第10話偉業への挑戦
アオイ:皆さんのいる人界にも鮪がいるそうですね。魔界にはじつに5000種類の鮪が存在しますが、魔界宇宙のどの国も未だ鮪の養殖には成功していません。え?4つの宇宙の中で1番科学と経済の発展した魔界宇宙でも成功してないのかですって?それだけ魔界の鮪は一癖も二癖もあるのです。
魔界時間 9:00 帝都ジュエルロード 宮殿女帝執務室
イザベラ:クリスタルマグロの養殖をしたい?
太郎:そうだ。調べたところ、魔界宇宙水産業先進国である農林水産超大国カントリア王国と造船水産超大国シャークハルト共和国でも試みているが、どちらも成功していないそうだ。
イザベラ:それをウチでやろうっていうの?
太郎:前から不思議に思っていたんだ。何故天界、魔界、冥界そして私の出身である人界宇宙の中で1番科学と経済が発展してる宇宙なのに何処も鮪の養殖に成功してないのかってね。答えは1つ、それだけ難しいんだよ。魔界宇宙の鮪はね。
イザベラ:それで?宝石の国であるこの国に鮪の養殖をするメリットは?
太郎:5000種類ある魔界宇宙の鮪の中でトップ5に入る養殖が難しい5種。その中でも2位に当たるクリスタルマグロは『生ける水晶』の異名を持つ鮪、身体の外殻が水晶で出来た鮪なら宝石の国に相応しいし、成功すればこの国の知名度は瞬く間に魔界宇宙全土に広がる。
イザベラ:その噂を聞きつけ移住してくる人が増え国力増強にも繋がるってわけね♪
太郎:そういう事だ♪
カグヤ:だが勝算はあるのか?養殖をするにはクリスタルマグロの稚魚が必要だし、時間だってかかる。更には難しい理由はその外殻にある。
太郎:稚魚に関してはカントリア王国にツテがあって既に稚魚はある。クリスタルマグロの難しさの理由。それは回遊魚でありながら外殻を持った魚『甲殻魚類』である事、それがどの甲殻類よりも脆い。そのためぶつかれば外殻は割れ味が落ちるだけでなく死に至る。更に稚魚から成魚になるまでに500年という途方も無い時間を有する。
カグヤ:成功すればこの国にとって莫大なメリットのある大きな成果だが、失敗すれば国家予算クラスの資金をドブに捨てるような結果になる諸刃の剣、それ故にクリスタルマグロの養殖に携わった国はその失敗が原因で国家規模の破産により滅亡している。それを踏まえてもう一度聞く、勝算はあるのか?
太郎:・・・・ある。
カグヤ:ほお、聞こうか。
太郎:先ず過去の養殖実験の失敗の原因は広さとその中での複数養殖実験が原因。回遊魚であるからスピードもあり、広さが十分でないからクリスタルマグロ同士で激突して全滅する結果になるんだ。
カグヤ:そうだな。
太郎:そこで私が目をつけたのがDコーティングだ。
アサギ:Dコーティング?それって狭い部屋にコーティングすれば最大で大陸程の広さの空間を確保出来て、よく都市開発や大規模実験、環境汚染物資処理なんかを安全に出来るってアレですか?
太郎:そう、更に複数養殖実験も可能になる。衝突防止に個々の個体にワームホール発生装置を付けておけば別の個体に接触する前に安全な場所に転移出来て衝突しない。
エリ:時間の方はどうです?成魚になるのに500年かかるんでしょう?
太郎:それも織り込み済みだ♪Dコーティングは通常空間との時差がある。魔界宇宙の次元工学技術・時空工学は4世界宇宙トップクラス、内部の時間経過速度を通常空間1秒辺り1時間を1秒辺り10年調整にすればどうなる?
イザベラ:50秒で500年になる!
太郎:ご名答♪広さ、期間にメリットはあるが、当然デメリットもある。それは1秒100年にすれば期間的にもマグロ自体にも問題ないが、中の作業者は通常空間に戻ると『浦島効果無効化処理』が効かなくなり最悪作業者は死に至る。あの処理の安全値の限界は1秒10年になる。
カグヤ:成る程、中は次元空間内のため次元エネルギーが豊富にあるから設備の維持費をカット出来るところを交代の人件費に回せるわけか。
太郎:そう、それも最大のメリット♪設備維持費に人件費までかさばれば本末転倒。だからDコーティング養殖実験が有効なのだよ♪
イザベラ:そういう事なら承認しましょう。存分にやりなさい太郎♪
太郎:任せてくれ♪
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