第3章 6-2 即席チーム戦

 シドー? ドラクエかよ! と思ったが、すぐに、


 (もしかして『指導』か? なに、あいつ偉そうに指導に来たってこと? よりによって試合の最中に!? それとも隠れ審判!? 今の、指導が出るような内容だったか!?)


 疑問が次々に出るが、どうしようもない。推移を見守る。


 「なにぶん試合中の指導はあまり例が無いので戸惑われている方もおられましょうが、正式な指導の権利行使でありますので、そこはご理解いただけますよう。その代わり、この両者のどちらか……両者ともに、でもけっこうですが……が、私に勝ちましたら、昨年度全国大会三位の権限を持って、七選帝侯国の代表選手枠を一名増やし、二名出場可能なよう、正式に大会本部へ推薦いたしましょうぞ!」


 「推薦かよ!」

 桜葉、思わず声が出た。あいつに決定権があるわけではないのだ。


 「なんか、ムカついてきたぞ!」

 「ああ。ムカつくぜ!」


 気がつけば、アークタがすぐ隣を飛んでいる。ドラゴン同士、息を合わせて接近飛行だ。


 「アークタは、あいつ知ってるの!?」

 「去年、あたいが負けた相手だよ。全国大会で!」

 「三位だって!?」

 「確かに強ええんだけどよ! フツーこんなことするか!?」


 なるほど、この世界の住人にとってもこれは非常識なのだ。とすると、なぜ、あいつ……ヴェルラはこんなことを?


 (ま……さ……か……な……!)


 コロージュン村近辺のあの「謎の廃屋」でまみえた時、あいつの顔面を蹴り倒した気がする。


 (……か……!?)


 桜葉が改めて、ヴェルラを見上げた。すげえ殺気を帯びた笑みで、桜葉を見下げている。


 (まちがいねー)

 ブルッと震えた。

 「どっ……どうすんだよ!?」

 「わかんねえ。侯がお決めになる!」


 すると、テツルギン侯の声が会場に響いた。観客席の視線を追うと、貴賓席て侯が立ち、カードを口元へあてている。その手がおそらく怒りと屈辱でガクガクと震えていた。


 「ロギコー・テツルギンである」

 会場のざわめきが一斉に静まる。みな、侯の声に聞き入った。


 「条項は確認した。まことに異例中の異例にして無礼千万、傲岸不遜ながら……規約に違反しているわけではない。……七選帝侯国ハイセナキス連盟として、貴殿の権利を認めざるを得ない。以上」


 ドワァツ! 歓声というより悲鳴が轟いた。おそらく、オッズの混乱を心配してのことだ。


 「聞いたかよイェフカ! 二対一のチーム戦だ! お前は初めてだろうから、あたいの補佐に回ってくれ!」


 「補佐!?」


 どうやって!? 桜葉が引きつった。チーム戦というからには連係プレイだ。綿密な事前調整と練習が欠かせない。行き当たりばったりで、どこまで通用するのか?


 「ほら、行くぜ!」

 もうアークタが上昇を開始する。

 (相手の戦法も知らねえのに、どうすれっつうんだ、こいつ!!)


 いくら全国選手だとはいえ、二対一とは余裕をかまされたものだ。アークタの矜持プライドも分かる。しかし、それだけでこんなことをするはずがない。これまでの戦いを観戦し、勝てる自信と要素があるから、やっているのだ!


 (どんだけ強えんだか知らねえけど、とにかくもう、やるしかねええええ!!)

 桜葉は槍を構え、アークタとは反対側へ回った。とりあえずヴェルラを挟撃する!


 急遽、上空にヴェルラのゲージ旗が出現する。同じく上下に二段の白幕だ。

 「うぉあああ!」

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