あの頃

@lifeissuck

おがたせんせい

私が保育園に通っていたころ、「おがたせんせい」という男の若い人が教育実習生として園に来たことがあった。どのくらいの期間彼が働いていたのかは分からないが、教育実習なので一週間か二週間ほどでそんなに長くはなかったように思う。もしかすると数日であったかもしれない。その時 園にいた男の先生は2人だけであったから、新たに現れた3人目の男の先生は私にとってはとっても新鮮であった。他の2人の30代後半にさしかかろうとしている先生たちとは違い、彼には若いみずみずしさがあった。少し日焼けした肌のキメ細やかさ、笑うとのぞく鮮やかな白い歯に、4さいか5さいくらいであった私はすぐに夢中になっていた。おがたせんせいは私だけでなく園じゅうの女を虜にした。周りの女の子も、女の先生も、彼がいる間じゅうキラキラになったように見えた。彼の周りにはいつも何人かの女の子が群がりキャッキャと嬉しそうにはしゃぎ、女の先生も彼を私たちの前で美男と評した。

私はというと、彼の取巻きほどのテンションの高さは保てず、けれど彼の引力から離れられないまま、いつも少し離れたところから彼を見ていた。特に彼との間で何かエピソードがあったわけではない。実習期間が終わると、もう二度とおがたせんせいが園に現れることはなかった。ただ、私の中では未だに彼を覚えていて、人生で初めて会ったさわやかな美男、として額縁入りの写真が今でも頭の何処かに飾られているのである。残念なことにその写真は肌と歯だけにしかフォーカスされておらず、タイトルはひとつ、当時必死に覚えた「だいがくせい」という言葉であろう。

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