ルナティックロード

錦木

1.

 月の、綺麗な夜だった。


 私は街を走っていた。

 時刻は真夜中の零時前。時計の針が天を指す頃。

 小学生が出歩く時間じゃないことは勿論わかっている。

 わかってはいるけど、立ち止まることは出来ない。

 立ち止まれば、追いつかれてしまうから。

 あれが私を追ってくる。どこまでも。

 捕まれば、今度こそ喰べられてしまう。

 それがわかっているから。それだけが、わかっていることだから私は走る。

 でも徐々にわからなくなってきた。

 何をこんなに必死で。

 私は何故逃げているのだろう。

 何故走っているのだろう。

 走っても走らなくても結果は同じことであるし。

 走り続けて、その先は。

 私には行くところなんて、どこにもないのに。

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