めでたし。
笹原ミツキ
鬼ヶ島で
ぜんぶのオニをやっつけた太郎は、どうくつを前にすすんだ。
すると、たくさんのたからものといくつかの本があった。
たからものはもってかえることにして、太郎は本をひらいた。
どうやらオニたちのきまりごとが書いてあるみたいだった。
「あ……」
太郎の目が止まる。
びっくりすることが書いてあったからだ。
あんまりびっくりして、太郎は本を落としてしまった。
七 ツノがない子が生まれたときは
モモのかたちのハコに入れ
人なる生をねがうこと
「これ……これってつまり、ボクのことじゃないか」
たからもののうしろでガサッという音がした。
見ると、オニの子どもが二人、ブルブルふるえながら太郎を見ていた。
オニは男の子と女の子で、二人ともりっぱなツノがある。
二人は手をつないで、こえも出さないで泣いていた。
……ああ、だからつまり、ボクはオニなんだ。生まれたときツノがなかったから川にながされたんだ。
うん。どうりでボクは村の人よりつよいはずだ。
……オニなんだから
じゃ……じゃあ、ボクはもしかしたら、ボクのお父さんやお母さんをやっつけちゃったのかもしれない。
いや、やっつけちゃったんだ。たぶん。
太郎はおおごえで泣いた。わんわん泣いた。
オニの子どもは泣くのをやめてキョトンとしている。
編集 しおり
ずいぶん泣いたあとで、太郎はかんがえた。
オニをやっつけることはホントにボクがじぶんできめたのかな……と。
だって、犬もサルもキジも、おばあさんのきびだんごを食べただけでオニたいじについてくることになったんだし、ボクだって、なにかよくわからないやりかたで「オニをやっつけなくちゃ」というきもちにさせられたのかもしれない。
そして今も村でボクを、いや、たからものをまってるおじいさんとおばあさんは、ボクをそだててくれたけど、はたらきものじゃない。
ごはんを食べてウンコを出す「ウンコせいぞうき」だ。
ボクがたからものをもってかえれば、ずっとあそんでくらせる。
……そもそもオニって、そんなにわるいのかな。
この泣いていた子オニはわるくないよ、ぜったい。
それに、オニがわるいヤツらだったとしても、ボクをオニたいじに行かせるのって、それって、それってなんか……ゆるせない。
だってたぶん、おじいさんたちはわかっていたはずだ。
ボクがオニだということを
わかっていて行かせたんだ。
……ボクがオニだから
きかなくちゃ。……ホントのことを。
「……ごめんなさい」
小さな小さなこえで太郎は言った。
子オニのかおを見ることができなかった。
そしてオニの血……もしかしたら父と母の血……で赤くぬれた刀をにぎりしめて、太郎は村へかえるために重い足をフネにむけた。
めでたし。
……愛でたし。
- 完 -
めでたし。 笹原ミツキ @nukari
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