しく作らせたのだという珍しくも美しい鳥の羽扇を皆に披露し始めた。
それを見た令嬢方は、そろってその羽の美しさにため息を漏らしながら羽扇を褒めたたえる。
だが知識ばかりため込んでは来たが、社交性をあまり身に着けてこなかったブレンダは、羽扇をどう褒めたたえたら喜んでもらえるのか分からず、つい羽扇の素材になった鳥についての知識を面白おかしく皆に披露してしまった事により、羽扇自体への関心よりも、ブレンダの語る鳥の知識に他の令嬢方が大変興味を持ち出してしまい、高位貴族の令嬢の美しい羽扇の話以上に茶会の場が大いに盛り上がってしまったのだ。
そこまではまだ良かったのだろうが、皆が自分の話に夢中になるのが嬉しくなったブレンダはつい夢中になり次から次へと様々な知識を令嬢方に披露し茶会は大いに盛り上がり終わった。
それを見ていた高位貴族令嬢は黙って場の空気を読み、その場ではおくびにも出さず平然とした風を装って微笑んではいたが内心はないがしろにされ、大変面白くなかったのだろう。
それから少しづつブレンダは高位貴族令嬢に冷たくあしらわれるようになっていった。
その空気を敏感に感じ取った他の令嬢方にも、少しづつ距離を置かれるようになっていきブレンダは徐々に一人孤立していった。
…そんな中、ブレンダの寂しさを紛らわせてくれたのは、両親が持たせてくれた一冊の本。
あれだけ反対していたはずなのに、いざ後宮へと出発する直前に涙をこらえながら
『これを持っていきなさい』と持たせてくれた物…それはとても高価な最新の薬学の本だった。
両親はやっと自分を理解してくれたのだと、とても嬉しくなった大事な本。
ブレンダは今日も、その両親の思い出と共に本を抱えて眠りにつくのだった…。
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