極上の肉を、この俺に

ツヨシ

第1話

肉。


柔らかい肉。


肉汁滴る霜降りの肉。


口の中でとろける極上の肉。


俺は肉が大好きだ。


三百六十五日、朝昼晩と肉を食べているわけではないが、肉を食す割合は、日本人の平均からすればかなり多いだろう。


もちろん生まれ育った環境と言うものがあり、それが大きく影響をおよぼしていることは、間違いのないことなのだが。


とにかくうちの家族は、父も母も肉が大好きなのだ。


そこに生まれた一人の子の男。


しっかり両親以上のりっぱな肉好きに成長した。


まさに親孝行ここに極めりだ。


物心ついた頃には、週のうちの半分以上で、食卓に肉料理が並んでいたものだ。


それも父の収入が良かったので、高級な肉ばかり限定で。


三日続けて肉を食わなかったと言う経験は、間違いなく一度もなかった。


そんな俺も大学生となった。


県外の大学なので下宿生活となるのだが、仕送り以外に毎週のように実家からクール便でけっこうな量の肉が送られてくる。


下宿に入る際に、両親と話し合って決めたのだ。


俺は肉を送ってもらいたいと言う要望があり、両親は息子に肉を送りたいと言う願望があったので、ものの数秒で話し合いは終わった。


話し合いと言うものにすらならなかった。

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