第10話
「……ぎ……ざ……ま」
「下がれ」
小刀を構えて俺を睨みつける尾崎を睨み返したが、やつになんの変化も見られなかった。
宇崎が近づいて来た。
昨日、木刀で叩かれたところが、まだ痛む。
俺は少し下がった。
宇崎は線の近くまで台車を押してゆき、載せてあった食料と着替えを線の内側に置いた。
そして昨日の食器を回収すると、言った。
「着替えは?」
俺は昨日、風呂には入っていなかった。
ゆえに脱いだ下着などはない。
俺の反応を見て宇崎が言った。
「どうやら風呂には入らなかったようだね。好きにするといいよ。別に君が風呂に入ろうが入るまいが、僕にはどうでもいいことだからね」
宇崎はそのまま台車を押して出て行った。
――さて、どうしたものか……。
もう何回目になるのだろうか。
とにかく出来る限りのことをいろいろとやったが、首にかかっている鉄の輪も、それにつながる重い鎖も、憎たらしいほどにびくともしない。
牛が暴れてももちこたえると言っていたが、あながち嘘ではないようだ。
俺は壁を見つめた。
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