盲目の燈
@NARS
第1話
「今日のニュースです。イギリス、アメリカ、ドイツなど、先進諸国らが超能力研究を国を挙げて行うと宣言。これにより超能力分野のより目覚ましい発展が期待されます。なお日本政府はこの分野については何も言及をしておらず…」
テレビのニュースには最近少し話題になりはじめていた超能力についての報道がされていた。他人の細胞からの臓器複製、核融合炉による発電、超極小大容量バッテリーの完成、完全自立思考型AI、三年前まで幻想だと言われた技術が現実として形を成した世の中、次に世界が取り掛かったのは超能力だった。
日本はまだこれに関しては何も行動してない。まぁどうでもいいんだけど。
テレビを消して家を出た。
今日から始まるバイト先へ向かう。駅への道はサラリーマンや学生でいっぱいで少し気分が悪かった。そしてなにより1日の始まりを象徴する太陽の光は、寝起きの僕には眩しかった。
初めてのバイトが終わった。なんとか乗り切れた。覚えることがいっぱいだったけどこの調子ならやっていけそうだ。時計を見ると18時で、もう日は落ちていた。
そこから銀行でお金を下ろしたり、大学の振込の手続きをしたり、店でご飯を食べたり、スーパーで明日のご飯の食材を買ったりして帰路に着いたのは24時近くだった。
駅からアパートまで一本道。もう遅いからか人は誰もいなくて、あるのは等間隔で配置されてる蛍光灯だけだ。僕は歩きながらこれから始まる大学生活の事を考えていた。
授業についていけるだろうか、知り合いは出来るだろうか、どのサークルに入ろうか、自分を変えることは出来るだろうか、行き場のない未来に対する不安がどんどん溢れてくる。たぶんこの周りの闇に釣られて、ネガティブになっているのだ。意味が無いと分かったので考えるのをやめて、早く家に帰ろうと走り出そうとしたとき、
「あのーすみません」
足を止め後ろを振り返ると、肩までかかった黒髪、人形にような愛らしい顔、白く透き通った肌、白いワンピースに身を包んだ、誰もが思い描く理想の少女がそこにいた。
「えっ、僕?」
「はい、そうです」
蛍光灯に照らされた彼女の目は僕をしっかり見つめていた。僕で間違いないようだ。ちょっと彼女が怖かった。なんで裸足なの?なんでこんな夜遅くにいるの?なんで僕に話しかけたの?
理由を上がればキリがなかった。
「えーと何か用かな?僕、君のこと知らないんだけど」
いきなりのことで何を話していいかわからず、当然の疑問を口にした。
「うーんなんとも言いづらいんですが、そうですね。ここは素直に行きましょう」
彼女は胸に手を添え、深呼吸し、言葉を口にする。
「私を助けてくれませんか?」
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