第3話廉の覚悟

「今日、遅かったね」




舞は心配そうな表情で俺を見つめてる。


いつもよりだいぶ遅れてしまったからか?




「ずいぶんと遅かったじゃない……廉」




この声は……玲奈さん




「色々あって遅れました」


「色々?」




玲奈さん顔は笑ってるのに目が全くだ。


いつも優しい玲奈さんだけど怒ると別人になるんだよな。


とりあえず、謝ろう。そして土下座をすれば許してくれるだろう……あれ?そう言えば一度怒った玲奈さんに許して貰った事ってあったけ……




(あっ積んだ)




この後、俺は玲奈さんにシバかれた。




「はぁ~」




俺は現在遅れて来た罰として道場の掃除を一人でやっていた。


それは自然にため息の一つも出る。


ため息をすると幸せが逃げると言うが俺はそうは思わない。


不幸だからこそため息をするのであって、幸せな状況でため息などしないだろう。


詰まりは俺の場合、幸せが逃げたからこそため息をするのだ。


俺はそんなため息の事を考えながらもモップを使い掃除を続ける。




「廉、終わった?」


「あぁ、もう終わる」




俺は扉から顔を覗かせる舞にそう答えた。




「どうかしたか?」




舞は無言のまま俺に近づいてくる。




「明日、入学式だね」


「そうだなぁ」




舞は道場の壁に背をつけたままゆっくりと座る。


……とりあえず、掃除をするか


ふぅ終わった……舞はまだ座っている。


改めて見るとなかなか良い女だなぁ


黒髪、黒い目に色白で小柄な体型で俺が知る限りでは舞は裏表がなくいつも明るく、笑顔の絶えないそんなイメージだ。


俺は舞が座っている隣に座る。


舞がここに来た目的は明日の入学式についてだったな……




「明日の入学式何か不安な事でも有るのか?」


「何で?」


「何と無く」




舞の家に居候してから数年間、居るからこそ分かる。


舞の笑顔が少ないときは決まって、何かあった時だ。


これは舞には言わないでおくか。




「能力者育成機関東京本部って毎月の課題が達成出来なければ退学になるって聞いたから……」




なるほど舞の不安な理由は課題の問題か。


能力者育成機関東京本部とは生徒の全てが魔法、能力者、異能力、特異体質等を持つ者だけが入学を許される高校だ。


この高校は警察、政財界等から依頼書が届きその中から月毎に2つ以上の依頼を達成しなければ退学と厳しい判断を下す高校だ。


この高校にはチーム、グループ、組織を作る事が許可されている。


戦いを好まない人間とっては厳しい高校だろう。


舞は特に嫌がるだろ。


俺だって……出来れば炎神の魔武器(レヴァンティン)を使いたく無い。


……だけど俺が舞を守るんだ




「舞、俺とチームを作らないか?」


「チーム?」


「あぁ、チームで受けた依頼を達成すればチーム全員が依頼達成となる……詰まりは俺一人で依頼を達成したら舞も一緒に達成したことになる」


「廉一人に任せるなんて……チームは組むよでも……私も頑張ってみるよ」




舞はそう言うと静かに立ち上がり道場を出ていく。


舞の表情に笑顔は無かった。


俺はあいつ笑顔が……


炎神の魔武器(レヴァンティン)を使う事になってもお前だけは守って見せる。

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