第95話 魔法使いエアノ

 サリー:人間の皆さんこんばんは、ナレーターのサリーです。神々の出世のために多くの人間が異世界に転生された事により、空間転移事故が魔界宇宙各国にて相次いで報告されており、事態を重くみた魔界宇宙中央政府は異世界転生監督庁を設立し各国魔王と連携して早急に動き事態は収束を迎えつつあります。今回はそんな異世界勇者パーティーの魔法使いのお話しです。


 魔界時間22:00 宮殿女帝寝室


 寝支度をするイザベラに通信が入る


 アサギ:陛下、お休み前に失礼致します。


 イザベラ:どうしたの?緊急の案件かしら?


 アサギ:はい、帝国領惑星オパールにて傷害事件が発生しました。


 イザベラ:私にわざわざ報告するという事は、地元警察ではどうにもならない感じね。


 アサギ:はい、障害を起こしたのは例の異世界勇者大量転移事故いせかいゆうしゃたいりょうてんいじこにて滞在中の勇者パーティーの1人、魔法使いのエアノ様です。


 イザベラ:と、いう事は被害者の方に問題アリってところかしら?


 アサギ:はい、被害者は天界宇宙中央政府新生反魔党てんかいうちゅうちゅうおうせいふしんせいはんまとう所属のジミー・ドリストン上院議員。目撃者の報告によれば、ドリストン上院議員が道を通る際に目に映った母娘が目障りという理由で難癖付けて暴行を加えようとした所にエアノ様が魔法で止めに入り怪我を負わせたとの事です。


 イザベラ:今の話を聞くに非は完全にドリストン上院議員にあるわね。


 アサギ:相手が相手なだけに地元警察ではどうにもならず、ドリストン上院議員は地獄界断罪裁判じごくかいだんざいさいばんにかけろとわめいて抗議しているそうです。


 イザベラ:それって、何の罪もない神を殺した人間にのみ適応される極刑確定の裁判でしょう?明らかに非のある神に、しかも当神とうにんは死んでもいないのに出来るわけがないわ。


 アサギ:如何致しましょうか?


 イザベラ:察しの良い貴女ならもう何をすれば良いか分かるんじゃないの♪


 アサギ:勿論です、既に手配してありますよ♪


 イザベラ:それじゃあ早速行きましょうか。


『1時間後 帝国領惑星オパール』


 ジミー:ええい!いつになったらコイツを地獄界へ護送するのだ!


 サリー:この方が天界宇宙中央政府新生反魔党のジミー・ドリストン上院議員。種族は戦神いくさがみです。


 警察署長:ですから、断罪裁判は貴方が死なない限り無効なんですってば!


 ジミー:私を誰だと思っている!私の背後には猪倉源助いのくらげんすけ幹事長がいるのだぞ、その意味分かるよなぁ?あ?


 エアノ:(これが私達人間が信じてきた絶対なる正義である神か、これでは真逆ではないか)


 震える幼女の頭を優しく撫でるエアノ


 エアノ:大丈夫だ、私が付いてる♪


 幼女:お姉ちゃん♡


 威圧されて萎縮いしゅくする警察署長の前に庇う様にして立つエアノ


 ジミー:何だ?お前は魔王を討伐する正義の勇者パーティーの仲間であろう?あの事は水に流してやるから今すぐそこの警察署長と母娘を皆殺しにしろ♪


 エアノ:?私の居た世界で親や教会から聞かされていた神とは随分と慈悲の欠片も無い事を言うんだな。やれやれ、これが神の実態とは。それを信じてきた私達人間が恥ずかしい。


 ジミー:なんだと?


 拳にありったけの魔力を込めて殴り飛ばすエアノ


 ジミー:ぐおーーーっ!き、貴様‼︎


 エアノ:今までよくも騙してくれたな。お前の様な奴に私の本気の攻撃魔法を使う価値もない!


 ジミー:こ、こんな事してただで済むと思うなよ!天界に帰ったら真っ先にこの国諸共くにもろとも消し去ってくれるわ!ハハハッ、全てお前のせいだからな♪


 ジミーの背後から現れる九尾族の女性


 ???:それはどうかしら?


 ジミー:だ、誰だ⁉︎


 イザベラ:はじめましてドリストン上院議員、私はこの国の魔王イザベラ・ベルベルトです♪


 ジミー:お前か、幾度に渡って我々の同志を裁判の場で葬る様に仕向けた女狐というのは!


 イザベラ:お褒めに預かり光栄ですわ♪


 ジミー:だがそれも今日まで、明日にはお前ら全員処刑されるのだからなぁ♪


 イザベラ:それを決めるならこれをご覧になってからでも遅くはないのではありませんか?


 ジミー:なんだと?


 イザベラの懐からジミーのマスタースフィアを取り出して突き付ける


 ジミー:そ、それは!何故お前がそれを持っているのだ⁉︎


 イザベラ:猪倉幹事長を含める新生反魔党の皆さんは全員叩けばほこりがわんさか出る身。さて、私はこれを何処に送ろうとしているのでしょうか?


 ジミー:ま、ままま、まさか!し、4界警特権課しかいけいとっけんかに送るつもりか!


 イザベラ:ご名答♪貴方達の様な権力をかざす様な悪党にはこれが1番効果的ですものね♪


 ジミー:や、やめろ!それだけはやめてくれ!そんな事したら私の政治生命はお終いだぁ!


 イザベラ:ですって、どうする?魔法使いさん♪


 エアノ:・・・絶対に許さない!


 イザベラ:だそうだけど、どうします?


 エアノに懇願こんがんするジミー


 ジミー:た、頼む!このとおりだ、助けてくれ!


 エアノ:お前はあの母親がそう言って助けたか?


 ジミー:ヒィッ!


 ジミーの胸ぐらを掴むエアノ


 エアノ:ならばお前がする事は1つ、刑務所とやらで生涯をかけて償うんだな。


 地に膝をつき落胆らくたんするジミー


 ジミー:そ、そんなぁ。


 イザベラ:署長さん、たった今4界警特権課宛に送ったからこの時点で彼はもう議員でも何でもないわ。逮捕して身柄引き渡しがあるまで投獄なさい。


 警察署長:はっ!この者を連行しろ!


 警官隊:はっ!


 エアノ:(これが魔王の本来の姿、という事は私達が対峙たいじしたあの魔王は本当にカオスとやらに冒されておかしくなっていた病人だったのか)


 イザベラ:さてと、貴女はこれからどうする?ここに残るも元の世界に帰るも貴女の自由だけど。


 エアノ:私はここに残る。そしてこの目で天界と魔界の実態を一生かけて確かめてみたい!   


 イザベラ:分かったわ、貴女の永住権の申請は私から閻魔庁に出しておくわね。


 エアノ:いや、教えてくれれば私がやる。 


 イザベラ:いいのよ、どの道最終的には私が申請書を提出する事になるからやる事は変わらないわ♪


 エアノ:そういう事なら宜しく頼む。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る