第43話お酒を止めろ!

 アオイ:九尾族、それは酒呑童子族に次いで2番目にお酒に強い種族。中でもイザベラさんはとんでもなくお酒に強いらしいのですが、1つ問題がある様です。


 魔界時間18:00 帝都テッコウ


『マントルハイドホテル 国賓エリア』


 宙に浮いた液晶モニターに映るアサギ


 アサギ:ゴブリアス皇帝から晩餐会に招待された⁉︎


 エリ:は、はい。


 アサギ:まさか、受けたんじゃないでしょうね?


 エリ:え?断ったら国際問題になりかねないのでお受けしましたよ?


 アサギ:あちゃ〜!ごめんなさい、前もって言っておけば良かったわね。


 エリ:それは一体?


 アサギ:陛下はね、お酒飲ませちゃ駄目なの。


 エリ:九尾族ってお酒に強い種族じゃなかったでしたっけ?


 アサギ:まぁ、それはそうなんだけどね〜。


 エリ:あ!もしかして酒癖が凄く悪いとか!


 アサギ:酒癖は悪くないわ。


 エリ:え?お酒にも強くて酒癖も悪くないのに何で飲ませたら駄目なのですか?


 アサギ:そうね、強いて言えばのよ。しかも一度飲み始めると止まらなくてね。その上、九尾族の中でもアルコールの分解速度が異常に早いの。


 エリ:それっていわゆるザルってやつですか。


 アサギ:そうね。私が調べたところゴブリアス皇帝は国内一の酒豪で、酔うと毎回晩餐会の席で必ず飲み比べ勝負をしてくるの。大抵の場合ゴブリアス皇帝が勝つんだけどね。


 エリ:そこにお酒に関しては肝臓が宇宙の陛下が受けたら・・・


 アサギ:確実にゴブリアス皇帝ご自慢の酒の保管庫は空になるわ。


 エリ:え⁉︎宮殿内を案内させてもらった時に見ましたけど、あの量を全部空にするんですか陛下は?


 アサギ:陛下なら余裕でやりかねないわ。兎に角お酒が無くなるまで飲み続けるのよあの人は。


 エリ:ど、どうしましょう!


 アサギ:受けてしまったなら仕方ないわ。兎に角、何が何でも回避させなさい!


 エリ:は、はい!


『2時間後宮殿内 晩餐会会場』


 ホレル宰相:え?ウチの陛下と貴国の陛下に酒を飲ますなと?


 事情を話すエリ


 ホレル宰相:は?貴国の陛下は一度飲み始めると酒の保管庫の酒が無くなるまで止まらない⁉︎ハハハ、そんなバカな♪


 胸ぐら掴んで涙目で訴えかけるエリ


 ホレル宰相:・・・マジで?


 必死に首を縦に振るエリ


 ホレル宰相:それが事実ならマズイですな。あの保管庫には最深部に二度と手に入らないレア中のレアな銘柄もある。まぁ、最深部の特別保管室は陛下しか知らないパスワードがなければ開ける事は不可能ですが・・・


 奥からゴブリアス皇帝の声が聞こえる


 ヴィクター:うぃ〜、ヒック♪さ〜て、今回の飲み比べの相手は〜?


 ホレル宰相:しまった!もう陛下の酔いが回ってる!


 ヴィクター:お〜!今夜はヘルベルト殿がおるではないでゴブ♪


 会場内から歓声が響き渡る


 ヴィクター:お受けしてくれますかな〜?


 イザベラ:良いですよ♪


 ホレル宰相:あ〜・・・


 エリ:お、遅かった。


 ヴィクター:ヘルベルト殿わぁ・・・ヒック!酒の強さに限界はありますかなぁ?


 イザベラ:アルコール度数の事ですか?私にアルコール度数の限界はありませんよ♪


 ヴィクター:それは上々♪


 アオイ:両者は飲み比べを開始して5時間にも渡る勝負の末、ヴィクター様は酔い潰れてしまいました。ですが・・・


 無言で保管庫に向かうイザベラ


 ホレル宰相:あ、あの方角は!マズイ、マズイぞ!衛兵、ヘルベルト女帝陛下をお止めしろ‼︎


 アークデーモン級の衛兵20人がかりで取り押さえるも魔導衝撃波で振り払う


 ホレル宰相:バカな!S級アークデーモンの衛兵20人がかりだぞ!


 エリ:追いかけますよ!


 2人が駆けつけた時には既に40億本あったコレクションが空になっていた


 ホレル宰相:こ、これは夢か?どれもアルコール度数500超えの最強度数のもなばかりだぞ!それが40億本全て空だと⁉︎


 エリ:陛下はバケモノか。


 最深部保管室へ向かうと既に扉は開かれ保管してあった酒を飲み干し眠るイザベラ


 ホレル宰相:お、終わった・・・陛下がこれを知ったらお怒りになるのは確実だ。


 保管室の外からヴィクターの声が聞こえる


 ヴィクター:な、何だこれは!全て空ではないか‼︎しかも最深部保管室の扉が開いてるだと⁉︎


 ホレル宰相に詰め寄るヴィクター


 ヴィクター:ホレル!これはどういう事だ‼︎


 エリ:ゴブリアス皇帝陛下!じ、実は・・・


 事情を聞いて愕然とするヴィクター


 ヴィクター:噂には聞いていたでゴブが、まさかそれがヘルベルト殿だったとは。


 エリ:も、申し訳ございませんでした!


 ヴィクター:・・・いや、よく調べなかった余にも責はある。であるからして、この件は不問にするでゴブよ。


 エリ:本当に申し訳ございませんでした!


 ヴィクター:それにしても・・・


 イザベラ:・・・すぅ。


 ヴィクター:よう寝ておるわ。



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