第2話

思いっきり脛をかじらせてくれる親というものは、本当に有り難いものだ。


――これからもずっと、三日と空けずに肉を食い続ける人生を送るんだろうなあ。


と、俺は何の疑いもなくそう思っていた。



それは、ある日なんの前ぶりもなく突然訪れた。


キャンパスを一人歩いていると、宇崎が女を連れて歩いているのが目に入った。


宇崎は俺と同じゼミをとっているやつだが、暗くておとなしく、明るくおしゃべり好きな俺はやつを無視し、心の中で見下していた。


そんなやつがこともあろうか女を連れている。


しかもその女が、ものすごく可愛いのだ。


――えっ、なんで?


俺は宇崎が女に変なクスリでもやっているのではないかと、半ば本気で思ったものだ。


気がつくと俺は、二人の前に立っていた。


「よう」


「……」


宇崎は無言で軽く右手を上げた。


その様子を見ていた女が、二人は知り合いであると判断し、笑って頭を下げた。


その様子が、またとんでもなく可愛い。


俺は自分の全身になにかが走るのを、はっきりと感じた。


その時はそれで終わった。


しかし俺には一つ、大きな仕事が出来た。


その天使のような女を、宇崎から奪い取ることだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る