ブルズアイ

衣谷一

0 プロローグ

0-1 ワンショット

 五メートル先にある直径五センチメートルのターゲット。その中の直径二センチメートルを狙うとき、僕の世界は僕自身とターゲットだけになる。


 右手に持つ競技銃に意識を集中する。五メートル先の小さい的を正確に狙うためだけに生まれた機能美。手とグリップを一体化させる。グリップと銃口を線でつなぐようなイメージを膨らませて、銃口からターゲットに向けて線を伸ばす。全てをつないで精神を落ち着かせる。


 息を吸う。


 心の中でブザーが鳴る。


 息を吐く。


 線をぶらさないように銃を持ち上げて、全てを一直線に揃える。照準器越しに二センチメートルの円の中心、バツ印をにらみつけた。


 人差し指をトリガーに当てる。発射する寸前まで力を込める。力を入れた途端に手首が震えて銃口側の照準器が揺らぐ。


 かすかな揺らぎとバツ印が重なる瞬間を待ち構える。待てば待つほどピストルの重さに腕が悲鳴を上げはじめる。


 一瞬。


 僕は引き金を引いた。

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