第十話 幻術士は死霊術を知る
案内された家は、天井が高い作りになっていた。
巨大人形でも生活ができるように、設計されているのだろう。
テーブルを取り囲み、まずは俺が引き連れていたモンスター軍団――【実体化】のことを説明した。
「がっはっは! 【幻術士】がそんなすげぇ能力を手に入れるなんて、痛快な話じゃねぇか」
不気味な表情でケタケタと笑う巨大人形。
「【幻術士】だからって差別しないんですね?」
「差別だって? 馬鹿言ってんじゃねえよ。差別されるってんなら俺達ハーフエルフも負けてねぇ。お互い差別されてる者同士、仲良くやろうや」
「……ハーフエルフ?」
ヒュンメルのステータス鑑定した時を思い出す。
確かにヒュンメルはハーフエルフだった。
だが、今喋っている人形は、どこからどう見ても人形で、ハーフエルフには見えない。
巨大人形は関節をギシギシ言わせながら、頭を掻いて、
「人形が何言ってんだって顔してやがんな。いいだろう、説明してやる。お前、最初に俺を見た時、この人形がカプリオなのかって聞いたよな?」
「……はい、聞きました。信じられる事ではなかったので」
リィルの話によると、カプリオは百五十年前に王国に反乱を起こし、失敗した。
普通に考えると、鎮圧された乱の首謀者が生き残っているとは思えない。
それが、ましてや人形だなんて。
「その問いにはな、はいそうですとしか言えんのよ。実は俺はな、王国に反乱を起こした時に、スフォルツァの野郎にいっぺん殺されてるの」
なおのこと話が見えなくなる。
殺されているのなら、この目の前にいる自称カプリオは一体何なのか。
「まだわからんか? 結論を言うぞ。俺は元々ハーフエルフで、殺されたときに人形に転生したってことだよ」
「――人形に転生!? そんなことができるんですか!?」
「……普通はできねぇよ。だがな、俺の仲間には超一流の【
【
死者の魂を操る『戦闘職』で、霊魂を死体に強制的に戻し、アンデッドとして使役するとされている。
かなり
「【
「えっ!? てことは今目の前にいるのが、
そういえばステータス鑑定をしていなかったことを思い出し、カプリオに対して使ってみる。
種族:人形
名前:ルイス=カプリオ
性別:-
レベル:-
HP:10000
MP:10000
攻撃:10000
防御:10000
魔力:10000
敏捷:10000
おー、凄い。確かにサイクロプスより強い。
あの老エルフが言っていたことは間違ってなかったのか。
「ところでカプリオさん、ご子息がいますよね? 俺はその方からこの町の存在を教えられたのですが」
「俺の子供か? 昔は俺もヤンチャだったからな、たくさんの女と遊んださ。だから子供もそこら中にいるんじゃねぇか?」
うわぁ、この人最低だ……。
それにしても困ったものだ、リィルのために
「一応聞きますけど、
「残念ながらここにあるのは、この俺だけだ。地上にも一個残ってるとは思うが……」
そこまで言ってカプリオは言葉を濁した。
「なにか問題でもあるんですか……?」
「ああ、もう一個の
「そうですか、残念です。はぁ……ここまで来たのも無駄だったかぁ」
「――っ」
俺の嘆息に合わせるように、横で聞いているリィルが声を漏らす。
「そこの嬢ちゃんが【人形師】なのか?」
「……うん」
リィルの短い返事。
「そう残念がるな。気休めにしかならないかもしれんが、
カプリオは部屋の隅にある棚から、ミニパペットをわしっと十個程掴み取り、リィルの前に置いた。
「ありがとう。全部くれるの……?」
「全部やるよ。
リィルは前に置いてある人形を全部操って、カプリオに向けて礼をさせた。
「がははっ、器用な嬢ちゃんだな。将来俺みたいなビッグな【人形師】目指して頑張れよ。……ところで【幻術士】よ。今日はこの島に泊ってくよな?」
「そうですね。そろそろ日が沈む時間ですし、そうしようと思います」
カプリオはそれを聞くと、大きな手を動かして俺の背中をぽんっとっ叩いた。
「よしっ! 久々のお客人だ。今夜は島を上げて盛大に歓迎してやるよ!」
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